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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

ソフトウェア販売において大手流通とお付き合いするということ

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★続きものの10年史です。

ついに、業界では難攻不落といわれる同社での自社導入が決まりました。ちなみに、自分たちが起こしたトラブルを話題にした、お客様同士での打ち合わせなどというのは、今のところその時が最初で最後です。世の中には知らないことが多いですね!

そしてこの採用が大手代理店への刺激材料となるのでした。

■流通とお付き合いするのか否か
2007年末です。同社での採用成功は、意外にも、ソフトバンクBBや大塚商会、リコーグループなどの流通や大手販売店を呼び寄せることになりました。業界が狭いのでしょうか。あっというまに評判が広がったようです。通常であればベンチャー企業から取り扱いをお願いしても、なかなか取り合ってくれないような大御所たちが、先方から「取り扱いしたい」と言ってきてくれたのです。

「会社としてはおおきな岐路ですよ。。」営業経験が豊富な、支援にきてくれているマッさんは警告してくれています。この3社とお付き合いするのがいいのか悪いのか、会社の体質を大きく変えて将来を分けてしまうというのです。Point of no returnということでしょうか。

自力で売っていても限界があると思っていた自分は、せっかくやってきたチャンスだと、この機会をつかむことにしました。未知の分野に出ていくのは何とも楽しいことです。いろいろと勉強になるはずですから。

こうして、いわゆる流通や大手販売店とのお付き合いが始まります。そしてそれは、それまでの自分の製品、マイプロダクト的考えを大きく公共の製品へと変えさせられることになっていくのです。

■ひたすら続く標準化とドキュメンテーション化
2008年初頭です。従来、自分たちの製品は、背伸びをしながら「あれもこれもできます!」とアピールしながら売ってきました。ところがこのような流通や大手販売店とのお付き合いが始まると違ってきます。まずは、ドキュメンテーション化をして仕様書を明確に示し、できることとできないこととを分離して表現しておくということが強く求められました。

自分たちはメーカーなのでいつでも背伸をしたいです。お客様の要望に応えたいという本能のようなものがありました。ところが、「技術的にはできます」というような希望的意見を言うことが「ご法度(ごはっと)」の世界が待っていました。

ドキュメンテーションを進めていくのですが、矛盾があるところは徹底的につつかれます。感情的なものではなく、論理的に責められるのです。論理的に返すしかありません。そして、やってみるとわかるのですが、全ての指摘を正論で返しつくせるほど、自分たちの製品は創り込まれてはいません。

苦しい時が始まります。殆どすべてのことをドキュメント化して、それを発信します。するとすぐに「煮詰めが甘い、ありえない、ちゃんとチェックしているのですか」と個人攻撃のような意見が返ってきます。相手の言うことは大局的には正論なのです。悔しい思いをするのですが、創り込みしかありません。

現場が驚異的な粘りを見せていきます。2ヶ月ほど土日出ずっぱりで製品の仕様書を仕上げています。あまりにも大変そうなので、前面に立っているグッチさんに話してみたところ、次の言葉が返ってきました。

「いや、今は創り込んでいる、開発している、という実感があるんで楽しい。
  仕様がわからず、わけのわからない状況で苦しんでいた頃よりよほどやりがいあるよ。」

驚きました。その気合いがあって、CACHATTOが世間一般並みのパッケージ製品に仕上がっていくのです。そしてこのドキュメンテーションが次への門戸を開いたのです。その年末にはデモ機を3ヶ月で100社以上に導入するという、とんでもないことになるとはつゆ知らず。

以下次号・・・『ベンチャー企業における人材拡大採用実例

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※20100323 07:10 以下次号部分のリンクを追加しました。

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