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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

売ってもらうマーケティング:教育講座の建てつけ

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★『撤退の仕方:docomoに学んだお客様優先の経営方針』に応援のコメントをいただきました。ありがとうございます。

★続きものが続きます。自分たちで販売するのか、販売店さんに売ってもらうのか。口八丁手八丁で自分が自分の製品を売るというのは、立ち上げの頃には必要な要素でしょうが、自分たちではなく、販売店の担当者さんに売ってもらうということが拡大とともに必要になってきます。それは格段に難しいです。その試行錯誤について一つ。

■教育講座を作ることにしたきっかけ
昨年は1年間かけてCACHATTO認定教育講座の建てつけをしました。よくメーカーがやっている認定教育という、あれです。社外の人に製品の講座を受けてもらい、内容理解度テストを受けてもらう。合格すると製品メーカーによる認定者になっていただけるというものです。合格者が多い会社はメリットがあり、合格者たちはメーカー認定者ということで製品を販売してもらえます。

いつだかトヨタカローラの人に新型プリウスの販売マニュアルを、その発売4カ月ほど前に見せていただいたことがあります。車好きの自分としては食い入るように読んだのですが、そこに記載されていた詳細な内容には舌を巻きました。それこそ、機能の一つ一つやサイズ、旧型との比較、オプション類のポリシー、競合していたホンダインサイトとの違いの標準的説明方法など、微に入り細に入り記載された、立派な冊子として出来上がっていたのです。

比較すると、自分たちの製品説明資料が子供の作品のように感じられました。面白いもので、マーケティングに長けている、社外のある女性担当者も同じように考えていたのです。その人は、教育講座の成否が製品の成長を決めるという強い信念を持っており、「本気で売るのならCACHATTOも教育講座を作るべきだ」と常日頃その社内で主張しており、実際に行動力がある人で、その会社内で、独自に教育講座を作り始めていました。

メーカーとしては、教育講座を社外の人に作ってもらえるのは、それはそれでありがたいことだったのですが、ちょっと問題がありました。CACHATTOは製品の進化スピードがとても速く、教育講座を建てつけしている間にも、それが陳腐化してしまうのが目に余るくらいなのです。

そのまま行くと、この社外教育講座の存在がゆえに、製品進化を遅くしなければならないというプレッシャーを受けることになると直観しました。お客様要望を高次元で満たすために懸命に変化を続けている、『活きている製品』を提供している自分たちとしては、ブレーキがかかってしまうことになってしまいます。

「社内で教育認定コースを創ろう。」そう決心しました。

■緻密に製品仕様を説明する
製品仕様をリアルタイムに正確に緻密に説明しようとすると、それこそ教育認定コースは、機能アップの都度、ガラガラと一緒に変化をしなければならないです。これは個人担当者の仕事としてはとても重いです。そこで、マーケティング部隊の前身として、プランニング・タスク・フォース(PTF)というチームを立ち上げます。そこのメインの業務として、昨年は教育講座を創り込むということをしました。

PTFは製品情報を能動的かつ正確に、見込みのお客さま説明するための、いわゆるプリセールスの網かけ部隊です。それこそプレスリリースから、ホームページでの情報発信、製品仕様の説明、さらには、教育講座の実施とその認定作業まで、従来は、ばらばらとやっていた企画やマーケティング関連の業務を統括的に実施していくためのタスクフォースです。

教育講座の建てつけは、当初予想よりずっと時間がかかりました。進化しながらいるものを正確に社外説明するのはなかなか大変です。2-3ヶ月に一度新機能をリリースしている現実とシンクロしている必要があります。もし社外で教育講座を作成していたら、実際のところは成り立たなかったか、あるいは膨大な維持費用がかかっていたでしょう。

教育講座が立ち上がると、今度は、積極的に販売をしてくれようとする販社さんの、社内勉強会の材料としても使われ始めます。現地実施を含めて講座を積極的に開きます。販社さんには、受講認定者数が増えると自社利用の割引を含め、様々なメリットが出るような仕組みも入れていきます。

そして今では、自分たちの何十倍もの人数の人々が、CACHATTOの認定者としてお客様に製品を説明してくれている姿になってきています。まだまだですが、もっと本格化させていきます。そして忘れてはならないのが、このやり方ですら、社外の人から大きなヒントをもらったということです。いろいろと教えてもらうことは多いです。教えてもらいながら物事は進んでいくのすね。

「CACHATTO認定コース」 2010年3月・4月開催予定

以下次号・・・ 『事業を劇的に改善してくれた理想組織のためのツールとシステム

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※20100401 08:00 誤字修正しました。

※20100405 18:48 「以下次号」のリンクを付けました。

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