DXで圧倒的な成功を収めているユニクロは圧倒的に多くのIT予算をかけている。コマツ、ブリヂストン、ニトリの成功事例も同じ
DXの事例としてユニクロの存在は圧倒的です。以下の投稿に同社(ファーストリテイリング)のフラッグシッププロジェクト「有明プロジェクト」の概要をまとめました。とにかく圧倒的です!
note:「服を売る会社」から「情報を売る会社」へ。ユニクロのDXが、日本企業の常識を破壊する理由
結局、日本のDXがイケてないのは、単純にDXにかけるお金が少なすぎるからではないか?そういう疑問がずっとありまして、そこの部分を調査してみました。結論はやはり「お金をかけて無さすぎるから、DXがうまく行かない」でした。
日本のIT予算の常識、横並び主義を徹底的に変革する必要があると思います。
日本の横並びでIT予算を投じていると、AIでどんどん凶悪になる世界水準のランサムウェアに狙われます。
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日本のDX投資の定量的分析。ファーストリテイリングおよび国内外先進事例のIT予算ベンチマーク調査
序論:日本企業におけるデジタルトランスフォーメーションの停滞と「資本」の欠如
日本の産業界において、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が定着して久しいが、その実態は「概念の理解」や「組織文化の醸成」といった定性的な議論に偏重しており、変革を完遂するために必要な「資本投入」という冷徹な事実から目を背ける傾向がある。多くの経営者が、既存のIT予算の枠内、あるいは限定的な追加予算によってDXが実現可能であると誤認している。しかし、デジタルの力によってビジネスモデルを根本から再定義し、グローバル競争を勝ち抜いている企業を分析すれば、そこには例外なく、売上高に対して数パーセントという明確かつ巨額のIT予算が継続的に投じられているという現実が浮かび上がる。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査」によれば、日本企業のIT予算は売上高比で平均1.3%から1.7%程度に留まっている
株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ):情報製造小売業を支える投資の論理
有明プロジェクトとグローバル・ワン・プラットフォームへの巨額投資
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、自らを「情報製造小売業(Digital Consumer Retail Company)」と定義し、世界一の服の小売業を目指している
この変革を支えるための投資は、従来の小売業の常識を遥かに超えている。2018年に始動した物流倉庫の自動化プロジェクトでは、ダイフクとの戦略的パートナーシップに基づき、日本国内のみならず全世界の物流拠点で自動化を進めるため、総額で1,000億円規模の投資が計画された
| 項目 | 投資規模・実績 | 戦略的意義 |
| 物流自動化倉庫(全世界) |
総額 約1,000億円 |
入庫から仕分けまでの自動化、作業員9割削減 |
| 2020年8月期 システム投資額 |
304億円 |
有明プロジェクトおよび基幹システム刷新 |
| グローバル・プラットフォーム | 全拠点同一システム | 在庫・販売データのリアルタイム一元管理 |
IT予算の売上高比率の推計
ファーストリテイリングのIT投資額を、公開資料に基づき推計する。2020年8月期の設備投資実績において、「システム他」として304億円が計上されているが、これは同年の連結売上収益約2兆円に対して約1.5%に相当する
2024年8月期の売上収益は3兆1,038億円に達している
| 推計項目(2024年8月期ベース) | 推計金額(下限) | 推計金額(上限) |
| 売上収益 | 3兆1,038億円 |
3兆1,038億円 |
| IT設備投資(ソフトウェア取得等) | 約400億円 | 約500億円 |
| IT営業費用(クラウド・保守・人件費) | 約400億円 | 約600億円 |
| 推定IT予算総額 | 約800億円 | 約1,100億円 |
| 売上高比 IT予算比率 | 約2.6% | 約3.5% |
柳井正会長兼社長が「人材投資こそが最も重要」と説き、デジタル人材に最高水準の報酬を用意している点は、この高いOpEx比率を裏付けている
日本のDX成功事例3社における投資実態の分析
ユニクロと同様に、DXを単なるスローガンに終わらせず、具体的な事業成果に結びつけている日本企業3社(小松製作所、ブリヂストン、ニトリ)の事例を検証し、その投資比率を明らかにする。
1. 株式会社小松製作所(コマツ):ダントツ・バリューを実現するIT投資
コマツは、建設機械の遠隔管理システム「KOMTRAX」や、施工現場の全工程をデジタルで繋ぐ「スマートコンストラクション」により、製造業のサービス化(サービタイゼーション)を先駆的に実現している
投資の定量分析
2024年3月期の有価証券報告書によれば、連結ベースのソフトウェア帳簿価額は330億円、ソフトウェア建設仮勘定は146億円である
| 項目 | 2024年3月期実績 | 比率・内訳 |
| 売上高 | 3兆8,614億円 | |
| 研究開発費 | 1,104億円 |
売上高比 2.9% |
| ソフトウェア(資本的支出) | 約100億円規模 |
定常的な刷新 |
| 推定IT・DX関連支出総額 | 約1,200億円 | R&Dの一部を含む |
| 売上高比 投資比率 | 約3.1% |
コマツの強みは、IT投資を「コスト」ではなく、将来のキャッシュフロー成長のための「成長戦略案件」として別管理し、予算を重点配分している点にある
2. 株式会社ブリヂストン:ソリューション事業への転換を支える3%の規律
ブリヂストンは、タイヤの「創って売る」モデルから、顧客のタイヤ利用をデジタルで支える「使う」ソリューション事業への変革を推進している
投資の定量分析
同社は、製品・生産技術開発における研究開発費を売上収益比 3%レベル で維持する方針を明確にしている
| 項目 | 2025年度計画 | 戦略的意図 |
| 売上収益(予想) | 約4.4兆円 | |
| 研究開発費目標 |
売上高比 3.0% |
デジタル技術との融合 |
| 設備投資(システム・DX含) | 約4,060億円 |
24MBPの初年度重点投資 |
| 推定IT・DX関連支出総額 | 約1,400億円 | |
| 売上高比 投資比率 | 約3.2% |
ブリヂストンのDX投資は、単なるIT部門の予算ではなく、経営戦略と表裏一体となった「事業投資」としての性格が強く、売上比3%という数値は経営陣との合意事項として聖域化されている。
3. 株式会社ニトリホールディングス:内製主義を貫くための資本投下
ニトリは「製造物流IT小売業」という独自のビジネスモデルを掲げ、25年以上にわたりシステムのフルスクラッチ開発(自社開発)を継続している
投資の定量分析
ニトリの2025年3月期の設備投資見込額は450億円である
| 項目 | 実績・計画値 | 投資の性格 |
| 売上高(2024年3月期) | 8,957億円 | |
| 設備投資額 |
422億円 |
ソフトウェア・物流自動化含む |
| ニトリデジタルベース設立 |
2022年〜 |
専門人材の集中採用 |
| 推定IT・DX関連支出総額 | 約200億〜250億円 | 自社開発コスト中心 |
| 売上高比 投資比率 | 約2.2% ~ 2.8% |
ニトリのIT投資比率が小売業平均を大きく上回っているのは、システムを「外部から買うもの」ではなく、「自ら作り上げ、競争力の源泉とする資産」と位置づけているからである。この内製化コストこそが、同社の高い収益性の裏付けとなっている。
米国におけるDX成功事例:異次元の投資規模
日本の経営者がベンチマークとすべきは国内企業に留まらない。グローバル市場で覇権を握る米国企業のIT投資規模は、日本の常識を根底から覆すものである。
ウォルマート(Walmart):リアルの巨人のデジタル化
ウォルマートは、アマゾンの台頭に対し、過去10年間で徹底的なデジタル変革を行い、オムニチャネルの覇者へと返り咲いた。同社の2025年度の資本的支出(Capex)計画は、売上高の 3.0%から3.5% を維持している
| 指標 | ウォルマート(2024-2025) | 日本企業への示唆 |
| 年間総売上高 |
6,481億ドル |
約100兆円規模 |
| 年間資本的支出(Capex) |
229億ドル |
約3.5兆円 |
| IT・サプライチェーン投資比率 |
売上高比 3.5% |
額・比率ともに日本を圧倒 |
ウォルマートの投資の約60%(約146億ドル)は、テクノロジー、サプライチェーン、顧客向けイニシアチブに割り振られており、ITが経営の最優先事項であることを示している
アマゾン(Amazon):テクノロジーへの無限再投資
アマゾンの「テクノロジー・アンド・コンテンツ」支出は、事実上のDX・IT予算であるが、2024年度のその額は885億ドル(約13.8兆円)に達する
| 指標 | アマゾン(2024実績) | 投資のインパクト |
| 売上高比 IT・コンテンツ支出 |
13.8% |
AWS、AI、ロボティクス開発 |
| AIインフラ投資計画(2026年) |
2,000億ドル |
次世代覇権の確保 |
アマゾンにとってテクノロジーはもはやツールではなく、ビジネスそのものである。この比率は、DXを「業務効率化」の枠組みで捉えている日本企業の経営者にとって、戦慄すべき数字である。
ドミノ・ピザ(Domino's Pizza):ピザを売るテクノロジー企業
「我々はピザを売るテクノロジー企業だ」と公言するドミノ・ピザは、米国のデジタル売上比率を85%まで高め、デジタル変革の代名詞となった
日本の経営者への提言:DX成功のための「3%の規律」
本報告書の分析を通じて得られた最も重要な洞察は、DXの成功には「精神論」や「あるべき論」ではなく、売上高の 最低でも3%前後 という明確なIT予算の投下が不可欠であるという事実である。
IT予算(売上高比)のベンチマーク比較
| 企業・カテゴリー | 推定IT/DX予算比率 | DXの到達度 |
| アマゾン(米国) | 13.8% | 世界最強のデジタル・プラットフォーマー |
| ウォルマート(米国) | 3.5% | オムニチャネルのグローバルリーダー |
| 小松製作所(日本) | 3.1% | 製造業のサービス化における成功事例 |
| ブリヂストン(日本) | 3.2% | ソリューション事業への構造転換中 |
| ユニクロ(日本) | 2.6% ~ 3.5% | 情報製造小売業への変革を実現 |
| 日本企業平均 | 1.3% ~ 1.7% | 既存システムの維持(守りのIT) |
1. 資本投入なき変革はあり得ない
DXとは、既存の「ヒト・モノ・カネ」の配分を、データとテクノロジーを軸に抜本的に組み替える行為である。ユニクロが1,000億円を投じて物流を自動化したように、資本を投下して物理的、デジタル的インフラを再構築しなければ、現場の意識改革だけでビジネスモデルが変わることはない。経営者は、DX予算を「ITコスト」ではなく、「事業存続のための戦略投資」として位置づけ、売上高比3%を基準値として確保すべきである。
2. 攻めのITと守りのITの分離
多くの日本企業では、限られたIT予算が既存システムの保守運用(守りのIT)に食いつぶされている。DXを推進するためには、現状の1.5%程度の予算とは別に、変革のための「攻めの予算」を確保しなければならない。コマツのように成長戦略案件として予算を別枠管理し、景気変動に左右されない投資の聖域を作ることが成功の鍵となる。
3. グローバル同一プラットフォームの構築
ユニクロがグローバルで同一のプラットフォームを運用している事実は、DXの本質が「データの標準化」にあることを示している。地域ごとにバラバラなシステムを許容することは、データの断絶を生み、デジタル変革の恩恵を最小化させる。初期投資は大きくなるが、世界共通のデジタル基盤を構築することこそが、中長期的な運用コストの削減と、データ利活用の最大化をもたらす。
結論
デジタルトランスフォーメーションが成功するか否かは、経営者の「覚悟」の量ではなく、投じた「資本」の量によって決まる。本報告書で取り上げたユニクロ、コマツ、ブリヂストン、ニトリ、そして米国の先進企業は、例外なく売上高の3%から10%を超えるIT予算を継続的に投じている。
日本企業の多くが留まっている売上比1.3%〜1.7%という水準は、いわば「戦う前から負けている」状態である。この投資不足を現場の努力や精神論でカバーすることは不可能である。日本の経営者が今なすべきことは、DXを「魔法の杖」のように語るのをやめ、自社の売上高の3%という明確な金額をデジタルの祭壇に供えることである。巨額の資本投下という痛みなくして、デジタルによる破壊的革新の果実を得ることはできない。本報告書のデータが、日本の経営者が「投資の論理」に目覚める一助となることを期待する。