2020年までのスマートシティ市場は1,080億ドル/比較的新しい事例5都市
米クリーンテック専門のリサーチ会社Pike Researchは、世界のスマートシティの技術インフラへの投資累計が2020年までに1,080億ドルに達すると発表しました。投資は年を追うごとに増え、2020年段階では年間160億ドルに上ります。
数字を丸めて年間1兆円とすると、おおよその規模感がわかりますね。
(なお、この数字は、IT系の企業が提供する製品・ソリューションのみをカウントしているものと思われます。都市が必要とする既存のインフラ、すなわち、電力や熱、水、都市交通、住居などについてはカウントしていないはずです。)
同社はこの発表に合わせて、報告書"Smart Cities"を刊行しています。
シニアアナリストEric Woods氏はスマートシティの現状について以下のようにコメントしています。
アジアや中東では新都市中心部の設計のためのテンプレートになりうるパイロットプロジェクトが進行中だ。欧州や北米では既存の都市にオーバーレイできるインフラの枠組みの開発が行われている。現時点では、数十万〜数百万人規模の都市住民をカバーする事例はなく、スマートシティの計画立案者たちはまだまだ大きな課題に取り組まなくてはならない。
「新都市中心部の設計のためのテンプレートになりうるパイロットプロジェクト」とは、アブダビのMasdar City、シンガポールが官民挙げて天津や広州で取り組んでいるプロジェクトのことを指しているようです。まっさらな土地にスマートシティを構築するタイプです。
「欧州や北米では既存の都市にオーバーレイできるインフラの枠組み」とは、オランダ・アムステルダムのスマートシティプロジェクトに代表される既存の都市に様々な方策を組み入れるタイプのプロジェクトですね。日本の横浜などのスマートコミュニティプロジェクトもこちらのタイプになると思います。
大きな課題とは、おそらく、スマートシティの製品や技術を持つメーカーが、各自治体の首長と連携しながら、実行可能な財政的な枠組みを作るということにあると思います。投資回収に関する新しい考え方、官民連携(PPP)の新しいファイナンスモデルが必要かも知れません。
■比較的新しい事例5都市
報告書"Smart Cities"の目次はこちらにあり、取り上げられている事例が載っています。
日本であまり情報が流通していないのは、以下でしょうか。私も初めて見ました。以下は関連サイトにリンクしています。(広州のKnowledge Cityだけは独立したサイトが見つからず、関連資料の検索結果へのリンク。)
- Pecan Street Project
- Guangzhou(中国・広州): Knowledge City
- Smarter Sustainable Dubuque
- Portugal: PlanIT Valley
- Spain: SmartSantander
このうち広州Knowledge Cityには日立が参画していますね。
日立プレスリリース:日立が次世代都市「広州ナレッジシティ」構築に協力することで合意 (以下はプレスリリースより)
広州ナレッジシティは、2009年2月に中国広東省とシンガポール政府が建設について合意した次世代都市であり、KCAC(中国広東省広州市政府傘下のナレッジシティ管理委員会)およびSingbridge(シンガポール政府系投資会社)が本プロジェクトを企画・運営しています。
本プロジェクトは、研究開発力、クリエイティブ産業、教育機関、ヘルスケア、情報技術、バイオテクノロジー、新エネルギーを含む環境技術や先端技術を持つグローバルな知的企業を誘致し、高度な人材を集めることにより、新たなビジネスを創出、経済を循環させ、持続的な発展をめざすことをコンセプトにしています。広州市中心部から約35キロメートルに位置する蘿崗区(らこうく)の広さ123平方キロメートルの敷地に、2030年頃に人口約50万人の次世代都市が完成する見込みです。今回の合意に基づき、日立は、本プロジェクトに日本企業で初めて参画します。具体的には、日立は、広州ナレッジシティにおいて、エネルギーマネジメント、再生可能エネルギー、ITプラットフォーム、次世代交通などの分野におけるソリューションの提供に向けた開発拠点を設立する予定であり、実行可能性調査(FS : Feasibility Study)を開始します。また、本開発拠点の設立および開発・実証について、KCACおよびSingbridgeからサポートを受けることに合意しました。