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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

BMWで働き始めているヒト型ロボFigure 02:ヒト型ロボの実用化最前線

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──ヒューマノイド導入がもたらす現場の変化と試算

近年のヒューマノイドロボット開発の中でも、最も商用化に近づいているのがアメリカ・シリコンバレー発のFigure AI社だ。同社が開発する汎用型ヒューマノイド「Figure 02」は、すでにBMWの米国工場でパイロット運用が始まり、24時間体制での現場テストが実施されている。

いよいよ、2026年以降、日本の製造・物流現場にもこのようなロボットがやってくる可能性が現実味を帯びてきた。

本稿では、Figure 02の技術的特徴、導入効果のシミュレーション、マネジメントへの影響、競合製品との比較を踏まえ、経営視点からヒューマノイド導入を検討する際の着眼点を整理したい。

Figure 02はすでにBMWで稼働中

人手不足と24時間稼働の現場における意味

ドイツのBMWは、アメリカ南部にあるサウスカロライナ州の工場において、Figure AI社のヒューマノイド「Figure 02」を試験導入している。パイロット段階では、部品の搬送や棚への補充といったタスクを、数週間にわたり24時間体制で繰り返す耐久テストが行われた。

ここで注目すべきは、単なる「技術デモ」ではなく、実環境下での人手不足を補うオペレーションの一環として使われているという点である。工場の夜勤帯や急な欠員時、定型的な搬送業務など、従来人間で埋めていた穴を補完する役割を果たしている。

日本でも人手不足が加速する中、同様の導入事例が遠くない未来にやってくるだろう。

Figure 02のスペックと対応タスク

五指ハンド、会話型AI、複数体の同時制御

Figure 02の特徴を一言で言えば、「AIで動き、AIと話す、人型の汎用作業者」である。

  • サイズ・動作:身長約160cm、重量約60kg。自律歩行速度は1.2m/s(人間と同程度)。

  • マニピュレーション:16自由度の五指ハンドを搭載し、最大25kgの荷物を持ち上げ可能。

  • 視覚認識:6台のカメラ+ステレオビジョンによる全方位視覚。

  • 音声対話:マイクとスピーカーを備え、音声での指示に対応。

  • AIスタック:独自のHelix VLAモデルにより、初見のタスクでも言語から行動を生成可能。

  • マルチロボット制御:複数台を一つのAIインスタンスで同時制御する"ハイブマインド構成"。

つまり、単なる自動機ではなく、「会話からタスクを理解し、自律的に動く」ことができる点で、従来の産業用ロボットとは一線を画している。

導入可能性シミュレーション

1台=約270万円。5台導入時のコスト効果とは

Figure AI社は、将来的にFigure 02の販売価格を2万ドル以下(約270万円)に抑える方針を打ち出している。

仮に、物流倉庫で5台導入した場合、初期投資は約1,350万円となる。これは、正社員作業者を5人新規雇用するコスト(年間給与+採用・教育コスト)と同程度、あるいはそれ以下だ。

さらに以下の点が考慮される:

  • 夜間・休日を含む24時間稼働

  • 社保・福利厚生不要

  • トレーニング不要(音声指示だけで稼働)

  • 疲労・離職のリスクがない

稼働年数3年と仮定した場合、1台あたり年間90万円(1日換算で約2,500円)で稼働する"ロボット人材"を雇うことになる。

「24時間・指示語だけで動くロボット」が変えるマネジメント

Figure 02は、単なる「人の代わり」ではない。導入すると、マネジメントそのものが変わる

従来、人間にタスクを教えるには、OJT、マニュアル、手順書が必要だった。だがFigure 02は、口頭で「この棚にこれを置いて」と指示するだけで理解する。

つまり、教育コストゼロで、タスク割り振りも柔軟になる。

たとえば、当日の出荷量や人員構成を見ながら、「今日はこのゾーンをFigureに任せよう」といった即時判断が可能になる。人とロボットが混在する職場において、ライン長やフロアマネージャーの役割も、タスク設計やロボット配置の最適化へとシフトするだろう。

競合製品との比較

ヒューマノイドロボットの商用化を目指す企業は複数存在する。

  • Agility Robotics(Digit):物流特化型の二足歩行ロボット。Amazon倉庫で導入開始。手先は二指。

  • Tesla(Optimus):AIチップを内製し、低価格量産を目指すが、現時点では会話能力は未成熟。

  • Sanctuary AI(Phoenix):遠隔操作と自律制御のハイブリッド。手先作業は可能だが商用性は未検証。

  • 1X Technologies(NEO):家庭向けを志向。小型軽量で安価、対話能力は限定的。

Figure 02の優位性は、五指ハンド+言語理解+リアルタイム自律動作の三拍子が揃っている点にある。さらに、NVIDIAとの連携により、AIの改良サイクルも高速に回っている。

まとめ:2025年〜2030年は"ロボット人材"調達戦争の時代

今後5年間は、「どの企業が最初に汎用ヒューマノイドを量産導入するか」が、現場の生産性だけでなく、採用競争力、コスト構造、企業イメージまでも左右する時代に入る。

Figure 02は、「一部の研究機関の夢」ではなく、すでに商用化段階に入った現実的な選択肢だ。価格は下がり、性能は上がる。大量導入に向けた体制も整いつつある。

製造業・物流業の経営者にとって、ヒューマノイドはもはや「夢」ではない。"人材"の一つとして検討すべき戦略的リソースである。

貴社の工場にFigure 02がやってくる日は、思っているより早いかもしれない。


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[構成]

1. エグゼクティブサマリー
2. Figure AIの設立背景と企業戦略
3. Figure 01・Figure 02のハードウェア・ソフトウェア特徴
4. NVIDIA技術スタックの活用
5. AI訓練データの生成・活用方法:デジタルツイン環境での模倣学習と 自律学習
6. 商用化への展望(量産計画、市場投入時期、競合比較)
7. 日本のロボティクス業界への戦略的・技術的示唆(特に介護ロボット 分野)
8. 参考文献一覧

米国ヒューマノイド業界のトップ:Figure AIの戦略とヒューマノイド技術の全体像


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詳細はこちら。JTB専用申込ページOASYSから申込手続きをしていただけます。 すでに4-5名の参加が内定

NVIDIAをはじめ、Figure AI、Boston Dynamics、1X Technologiesなどシリコンバレーに本社・研究開発拠点を持つヒューマノイド(ヒト型ロボット)の先端企業、及び技術スタックを提供する企業を訪問し、今後の戦略的提携・出資・買収・商談のきっかけとして先方担当者をバイネームで知り、人間関係を構築できる機会となる視察ツアーを実施します。

また、AI + ロボットの日本の権威である早稲田大学 尾形哲也教授が視察内容を監修、同行して下さり、解説等を加えていただきます。


✔︎ 最小催行人数:10名。最大20名(20名に達した時点で締切)

✔︎ 申込期間:8月1日申込受付開始(JTBのOASYS申込ページが動き始めます)、締切:9月10日(見積・請求はJTB)

✔︎ 申込:【アメリカ視察ツアー OASYS】にて受付。ツアーパスコード:tMCVCFZx5F

✔︎ 旅行代金:127万円(燃油サーチャージ・空港使用料別)

※円安・米国物価高の影響もありこの価格帯となりますことをご了承下さい。

【ツアーの見どころと訪問予定先(先方都合により代替の可能性あり)】

NVIDIA本社(Santa Clara)

世界最大時価総額企業が展開する「Newton」など物理AIスタックを学ぶ。製造業DXの核を現場で体感。

Figure AI(Sunnyvale)

「ヒューマノイドのTesla」を目指す次世代ロボット量産企業。設計思想と量産戦略を直撃取材。

Toyota Research Institute(Los Altos)

トヨタ系研究機関で、人間理解に基づくLarge Behavior Models開発を学ぶ。

1X Technologies(Palo Alto)

「人に優しいヒューマノイド」を理念に、AI・人間工学設計を深堀り。

Boston Dynamics(Mountain View支社)

Atlas/Spotなど世界最先端のダイナミクス制御と商業化戦略を視察。

UC Berkeley Hybrid Robotics Lab

学術的アプローチでのヒューマノイド動作学習、Sim2Real研究を体験。

◎ロボティクスに詳しい日本人の通訳(シリコンバレー在住のITジャーナリスト)が通訳を担当します。

◎宿泊先:Comfort Inn Palo Alto

【視察監修・同行】

早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 表現工学科 尾形哲也 教授
2025年よりAIロボット協会理事長。2025年よりJST CREST領域研究総括。深層学習、生成AIに代表される神経回路モデルとロボットシステムを用いた,認知ロボティクス研究,特に予測学習,模倣学習,マルチモーダル統合,言語学習,コミュニケーションなどの研究に従事。

【視察企画・後方支援】

株式会社インフラコモンズ 今泉大輔(当ブログ経営者が読むNVIDIAのフィジカルAI / ADAS業界日報 by 今泉大輔 運営執筆者)。現地で英語と日本語が堪能な弊社スタッフが視察メンバーのケアをさせていただきます。今泉も同行します。

ヒューマノイドに関して積極的に情報発信を行なっているYouTuberの柏原迅氏も同行します。

【資料請求および旅行について】

 株式会社JTB  
 https://www.jtbcorp.jp/jp/
 ビジネスソリューション事業本部 第六事業部 営業第二課内 JTB事務局
 TEL: 03-6737-9362
 MAIL: jtbdesk_bs6@jtb.com
 営業時間:月~金/09:30~17:30 (土日祝/年末年始 休業)
 担当: 稲葉・野田
 総合旅行業務取扱管理者: 島田 翔

【ご注意】

本スケジュールは先方都合により代替企業・研究機関への変更が生じる場合があります。

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