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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

日本のロボティクス関係者が見るべきポイント20:北京で開催された世界ロボット博覧会(8月上旬)

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中国は広いため、ロボティクス/ヒューマノイドの産業集積が3つの都市に分散しているそうです。北京、杭州(上海のそば)、深圳。それぞれが部品メーカーの集積があり、大学による先端技術研究が行われており、そのエコシステムの上に、Unitree(杭州)、DeepRobotics(杭州)、Agibot(上海)、UBTECH Robotics(深圳)などの完成体メーカーが存在しています。

先日取り上げた7月下旬の上海のロボット展覧会に続いて、北京で8月上旬にWorld Robot Conference 2025が開催されたのも、中国のロボット開発のセンターが3つの都市それぞれにあることを反映しています。

関連投稿:専門家向け:7月開催上海ロボット展:展示内容の技術詳細を中国語媒体で徹底調査

以下ではロボティクスの専門家向けに、中国の媒体からChatGPT 5に抽出させた「日本のロボティクス専門家が着目すべきポイント、ベスト10」です。さらに調べさせるとまだ追加があるようなので、さらに追加10ポイントも掲げます。いずれも興味深いです。

これらの展示物の下層に膨大な数の部品メーカーのエコシステムが存在しています。


WRCの規模と背景

名称:World Robot Conference 2025(世界ロボット大会)
会期:2025年8月8日〜12日
会場:北京・亦創国際会展センター(Beiren Yichuang International Conference and Exhibition Center)
展示面積:50,000㎡以上(東京ドーム約1個分)
出展者数:国内外200社以上
出展ロボット数:1,500点超(世界初公開100点以上)
ヒューマノイド系出展企業:50社以上
来場者数:推定10万人超
主催:工業・情報化部(MIIT)、北京市政府、中国科学技術協会 他

WRC 2025 技術注目ポイント・ベスト10

  1. 自律"換電"の実用化──3分でバッテリー交換、24/7運用を前提化
     UBTECHのWalker S2は約3分の自動換電をデモ。ライン停止を伴う有線充電からの脱却により、実運用のOEE・可用性設計が現実解に。北京人形ロボティクスの「天工2.0」は"立ったままの換電(站立换电)"をうたうなど、設計段階から補給性を織り込む流れが顕在化。設備配置・保全シーケンスの最適化(交換ステーション動線/台数)まで含めた"補給設計"が次の評価軸になる。 新浪财经新浪财经世界机器人大会+1

  2. 群体知能・多ロボ協調──"群脑网络2.0"とCo-Agentでロジスティクス連携
     Walker S2やCruzr S2、搬送AMR(UQI/Wali)等を、群脳ネットワーク2.0+協作エージェントで統合し、入庫~分拣までのワークフローをオンライン軌道計画+精密認識で回すデモ。多ロボ協調は「一台の巧拙」から「群としてのスループット/安全側限界」へ評価指標を転換させる。 澎湃新闻

  3. エンドエフェクタのブレークスルー──"指関節アクチュエータ"と"微型行星滚柱丝杠"微小プラネタリーローラースクリュー)
     指関節一体型アクチュエータ(Hu-MLF)や、"世界最小級"の微小ローラースクリューが多数出展。高トルク密度/高バックドライバビリティ/高感度力覚の同時達成を指向し、手先の可搬×精緻性(把持安定・滑り検知・面圧制御)を底上げ。布・ケーブル・食品のような柔軟物の再現性ある操作に直結する地味だが本質的な進化。 世界机器人大会+2世界机器人大会+2

  4. 「動く」から「使える」へ──SDK、遠隔運用、オンライン学習の"裏側"を表舞台に
     今年はSDK/仮想環境/遠隔運用基盤タスクスクリプトの再利用オンライン学習・OTAまで含めた"運用OS"の提示が相次ぐ。見えない基盤の成熟が、導入前PoC→立上げ→保守の全ライフサイクル短縮に効く。価格・リードタイム・保守契約まで語られ、正味ROI志向が鮮明。 m.ofweek.comdonews.com

  5. 実タスクでの運動計画:オンライン軌道計画×ランダム分拣(自動仕分け)
     UBTECHは11台のWalker S1で、精確視覚認識+オンライン軌道計画により"動的・ランダム分拣(自動仕分け)"をこなすデモ。単発の巧緻動作から、変動環境の量処理へ軸足が移る。学習済み方策と実時間最適化のブレンド(VLA+最適制御)が実装段階に入りつつある。 澎湃新闻

  6. 価格帯の地殻変動──"3万元(63万円)時代"と15.8万元(331万円)フルサイズ機
     "人形机器人3万元时代"を報じる動き。研究/教育向けは3.8万元(80万円)クラスまで下落、逐际动力のLimX Oli15.8万元(331万円)165cm/31DoFを掲示。設計のモジュール化とBOM最適化が進み、量/値バランスの選択肢が一挙に拡大。R1等の<4万元(84万円未満)製品も普及に拍車。 新華報業網m.ofweek.com

  7. 運動プラットフォームの更新──"天工2.0"の屋外可動・長時間化と教育/小型機のE2E学習
     天工2.0は屋外複雑地形での走行と長時間稼働+換電を訴求。教育~商業サービス向けのPM0124DoF・2m/s・腰部320°回転光学モーションキャプチャ×模倣/強化学習E2E NNで"人らしい歩容"。大~小型で学習環境とモーション資産を共有する設計が目立つ。 世界机器人大会

  8. "フルチェーン"の国産化加速──関節モジュール/減速機/六軸力覚まで
     六軸力覚・関節モジュール・谐波减速器等、コア部品の国産比率が上昇。微型行星滚柱丝杠(微小プラネタリーローラースクリューなど手先要素の小型高性能化も相まって、補修性・在庫性・価格安定性が改善。量産で効く"地の足腰"を固める動き。 中国政府网澎湃新闻

  9. "競技"を実験場に──完全自律サッカー(3v3/5v5)で知覚・運動・戦術を同時検証
     WRC連動の世界人形机器人运动会(ヒューマノイド運動会)では、AI完全自律の3v3/5v5を実施。T1/K1(加速进化)等の同一ハード+各チーム独自アルゴリズムという設計で、視覚認識→局所計画→チーム戦術の総合テストベッド化。環境適応・安全則・接触ダイナミクスの"実時間耐性"の把握に有効。 北京市政府cn.chinadaily.com.cn清華大学bjnews.com.cnm.bjnews.com.cn

  10. メタ指標の提示──"百余款首発"と10大トレンド、評価軸の明文化
     出展1500件/首発100+(出展1500件/初公開100件以上)のボリュームとともに、具身智能"10大トレンド"が示され、量産工場・高品質データセット・多モーダルモデルの下沈がキーワードに。単発デモからデータパイプライン/運用指標(交期・維保)の可視化へ。技術と事業の"同時進行"が本格化。 世界机器人大会中国政府网


参考ソース(再掲)

さらに見るべき技術注目ポイント・追加10

  1. 視覚・触覚のマルチモーダル統合の進展
     多くの出展機が、カメラ画像+力覚センサーのリアルタイム融合を前提に設計。物体接触時の剛性推定/柔軟物の変形モデル適用が即時反映されるUIを備え、動的接触タスク(ケーブル配線、衣類折り畳み、袋詰め等)の成功率向上が報告された。
    → 日本の製造現場での手作業置き換え半自動化セル設計に直結。

  2. 歩行安定化アルゴリズムの軽量化・省電力化
     フルサイズ二足歩行機で100W級の平均消費電力を達成した事例が複数報告され、省電力制御と低重量構造の最適化が進む。特に膝関節でのバイオメカニクス模倣型リンク構造が増加。
    → 屋内外兼用や長時間稼働を必要とする現場に適用可能。

  3. 人協働安全規格の中国国内標準化の動き
     会期中、北京市・工信部系団体がヒューマノイド作業安全に関する国内標準案を発表。接触力限界、緊急停止規格、関節ロック機構など、ISO/TS 15066準拠を意識した内容。
    → 日中間での安全規格整合が進めば、日本企業の現地展開コスト削減に直結。

  4. AIモデルの下位デバイス展開(Edge Large Model)
     演算リソースを現場に置く「エッジ大規模モデル」の事例が増加。現場のカメラ・マイク・力覚から取得したデータをオンボードで解析し、クラウド同期は必要最小限に抑制。
    → 通信不安定な現場や機密保持が必要な工場での応用が期待できる。

  5. 人間型+車輪型ハイブリッドプラットフォーム
     下半身を車輪型モジュールに換装可能なハイブリッド構造が増加。歩行動作が不要なシーン(物流倉庫や広い廊下移動)では車輪で高速移動し、作業現場で二足形態に切り替える。
    → 保守作業・大型施設内搬送での効率性が飛躍的に向上。

  6. モジュール単位のアップグレード商用モデル
     関節モジュールや手首ユニットを、後付けで性能アップ可能にした商用モデルが多数。アップデート頻度の高いAI制御部と、長寿命のメカ部を分離。
    → 日本メーカーにとっては、製品寿命延長とリースモデル構築のヒントになる。

  7. 産業別特化型ヒューマノイドの増加
     製造業向けは耐油・耐粉塵仕様、医療向けは滅菌素材・狭所対応関節など、特定業界専用設計が目立った。
    → 日本でも需要の高い食品・医療・半導体分野での適用可能性が高い。

  8. ロボット専用5G/6G通信ブースト技術
     会場内で次世代通信実験が行われ、5G-Advanced/6Gプレ段階でのミリ秒レベル制御応答が検証。群制御や遠隔監視の応答性向上が示された。
    → 遠隔作業支援や複数拠点間ロボ協調に直結。

  9. 人間の動作生成データセット公開の兆し
     一部企業が、モーションキャプチャで収集した人間動作データを研究者向けに無償・有償で提供予定と発表。
    → 学習用データ確保が課題の日本企業にとって、技術検証スピード向上の好機。

  10. 現場インテグレーション即売型の台頭
     会場で受注後、数週間で現場導入可能なパッケージ機を提示する企業が増加。
    → 長期PoCや特注依頼を前提としない短期導入モデルとして注視すべき。

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