クラウド・エコシステム(48)エコシステム形成における事業者の8つの役割と5つのプロセス
クラウド・エコシステムは、クラウドをベースに多くの関係事業者やグループを集約するプラットフォームとしての役割を担い、多くの関係事業者が集まることにより、外部ネットワークとの連携効果を生み出し、新しいビジネスの機会を創出しています。
NIST クラウド・コンピューティングのリファレンス・アーキテクチャ、NIST SP500-292が提示しているアクターモデルでは、クラウドを構成するそれぞれの役割について、「Cloud Consumer」「Cloud Provider」「Cloud Carrier」「Cloud Auditor」「Cloud Broker」の5つに分類しています。
Cloud Consumer:
クラウドサービスの利用者、および組織に属する管理者
Cloud Provider:
クラウドサービスを提供する事業者および組織
Cloud Auditor:
クラウドサービスの運用やパフォーマンス、セキュリティなどのアセスメント(評価)を第三者機関としてCloud Consumer に提供する組織
Cloud Broker:
クラウドサービスの管理や、Cloud Consumer とCloudService Provider 間の契約締結の仲介事業者
Cloud Carrier:
クラウドサービスの利用に必要なネットワークを提供する事業者
さらに、IDCでは、上記の5つのアクターモデルに加えて、以下の3つの役割を加えています。
Cloud Enabler(Components):
クラウドサービス基盤を構築するために必要なIT 製品およびサービスの提供者
Cloud Community:
特定のクラウドサービスや技術の利用者が中心の情報交換を主目的とした組織やコミュニティ
Cloud Integrator:
クラウドサービスの導入支援を行う事業者。
(※Cloud Integrator とCloud Broker は、同一事業者、組織となることも)
クラウド・エコシステム形成のプロセス
クラウド・エコシステムの形成には、以下のようなステップが考えられます。
1.Cloud ProviderとCloud Consumerとのシンプルな取引
Cloud Consumerが、Cloud Enablerの提供によって構築されたCloud Providerが提供するサービスを利用するシンプルな取引形態で、クラウドサービスの提供時の多くはこのモデルから始まります。
2.Cloud Communityによるクラウド・エコシステムの組成
クラウド・エコシステムの形成には、該当するクラウドサービスを中心としたサードパーティが情報交換や連携を目的とするコミュニティや組織づくりが契機となります。組織やコミュニティの活動が活発なほど、該当のクラウドビジネスの潜在的な成長性は高いと言えるでしょう。
3.Cloud BrokerやCloud Integratorの仲介・支援
該当のサービスの普及が進むと、運用管理や付加価値サービスなど高度なニーズが出てきます。そのため、Cloud Consumer とCloudService Provider 間の契約締結を仲介し付加価値をつけて再販するCloud Brokerの役割が大きくなります。さらに、Cloud Consumer のオンプレミスのシステムからクラウドへマイグレーションをするといった導入支援を行うCloud Integratorのニーズも高まってくるでしょう。
4.Cloud Auditorによるクラウドサービスの安全性・信頼性向上
クラウドの普及が進み、エンタープライズ系の基幹システムまで導入されるようになると、クラウドサービスの運用やパフォーマンスや、セキュリティなどの、クラウドサービスの安全性や信頼性が問われるようになります。Cloud Providerは、Cloud Auditorを通じてセキュリティなどの認証取得をし、Cloud Consumer にその認証結果を公開することで、Cloud Consumerからの信頼を獲得し、普及を加速させていくことになります。
5.Cloud Carrierを介したInter-Cloudへ
Cloud Communityによるコミュニティ、Cloud BrokerやCloud Integratorによる仲介・支援、そしてCloud Auditorによる安全性・信頼性向上を通じて、Cloud Providerは次第にネットワークを提供するCloud Carrierにより、ネットワークでクラウド間がつながるInterCloudを形成していくことになります。その代表的な動きが、ネットワークをソフトウェアでプログラマブルで管理・制御するSDN(Software Defined Network)による仮想ネットワークの潮流です。クラウドは仮想マシンやストレージだけでなく、ネットワークを含めて、オンデマンドリソース管理・制御を実現することで、InterCloudを通じた巨大なバリューチェーンを形成していくことができるでしょう。
※クラウド・エコシステムに関するブログ
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