中国トップ大学先端IT人材を雇うのに日本企業はいくら払えばいいのか?(中国語情報源による中国IT人材給与調査)
OpenAIのエンジニアのかなりの割合が中国人です。証拠写真的なものを探しましたが、以下が見つかりました。
Metaのマーク・ザッカーバーグがAI事業にテコ入れをするためにAIのトップタレントをリクルーティングした際、面接したAIエンジニアの多くは中国人だったそうです。(出典 Chinese people hold up "half of the sky" in global AI, and Mark Zuckerberg spends hundreds of billions to recruit top Chinese AI talents.)
上海交通大学のIT人材育成に関する詳細レポートと、北京大学のIT人材育成に関する詳細レポートとを読むと、施されている教育のレベルが世界最高水準であることが窺われます。こうした大学で研鑽を積んだ若者が米国に渡り、OpenAI、Google Deep Mind、Meta、AntropicなどのAIトップ企業に就職しているものと思われます。
AIの研究論文の世界では、2019年〜2022年あたりですでに米国と中国のAI研究論文数が均衡する所まできていたようです。China Is Catching Up to the US in AI Research--Fast (2019)、Comparing U.S. and Chinese Contributions to High-Impact AI Research (2022)
これはAI人材のことですが、クラウド人材、車載ソフトウェア人材、ロボティクス人材についても、中国のトップ大学を出た学部、修士、博士の学生達は世界トップクラスにあるものとして見て、それを雇うのにふさわしい給与を用意する必要はありそうです。
以下はGemniが中国語情報源で調べた中国トップ大学の学生がテンセントなどビッグ5で得ている給与水準と、彼らが日本に赴任するために彼らに用意することが好ましいと思われる日本赴任特別手当の水準に関するレポートです。かなりのリアリティがある内容...と言うよりは、これが現実であると割り切った方が良さそうです。
従って彼らを雇う際には、日本人の給与体系とは別な体系を用意することが不可欠です。米国MITの人材を雇うぐらいの「外国人特別枠」をもって臨む姿勢が必要だと思います。
幸い、現在の上場企業には潤沢なキャッシュがあります。中国トップIT人材が今後産む企業価値に対する投資として、これを行う資金プールはある訳です。従業員に対する給与ではなく、特殊な人材に対する投資と考えれば、十分に納得できる...と言うより、かなり安価な投資ということになるのではないでしょうか?
以下では日本の楽天、LINEヤフー、サイバーエージェントの給与水準が比較対象として記載されています。これは公開資料からGeminiが抽出したものであり、もし間違いがありましたら修正をいたします。(daisuke-imaizumi @infracommons.jp )
中国トップ大学IT人材獲得に向けた報酬戦略レポート:競争力のあるオファー設計と日本赴任特別手当に関する提言
エグゼクティブサマリー
概要
本レポートは、日本のIT企業が中国の特定トップ大学(上海交通大学、復旦大学、同済大学、清華大学、北京大学など)を卒業する優秀な新卒IT人材を獲得するための、適正かつ魅力的な報酬戦略を提言するものである。現在、中国国内ではテンセント、アリババ、バイトダンスといった大手テック企業(BAT)による熾烈な人材獲得競争が繰り広げられており、特にAI・機械学習分野のエンジニアに対する待遇は急騰している。この状況下で、日本企業が彼らを惹きつけるためには、単に中国国内のオファーをわずかに上回る給与を提示するだけでは不十分である。給与水準、税引後手取り額、生活の質、そして日本への移住に伴う物理的・心理的障壁を総合的に考慮した、多角的かつ戦略的なアプローチが不可欠となる。
主要な分析結果
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中国国内の報酬水準: AIや機械学習といった需要の高い分野における中国トップ大学卒業生が受け取る初年度の「トータルパッケージ(総報酬)」は、年収35万~50万人民元(約700万~1,000万円) が一つの基準となっている。これには基本給に加え、数ヶ月分の賞与や手厚い住宅関連手当が含まれる。
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日本国内の報酬市場: 日本のITエンジニア新卒採用市場は二極化している。国内大手企業が提示する年収が約500万円前後であるのに対し、GAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)に代表される外資系トップ企業は年収1,000万円以上のオファーを提示しており、これがグローバルな人材獲得競争における実質的なベンチマークとなっている。日本企業は、この二つの層のいずれと競合するのか、戦略的に自社を位置づける必要がある。
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比較の重要指標: 候補者が最終的な意思決定を下す際に重視するのは、名目上の給与額(額面)ではなく、税金や社会保険料を差し引いた後の**可処分所得(手取り額)と、その金額で享受できる生活の質(購買力)**である。
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移住の障壁: 東京での新生活立ち上げには、敷金・礼金・仲介手数料といった高額な初期費用が伴う。これは、貯蓄の少ない新卒者にとって極めて大きな実践的・心理的障壁であり、企業側がこの問題を明確に解決する姿勢を見せることが、オファーの魅力を大きく左右する。
主要な提言
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報酬水準: 候補者の能力と専門性に応じて、以下の2段階の報酬ティアを設けることを推奨する。
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「競争力のあるオファー」ティア:年収800万円~900万円
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「市場をリードするオファー」ティア:年収1,000万円~1,200万円
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日本赴任特別手当: 高額な初期費用負担を軽減し、日本での生活へのスムーズな移行を支援するため、総額100万円超となる体系的な**「ジャパン・ウェルカム・パッケージ」**の提供を推奨する。これは、一時的な移転・支度金、高額な住居初期費用をカバーする資金、そして最初の1年間の家賃負担を軽減する月次手当で構成される。
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総合的な価値提案: 金銭的インセンティブに加え、長期的なキャリアパスの透明性、優れたワークライフバランス、そして手厚いインテグレーション・サポート(ビザ、言語学習、メンター制度など)を組み合わせた魅力的なストーリーを構築し、候補者に対して日本で働くことの総合的な価値を訴求することが重要である。
第1章:中国におけるトップティアIT人材の報酬ランドスケープ
日本企業が魅力的なオファーを設計する上で、まず理解すべきは、候補者が自国で得られる待遇の現実である。提示するオファーは、この国内市場の基準を明確に上回るものでなければならない。
1.1. 中国大手テック企業(BAT、ファーウェイ等)の給与ベンチマーク
2025年、2026年卒業予定の学生を対象とした人材獲得競争は激化の一途をたどっており、特にAI・機械学習(AI/ML)エンジニアがその中心にいる。AIエンジニアの平均募集月収は21,319人民元(約44万7,700円)と報じられているが 、これはあくまで平均値であり、清華大学や北京大学といったトップ大学の卒業生は、これを大幅に上回るプレミアムな待遇を享受している。
具体的なオファー内容は、各社の採用情報からより明確に読み取れる。
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バイトダンス(ByteDance): 新卒開発職に対して、年収30万人民元(約630万円)から、月収15,000~25,000人民元(約31万5,000円~52万5,000円)のレンジを提示している 。
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ファーウェイ(Huawei): 独自の等級制度を採用しており、一般的な優秀な新卒者が該当する「13級」では、年間の総報酬が25.2万~32万人民元(約529万~672万円)(月収1.8万~2万人民元(約37万8,000円~42万円) × 14~16ヶ月分)となる。より優秀な「14級」の候補者には、32.2万~40万人民元(約676万~840万円)(月収2.3万~2.5万人民元(約48万3,000円~52万5,000円) × 14~16ヶ月分)が提示される 。
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AI分野のトップタレント: 大規模言語モデル(LLM)のアルゴリズム開発など、極めて専門性の高い分野では、給与水準はさらに跳ね上がる。一部のトップ層では平均月収が67,500人民元(約141万7,500円)を超え 、年収100万人民元(約2,100万円)に達する、あるいはそれを超えるオファーも存在する。これは、ファーウェイの「天才少年」プログラムのような、特別な採用枠に該当するケースである。
このデータが示すのは、もはや「IT新卒」という一括りの指標が無意味であるという事実である。AI/MLのスキルを持つ人材は、一般的なソフトウェアエンジニアとは別の、格段に高い報酬カテゴリーに属している。アリババの国際部門採用の8割、国内EC部門(淘天)採用の5割がAI関連であるという事実は 、この市場の二極化を裏付けている。したがって、日本企業はまず、獲得したい人材の具体的なスキルセットを定義し、中国市場における一般的な給与ではなく、この「AIプレミアム」が上乗せされた給与水準をベンチマークとしなければならない。
1.2. 「トータルパッケージ」の解体:基本給を超える要素
中国のテック企業が提示する報酬は、基本給だけで評価することはできない。以下の要素を含む「トータルパッケージ」でその価値を判断する必要がある。
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賞与(ボーナス): 12ヶ月分の給与が年収となるわけではない。多くの企業が業績連動賞与を導入しており、2~4ヶ月分の給与に相当するボーナスが加算され、実質的に「14~16ヶ月分」の給与体系が一般的である 。バイトダンスの報酬体系にも、0~6ヶ月分の目標賞与が明記されている 。これは、年間報酬総額を構成する極めて重要な要素である。
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住宅関連福利厚生: これは中国の報酬体系における特徴的な要素であり、候補者の生活に直接的な影響を与える。
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住宅積立金(住房公积金): 法律で定められた社会保険制度の一環で、企業と従業員の双方が給与を基準に掛金を拠出する。北京のような主要都市では、企業・従業員それぞれが給与の最大12%を拠出することが可能である 。これは住宅購入や賃貸のための強制貯蓄制度であり、従業員にとっては実質的な報酬の一部と認識されている。
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直接的な住宅補助(房补): 大手テック企業は、法定の積立金に加えて独自の住宅補助を提供している。例えば、テンセントは新卒社員に対し、月額3,200人民元(約6万7,200円)に相当する住宅補助を給与に組み込んで支給している
。バイトダンスも北京勤務の社員に月額1,500人民元(約3万1,500円)の家賃補助を提供しているが、これには勤務地からの距離制限といった厳しい条件が付随する 。
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その他の福利厚生: 年金、医療、失業、労災、出産保険からなる「五険」と呼ばれる社会保険制度は標準的に整備されている 。その他、食事補助やフィットネスジムの利用など、テック業界で一般的な福利厚生も提供される。
これらの要素を総合的に評価することで、初めて中国国内における真の報酬水準を把握することができる。
1.3. 純所得(手取り)分析:中国における現実的な可処分所得
候補者にとって最も重要なのは、額面給与ではなく、実際に手元に残る金額である。ここでは、北京勤務の独身新卒者が年収40万人民元(約840万円)のオファーを受け取った場合の純所得(手取り額)を試算する。この計算により、日本でのオファーと比較するための、より現実的なベンチマークが明らかになる。
試算前提:
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年間総報酬(額面):40万人民元(約840万円)
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勤務地:北京
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対象者:独身、扶養家族なし
控除項目の計算:
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社会保険料および住宅積立金: 中国の社会保険料率は都市によって異なるが、一般的に年金(8%)、医療保険(2%)、失業保険(0.5%)が従業員負担となる 。これに、住宅積立金(12%)が加わる
。これらの料率は、給与の上限額に基づいて計算されることが多いが、ここでは簡略化のため給与額に直接適用する。-
月次給与基準額:
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月次社会保険・積立金控除額:
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個人所得税: 中国の個人所得税は、給与所得から社会保険料等と基礎控除(月額5,000人民元(約10万5,000円))を差し引いた課税所得に対して、累進課税方式で計算される
。-
月次課税所得:
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年間課税所得:
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適用税率(年間14.4万~30万元の区分): 20%、速算控除額: 16,920人民元(約35万5,320円)
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年間所得税額:
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この計算結果をまとめたのが、以下の表1.2である。
この試算が示すように、額面で40万人民元(約840万円)という高額なオファーも、各種控除後には手取りで約27万人民元(約567万円)となる。この「手取り額」こそが、日本でのオファーと比較する際の、現実的かつ重要な基準点である。
第2章:日本の競争環境:給与と生活水準
候補者が移住を検討する日本の市場は、どのような環境なのか。ここでは、日本国内の給与水準と、生活コストおよび生活の質という非金銭的要素を分析する。
2.1. 日本のテックセクターにおける新卒報酬
日本のITエンジニア新卒採用市場は、明確な二極化構造を呈している。
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国内企業ティア: 日本の大手IT企業が提示する初任給は、国内の一般水準から見れば高いものの、グローバルな人材獲得競争においては競争力に欠ける。
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楽天グループ: エンジニア職の初任給は月額30万円で、賞与を含めた想定年収は約470万円程度となる
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LINEヤフー: エンジニア職の標準年収は約504万円からとされている 。
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サイバーエージェント: 一般的なエンジニアコースの最低年俸は504万円だが、特出した能力を持つ学生を対象とした「エキスパート認定」では、最低年俸720万円からのオファーも用意されており、国内企業の中でも高い水準を目指す姿勢が見られる
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グローバル企業ティア(GAFAM): トップタレントにとっての真の競争相手はこちらである。
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Google: エンジニア職の新卒は、基本給に加えてRSU(譲渡制限付株式ユニット)が付与され、初年度の総報酬は1,000万円を超える可能性がある 。一部には600~800万円という推定もあるが
、トップエンジニア職に対しては1,000万円という数字がより現実的なベンチマークである。 -
Amazon (AWS): 新卒レベルのソフトウェア開発エンジニア(SDE1)の総報酬は、基本給、サイニングボーナス、RSUを含め、1,000万~1,300万円のレンジに達する 。
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日本マイクロソフト: 基本年俸は学卒で620万円、院卒で640万円からとされており、これに賞与などが加わるため、総報酬はさらに高くなる 。
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この国内企業ティア(約500万円)とグローバル企業ティア(約1,000万円以上)の間の巨大な隔たりは、単なる金額の差ではなく、人材に対する投資哲学の差を象徴している。中国のトップ大学卒業生は、自身の市場価値をグローバル基準で認識しており、日本企業からのオファーを評価する際、楽天やLINEヤフーだけでなく、Google JapanやAmazon Japanの待遇を無意識に比較対象とする。もし提示されたオファーがGAFAMの基準を大きく下回る場合、それはその企業がトップタレントに最高の対価を支払う意思も能力もないというシグナルとして受け取られかねない。この認識は、金額の差以上に採用活動に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、採用企業は、自社がどちらのティアで戦うのかを明確に意識した上で、戦略的なオファーを設計する必要がある。
2.2. 生活コストと生活の質の比較分析
候補者の意思決定は、給与だけでなく、その給与でどのような生活が送れるかによっても左右される。
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生活コスト: 全体的に、東京は北京や上海よりも生活コストが高い。特に若手専門職にとって重要な2つの項目でその差は顕著である。
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家賃: 東京の家賃は、より狭いスペースに対してより高額である。東京中心部の1LDKマンションの平均家賃は月額約17.2万円に達する 。これは若手社員にとって大きな経済的負担となる。
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交通費: 東京の公共交通機関の運賃は、中国の大都市と比較して著しく高い 。
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生活の質(日本の競争優位性): 一方で、日本での生活には金銭に換えがたい魅力がある。これこそが、日本の「ソフトな」セールスポイントとなる。
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環境と安全: 良好な大気質、食の安全性、社会全体の秩序と清潔さは、中国の大都市での生活経験者にとって大きな魅力となる 。
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労働文化: 日本の労働文化も厳しい側面はあるものの、一部の中国テック企業で見られる「996(朝9時から夜9時まで週6日働く)」のような極端な長時間労働は比較的少なく、長期的な心身の健康を考えた場合、より持続可能であると捉えられる可能性がある 。
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文化的経験: 日本という国で生活し、働くこと自体が、中国では得られないユニークな文化的価値を持つ
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候補者の判断基準は、単なる「手取り額」ではなく、その手取り額でどのような生活の質を購入できるかという「ネット・ライフスタイル」の計算に基づいている。日本での高い生活コストは、一見するとマイナス要因だが、それは清潔な空気や安全な社会といった、より高い生活の質への対価と捉えることができる。この価値観を候補者に伝え、移住初期の経済的ショックを緩和するための具体的な支援(第3.2章で詳述)を組み合わせることが、採用成功の鍵となる。
2.3. 純所得(手取り)分析:日本における現実的な可処分所得
第1.3章と同様に、日本での高額報酬が実際にどの程度の手取り額になるのかを試算する。ここでは、本レポートで推奨する年収1,000万円を例に、東京在住の40歳未満・独身の従業員の手取り額を計算する。
試算前提:
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年間総報酬(額面):1,000万円
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勤務地:東京都
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対象者:独身、40歳未満(介護保険料なし)、扶養家族なし
控除項目の計算:
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社会保険料:
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健康保険料:標準報酬月額の上限に基づき計算。東京都の協会けんぽ料率(2025年度見込み)を約9.9%とすると、労使折半で従業員負担は約4.95%。年額で約49.7万円となる
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厚生年金保険料:料率は18.3%で固定されており、労使折半で従業員負担は9.15%。標準報酬月額の上限(65万円)で計算すると、年額で約71.4万円となる 。
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雇用保険料:料率0.6%(2025年度見込み)を適用すると、年額で6万円となる
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税金:
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所得税・住民税:給与所得控除(195万円)、基礎控除(48万円)、社会保険料控除(約127万円)を差し引いた課税所得に対して、累進課税率(所得税)と一律税率(住民税、約10%)が適用される
。各種シミュレーションによれば、年収1,000万円の場合の所得税と住民税の合計は約145万円程度となる 。
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複数の情報源における試算は、年収1,000万円の手取り額が約720万~730万円の範囲に収まることを示唆している
この表2.2と、前章の表1.2を並べて比較することで、両国における報酬の魅力を、候補者と同じ「手取り額」という視点から客観的に評価することが可能となる。
第3章:勝利を掴むためのオファー戦略提言
これまでの分析を統合し、採用企業が実践すべき具体的かつ実行可能な戦略を提言する。
3.1. 報酬ティアの提案とその論理的根拠
画一的な給与額を提示するのではなく、候補者のスキル、経験、潜在能力に応じて柔軟に対応できる段階的な報酬体系を導入することが効果的である。
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ティア1:「競争力のあるオファー」- 推奨年収:800万~900万円
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論理的根拠: この水準は、中国国内のトップティア企業が提示するオファーの手取り額(約570万円)を、東京の高い生活コストを考慮してもなお、明確に上回る。これにより、移住に対する強力な金銭的インセンティブが生まれる。また、日本の国内企業ティア(約500万円)を大きく引き離し、GAFAMティアの下限(マイクロソフトの基本給等)に匹敵する水準に達することで、企業がグローバルな人材獲得競争に参加する本気度を示すことができる。
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ティア2:「市場をリードするオファー」- 推奨年見:1,000万~1,200万円
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論理的根拠: この水準は、日本国内のGAFAM(特にAmazonやGoogle)が提示するトップレベルのオファーと正面から競合するために設計されている 。これは、ファーウェイの「天才少年」プログラムやGoogleのAIレジデンシーに選ばれるような、候補者の中でもトップ1%の人材をターゲットとする際に用いるべきである。このレベルのオファーを提示することは、企業が最高の才能に対して最高の投資を惜しまないという強力なメッセージとなり、企業のブランドイメージを飛躍的に向上させる効果も期待できる。
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これらの報酬水準を提示する際には、単に額面を伝えるだけでなく、第1章と第2章で試算した手取り額の比較(中国:年収40万元(約840万円)→手取り約27万元(約567万円) vs. 日本:年収800万円→手取り約600万円)を具体的に示し、日本で働くことによる経済的なメリットを明確に可視化することが、候補者の理解と納得を得る上で極めて重要である。
3.2. 魅力的な「ジャパン・ウェルカム・パッケージ」の設計
新卒の候補者にとって、日本への移住は経済的に大きな負担を伴う。特に、東京の賃貸契約に必要な敷金・礼金・仲介手数料といった初期費用は、月額家賃の4~6倍に達することもあり、貯蓄の少ない若者には大きな障壁となる 。この「初期費用の壁」という具体的な問題を企業が直接的に解決する姿勢を見せることは、候補者の不安を解消し、企業への信頼感を醸成する上で絶大な効果を発揮する。
単なる一律の移転費用を支給するのではなく、候補者の具体的なペインポイントに寄り添った、以下のような体系的なパッケージを「日本赴任特別手当」として提供することを強く推奨する。
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推奨項目1:移転・生活準備一時金(200,000円)
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目的:航空券代、ビザ申請費用、来日直後の生活必需品の購入など、移転に伴う雑多な初期費用をカバーする。
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推奨項目2:住居初期費用支援金(500,000円)
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目的:東京での住居契約時に必要となる高額な敷金、礼金、仲介手数料、保証会社利用料などを直接的に支援する。これは、候補者が最も懸念する経済的負担を軽減するための、パッケージの核となる要素である。
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推奨項目3:移行期間家賃補助(月額50,000円を最初の12ヶ月間)
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目的:来日後、生活に慣れるまでの最初の1年間の家賃負担を軽減する(年間総額600,000円)。これにより、月々の手取り額に余裕が生まれ、候補者は経済的な心配をせずに新しい環境に適応することに集中できる。
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このパッケージの総価値は130万円に達し、単なる給与額以上の、企業の強力なサポート意思を示すものとなる。
このパッケージは、採用担当者が候補者にオファーを説明する際の強力なツールとなる。企業が候補者の具体的な困難を深く理解し、その解決にコミットしていることを示すことで、単なる雇用主ではなく、移住を支援するパートナーとしての信頼を勝ち取ることができる。
3.3. 数字を超えて:総合的な価値提案の構築
金銭的な条件は必要不可欠だが、それだけでは十分ではない。オファーは、より優れた長期的機会として提示される必要がある。
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ベストプラクティスの活用: メルカリ社の外国人採用戦略は、多くの示唆を与えてくれる
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インテグレーション・サポート: ビザ申請の全面的な支援 、候補者のための日本語研修と、既存社員のための英語・中国語研修といった双方向の言語学習プログラム、そして業務と日本での生活の両面をサポートするメンター制度の提供は、候補者が安心して能力を発揮できる環境を約束する。
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キャリアパスの透明性: エンジニアとしてのキャリアパスを明確に提示することが重要である。日本の深刻なIT人材不足
は、裏を返せば、優秀な人材にとっては急速な成長と長期的な雇用の安定が得られる機会となる。これは、近年グローバルなテック業界で見られる不安定な雇用環境やレイオフのリスク との明確な差別化要因となり得る。 -
「なぜ日本か」の訴求: 第2.2章で分析した日本ならではの魅力を積極的にアピールする。安全で清潔な生活環境、豊かな文化体験、そしてより持続可能なワークライフバランスは、候補者の人生全体の質を高めるという、金銭以上の価値を提供する。
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結論:グローバルタレントへの戦略的投資
本レポートで提言する戦略は、単なる採用コストの増額を意味するものではない。それは、企業の未来のイノベーションと成長を担うグローバルなトップタレントを確保するための、不可欠な戦略的投資である。
中国のトップ大学を卒業するIT人材の獲得競争に勝利するためには、以下の三位一体のアプローチが求められる。
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トップティアの報酬: 候補者の能力に応じて年収800万~1,200万円という、グローバル基準で競争力のある給与を提示する。
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手厚い移住支援: 総額約130万円規模の、候補者の具体的な困難を解決するために設計された「ジャパン・ウェルカム・パッケージ」を提供する。
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魅力的な非金銭的価値: 日本でのキャリアと人生がもたらす長期的な成長機会、安定性、そして優れた生活の質を組み合わせた、説得力のあるストーリーを構築する。
この積極的かつ包括的な戦略を採用することにより、貴社は熾烈な人材獲得競争において競合他社との差別化を図り、将来の事業成長に不可欠な、世界で最も優秀なIT人材を確保することが可能となるだろう。
【正式告知/最終視察内容決定】
JTB上海・北京トップ大学新卒IT高度人材獲得ツアー
私たちインフラコモンズ株式会社では、先日ご紹介の「シリコンバレー最先端ヒューマノイド企業視察ツアー」に続いて、中国・上海および北京のIT人材教育に注力するトップ大学群を訪問し、日本企業が各大学の優秀なIT系人材――新卒のみならず、修士・博士課程の高度人材まで含めて――とつながるための視察ツアーを実施します。
【視察日程】
◉9月22日月曜日〜9月26日金曜日 申込締切8月26日火曜日
【視察設計のポイント】
- IT人材教育を積極的に行なっている上海と北京のトップ大学における新卒/修士/博士課程人材窓口を訪問し、御社と各大学とのパスが構築できる機会を目指します。
- ベテランの日本人中国語通訳が付きます。
- 旅行会社はJTBになります。参加申込はJTBの予約申込ページOASYSから行っていただきます。8月上旬に開通したURLを告知、正式なお申し込みができるようになります。
- 月曜出発、金曜日帰国。最少催行人数10名。最大20名。(20名になった時点で締め切ります)
- 中国における視察コーディネート会社:CARETTA WORKS。視察実施後の個別企業様と各大学との交渉等を個別のコンサルティングサービスとして請け負うことも可能です。
- 視察代金は80万円(航空サーチャージおよび空港使用料別)
【対象となる企業】
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日本の大手IT企業。特にAIやクラウド人材を求めている大手IT企業
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日本の自動車メーカー及びティア1企業でSDV(Software Defined Vehicle)開発人材を求めている企業、及び、ADAS開発人材を求めている企業
- 日本の大手企業において、業務部門内でアプリケーションを内製するチームの充実を図りたいとお考えの企業
- 日本のIT人材企業で中国IT人材企業とのパイプを作りたいとお考えの企業
【視察スケジュール】
【Day 1】東京 → 上海
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午前:東京(羽田/成田)発
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午後:上海浦東空港着
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夕方以降:自由行動/休憩→歓迎会・オリエンテーション
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宿泊:上海市内ホテル
【Day 2】上海市内訪問(午前+午後で2大学) → 夜に北京へ移動
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上海交通大学、復旦大学の2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
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夜便:上海 → 北京移動(例:19〜21時台便)
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宿泊:北京市内ホテル
【Day 3】北京訪問(午前+午後で2大学)
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清華大学、北京大学、北京航空航天大学、北京郵電大学、北京理工大学のいずれかのうち、2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
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宿泊:北京市内ホテル
【Day 4】北京訪問(午前+午後で2大学)
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清華大学、北京大学、北京航空航天大学、北京郵電大学、北京理工大学のいずれかのうち、2校のIT新卒人材にアクセス可能な窓口を訪問
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宿泊:北京市内ホテル
【Day 5】北京 → 東京
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午前:自由時間/チェックアウト
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午後:北京首都空港または大興空港へ送迎
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夜便:北京発 → 東京着
【資料請求および旅行について】
株式会社JTB
https://www.jtbcorp.jp/jp/
ビジネスソリューション事業本部 第六事業部 営業第二課内 JTB事務局
TEL: 03-6737-9362
MAIL: jtbdesk_bs6@jtb.com
営業時間:月~金/09:30~17:30 (土日祝/年末年始 休業)
担当: 稲葉・野田
総合旅行業務取扱管理者: 島田 翔
お問い合わせは、株式会社インフラコモンズ (ホームページ下端の問い合わせ欄よりお送りください)まで