ベンチャーはドロドロとした意志でつながるヒト・モノ・カネ #asacafestudy
おはようございます。
再び雨の朝。秋晴れが少ない秋だと思いませんか?
今朝は、明日の朝カフェ次世代研究会前(永井さんご案内・方波見さんご案内)、「お題」が、ベンチャーにおけるヒト・モノ・カネとのこと。確かに正解の無いなかなか難しいテーマです。少し事前考察をしておこうと思い、メモをしておきます。
10/27の勉強会は、方波見さんがモデレータを務めながらのパネルディスカッション形式を取ります。机の配置とかも普段と変えた方が良いかもしれませんね。
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■ドロドロとした意志
「自分たちが食べていければいい」
そのような定常状態にある会社や組織も多いです。それとベンチャーとは、やはり何かが違うと思います。ベンチャービジネスとはなんぞや。まずはこの定義から考える必要がありますね。思いつくことを列記してみましょう。
・ブルーオーシャン(競合の少ない新規な)市場を開拓する
・従来にないやり方でレッドオーシャンに切り込む
・事業が成長している、あるいは成長への期待が認められている
・社員に事業を通じて大きな社会貢献をするのだという一体感がある
成長を求めれば、変化へのチャレンジが必須です。するとチャンスも来ればリスクも出ます。この変化へのチャレンジを続け、実績を積み重ねて、ノウハウを積み上げて、それをビジネスモデルに仕上げるのがベンチャービジネスでしょう。
そして、その根底には、『絶対に価値のあるものを創り出すのだ』という、やっている人たちのドロドロした意志のようなものがあると思います。
『自分たちの境遇を諦めない』とでもいうのでしょうか。このドロドロとしたという意志、これを発生させて継続させるところが、ベンチャービジネスの経営者にとっての、一番大きなチャレンジだとも思います。
どこかで「もういいや」と諦めてしまうことも多いですから。
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■ヒト・モノ・カネを巻き込むつむじ風
個人がベンチャービジネスを興すというのは、理屈で考えても実に難しいです。何せ、起業で必要とされるヒト・モノ・カネが、それぞれ殆どゼロに近いところから、まるでつむじ風を起こすように周りを巻き込んで加速していくのですから。
そして、このヒト・モノ・カネを巻き込むつむじ風を発生させるために、熱意だとか理念だとか夢だとか志だとか、様々な表現をされるものをツールに使います。
ところが、このつむじ風がなかなかくせ者だったりします。
それは、それが「嘘」を固めたものと見分けがつきづらいからです。極端な話、そのつむじ風が嘘だったのか真実だったのかは、創業後何年も経たなければ分らなかったりします。
中には、つむじ風を起こそうと頑張っているうちに、嘘が身に染みついてしまう人もいます。自分にもその経験があります。その状態になった人は、実に怪しげなオーラを発します。
故に、つむじ風の真ん中にいる人たちがどれくらい信用できるかという尺度はとても重要だと考えます。根幹となる「ヒト」が、おかしな状態では、そのつむじ風はおかしな方向に成長するか、崩壊してしまうわけですから。
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■カネを出す側の心境
お金を投資する側は目利きの能力とでもいうのでしょうか、なかなか難しい仕事をですが、その先が大丈夫なのかを見極める必要があります。その中心人物にブレがないか、ハッタリをかましていないか、などです。
それを見抜くための一つのツールとして、ビジネスプランがあります。
どれだけ一つの事業をしっかりと深く考えられるか。その集中力を見るのです。明文化することによって、矛盾をあぶりだすプロセスです。当初は勢いだけで巻き込もうとしている場合でも、このプロセスを経ることで、より現実的に近くなるという効果もあります。
一方、ベンチャーキャピタルや銀行も、会社で実施していると、サラリーマン的になってきます。ポートフォリオマネジメントといって、一定のリスク分布で投資をするようになってくると、中には嘘やハッタリで主張しているハイリスクハイリターン人間にも、あまり考えずにお金投入することもあります。
そもそも成功の確率が低いのだからと、玉石混交で投資をしてしまう心境です。嘘を見抜く力というものは、もっと重視されるべきですね。
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■ヒトは何を見てやってくるか
ヒトはヒトを見てやってきます。
そこで働いているヒトがどれだけ元気に働いているか。どれだけレベルが高いか。そして、それに合わせて自分も成長できることを期待してやってきます。
会社の規模や設備を見ながらやってくる人たちもいます。
どれだけ将来にわたって安定した会社なのか。という尺度ですね。ベンチャーはリスキー、大企業は安全。そのような考え方も根強いです。
面白いことに、会社が数名規模から拡大縮小を繰り返す、そのそれぞれの段階で、それぞれ必要な要素を持った人たちがやってきます。そのように振る舞ってくれるとでもいうのかも知れません。
そして、どの段階でも重要なコンセプトが、そのときにある陣容でベストが尽くせるように仕事をする、ということです。
一年ほど前にエントリーした『組織に合わせて人を配置するのか、人に合わせて組織を作るのか』にも書きましたが、このようなことが必要なのです。松下幸之助の言葉からの引用です。
何かでこんな話を読んだことがある。楠木正成の家臣に、泣き男といって、非常に泣くことの上手な者がいた。彼が泣くとまわりの者までがつい涙を誘われてしまうので、他の家臣は彼を家中におくことをいやがった。しかしある戦の折、正成は自分が討死にしたように見せかけ、その男に僧の姿をさせて、いかにも悲嘆にくれて菩提(ぼだい)を弔(とむら)っているようなふりをさせた。その泣き方がまったく真に迫っていたので、敵方もすっかりそれを信用し、正成は戦死したものと安心してしまった。そこを見すまして正成は不意打ちをかけ、大勝利を得たというものである。
泣き男などという、およそ武士にはふさわしくない家臣でも、それはそれとして認めて、そのうえでその持ち味を活かした作戦を考え、戦果をあげたわけである。そういうところにも正成の名将たるゆえんがあったのではないかと思うし、またそれはすべての人をあるがままに認めて適切な処遇によって活かしていくという人間道の考え方に通じるものだといえよう。
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■モノ、『創る』と『創り込み続ける』との違い
モノを創るのは比較的簡単です。
手持ちのカネが少しある、あるいは、ITでしたらヒトとして腕利きのプログラマーがいる。そのようなことで、モノを創るのは比較的簡単にできます。
ところが、そこから大きく変わってくるのが、それを『創り込み続けられるか』というところです。
できあがったモノには、必ず手を加える必要が出てきます。
モノを世に出せば、お客様の別な要望が出てくるからです。それに合わせて、手持ちのモノを変化させる。その変化によってより深く受け入れてもらい、さらにそれが別なお客様を呼ぶのです。
このプロセスがビジネスの原点であり、しんどいところです。やっている中で、必ず、お金が十分にもらえない時期が続き、「そろそろ諦らめたらどう?」との天の声の促しがやってきます。
そこを耐え、前述のドロドロとした意志で、なぜだか続けるのですね。
つまり、ヒト・モノ・カネは、ドロドロとした意志の要素でつながっていて、それがつむじ風へと変わり、さらには竜巻へと変わっていくのです。そして、その中核には、誠意ある人物が求められるのです。これがベンチャービジネスが回る秘訣なのだと思います。
このあたりは、ビジョナリーカンパニー2よりの引用をだいぶさせていただいた『劇的変化を切望する人へ』をご参照ください。
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