中国ヒト型ロボット新星X Square Robot。アリババ等から2億8,000万ドル調達。ホテル向けQuanta X2は価格1万ドル目指す
Xで海外のロボティクスの情報を追いかけていますが、毎晩のようにすごい動画が流れてきて衝撃を受けます。
中国でヒューマノイド/ヒト型ロボットの新星が現れました。華為から「天才少年」の称号を得た彭志輝氏が創業者となっているX Square Robotです。
創業者は、中国の技術者コミュニティで広く知られる「稚暉君(Zhì huī jūn)」こと彭志輝氏です。彼は、中国の動画共有プラットフォーム「Bilibili」で「野生のアイアンマン」の異名を持つ著名なテクノロジーインフルエンサーとして、数百万人のフォロワーを抱えています
。電子科技大学で修士号を取得後、OPPO研究院でのAIアルゴリズムエンジニアを経て、ファーウェイ(華為)の「天才少年」プログラムに参画し、最高年俸である201万元超を得ていた経歴を有しています 。
同社はアリババなどからすでにUSD 280 million(2億8,000万ドル)の資金を調達しており、2026年にはIPOの予定です。設立から3年しか経っていない中で、もう商用レベルのヒューマノイドを発表しています。以下に動画がありますのでご覧下さい。
移動のための「両足」をあえてローラー型にしたのは、この機体が目標としているホテルなどサービス業の現場では床がスムーズな平面であるため、両足を備えなくても良いだろうという割り切りだと思います。日本でもTelexistenceのコンビニ用ロボットで同じ割り切りが見られます。これはロボット完成体の最終価格を落とすことにつながるので良い選択だと思います。つまりヒューマノイドは必ずしも両足で歩かなくても良い訳です。(将来的に自動車工場で大量のヒューマノイドが採用される時代には、ヒューマノイドが歩きやすい床面設計が行われるようになり、ローラーで移動するヒューマノイドが重用されるようになるかも知れません。)
以下が同社に関するスナップショット的なレポートです。
X Square Robot概要:中国エンボディドAIロボティクスの新星
(ちなみに中国でエンボディドAI、具身智能と言う時、ジェンセン・フアンが言った「フィジカルAI」と同じものを想定しているようです)
企業プロフィール
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設立:2023年12月、深圳を拠点とする新興スタートアップです。Assembly MagazineMetal
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ドメイン:「一般目的の身体性を伴う知能(embodied intelligence)」に注力し、ソフトウェアとハードウェアの統合開発を独自に進めています。X SquareMetal
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基盤モデル:WALL-Aシリーズは「知覚→推論→操作」の統合枠組みを備えた、10億以上のパラメータを持つマルチモーダルAIモデルです。X Square+1
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オープンソース化:「Wall-OSS」と呼ばれる基盤モデルとトレーニングコードを公開し、産業界・開発者コミュニティへの展開を積極的に推進しています。MetalMitrade
クアンタ X2(Quanta X2):次世代ホイール型ヒューマノイド
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発表時期:2025年8月に公式発表されました。MetalAssembly Magazine
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特徴:
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用途:ホイール基盤ながら、「360°清掃」(モップ装着)など多彩なユースケースに対応し、家庭・サービス・産業シーンで使える汎用性を意図しています。MitradeAssembly Magazine
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市場投入見通し:現時点ではマス市場向け出荷はなく、価格はユースケースに応じて変動。市場調査会社「Humanoid Guide」によると約80,000ドルと評価されていますが、同社は3〜5年で1万ドル程度にコストエッジを下げたい考えです。MitradeAssembly Magazine
追記:Quanta 2とFigure 02のDOFの比較 -
Quanta 2:62 DOF(手は20 DOF)
Quanta 2(X Square Robot)は、全身で 62自由度 を誇り、うち 手だけで20自由度 を備えることで、極めて高い操作自由度と精密な物体操作能力を実現しています。これは、新興ロボットとして非常に先進的なスペックと言えます。
Figure AI/Figure 02
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Figure 02 の手は 16 DOF です。これは、5本の指で人間に近い動きを模倣しつつ、比較的簡素化された構造です。blog.vive.com+2humanoids.wiki+2
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Figure 02 全体の自由度(全DOF総数)は公式には明記されていませんが、手が16 DOF であり胴体や脚を加えれば、Quanta 2には届かないとみられます。
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更に進化した Helix は、手首・指などを含めた 35自由度 を備えており、Figure系列の中では最も高い自由度を持つ構成です。ウィキペディア
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資金調達状況 & IPO戦略
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資金調達額:シリーズA+ラウンドで約10億人民元(約1.4億USD)調達。これを含め、累計調達額は約20億人民元(約2.8億USD)に達します。MetalAssembly MagazineTech Funding News
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主要出資者:
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初投資としてAlibaba Cloud(アリババ・クラウド)が主導。
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他にCAS Investment(中国科学院系)、China Development Bank Capital、HSG(HongShan/紅杉中国の後継)、INCE Capital、Meituan(美団)の戦略投資部門、Legend Star、Legend Capitalが参加。MetalAssembly Magazine南華早報
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資金用途:
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IPO計画:2026年前後を見据えてIPO準備に入る方針。ただし、具体的な上場先(国内/海外取引所)は未決定。Assembly MagazineTech Funding News
競合環境と差別化要因
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競合他社の例:
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X Squareの差異:
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Embodied AIのオープンソース化:Wall-OSS公開により、他社より早くエコシステム構築を促し、学術・産業界との協業を促進。
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ハードウエア+AIの一体開発体制:ソフトと物理動作を統合した「end-to-end」開発力に注力。
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早期の収益化実績:学校・ホテル・高齢者施設などに既に導入済で、実運用フェーズに入っている点が強み。Assembly MagazineMitrade
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日本のロボティクス関係者へのインパクトと注目ポイント
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オープンソース戦略の活用
-- 日本の研究機関やスタートアップでも、「Wall-OSS」基盤を活用した応用・共創プロジェクトが可能性あり。 -
実運用向けユースケースと早期導入
-- 清掃・介護・施設案内などでの先行導入事例は、ローカルなユースケース展開にも着想の源泉となりうる。 -
コスト目標と量産化への道筋
-- マス市場向け1万ドル目標は、日本でも価格面・量産技術へのインセンティブを提供する重要なメトリックです。 -
IPO期待と資金動向
-- 日本のVC・研究機関も連携や投資動向を注視すべき分野。エコシステム形成の好機といえます。