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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

ブログ毎日発行を禊(みそぎ)にしていないだろうか:【朝メール】にも弊害がありました

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★ブログを毎日発行することを一つの励みに昨年9月10日より半年間続けてみました。ただ、それが余分なプレッシャーを発生させることに少し疑問をもったので、3/13土曜日はあえて発行せずに休符を入れました。実は、振り返ってみると【朝メール】にも、同じ現象で続けること自体が禊(みそぎ)になってしまっていたことがあります。今朝はこれについて。

★10年振り返りの続きものです。いよいよ後半、今の第二創業体制が少しずつ形を創っていくところです。

その後、「カチャットサーバー」は変化を加速することになります。名前もCACHATTOに刷新しました。類は友を呼ぶとかいいますが、まじめに論理的に開発してきた事実は、さらにまじめで論理的な人を呼び込んだのです。全てはうまく回り始めていると思い始めていた2006年の9月のことです。

「この会社変です。。」タッキーさんから直訴があります。

あるお客様訪問の帰り道、スタバに寄って話を聞いた第一声がこれでした。ソニーに長いこと勤めて、その後あるベンチャー企業を経て、いいじゃんネットにやってきたタッキーさんには、いろいろと見えることがあったのでしょう。

■終わりのない緊急体制でメンバーたちはパンチドランカー
タッキーさんからの直訴に、妙な緊張感を覚えながらも、いったいどういうことなのか聞いていきます。タッキーさんは続けます。新規参加した彼としても、なかなか言いづらかったのでしょう。硬い表情がそれを物語っています。

「観察していると、Kumarさんと史郎さん意外には、誰もほとんど何もしていないです。そして、史郎さんがいないときには居眠りをしていたり、副業したり、サイトを眺めていたり、この会社、他のメンバーはまるで死んでいるようです。この会社、異常です。」

頭の後ろをガツンと叩かれたような気がしました。長いことギリギリの状態を切り抜けてきた仲間たちのことをこのように表現されたのです。一瞬、反射的に嫌な毒素が胸の中をよぎります。こういうときは3秒おいて、落ち着いて見直します。そうかも知れません。

長いことずっと緊急体制と称して、その場その場を切り抜けしてきています。終わりの無い緊急体制、社内メンバーたちはいつの間にかパンチドランカーのようになっていたのかも知れません。そしてそのことが常態化して、何とも問題点を感じなくなっていたのです。

■【朝メール】の弊害
タッキーさんは続けます。

「【朝メール】は立派です。すごい。でもそれが、かえって今は弊害になってしまっているんじゃないでしょうか。」

さらにショックでした。自分の起業当初からの目標は、理想的なチームワークで仕事ができる会社を創るというところにありました。そして、風通しをよくする手段として2004年には【朝メール】へとたどり着いていたのです。やってみるとわかりますが、書いていると大きな安心感があります。

メンバーからの報告書と【朝メール】とを毎朝シンクロさせて出し続けると、それが禊(みそぎ)になります。いつのまにか仕事をするのが目的ではなくて、【朝メール】を毎朝完成させることが、自分たちの目標になってしまっていたのかも知れません。『【朝メール】の弊害』があったのです。

■個人面談(TMC)の始まり
「じゃぁ、具体的にはどうすればいいと思いますか?」

聞いてみると、タッキーさん、少しのインターバルの後に答えを言います。

「月に一度、全員に面接する、っていうのはどうでしょうか?」

内心「これ以上どうすればいいのだ」と、思うと同時に、「やはり万能のツールはないんだよ」という声も聞こえてきます。そして、この手の難しい問題に具体的アクションを尋ねると、問題提起だけに終わる人が多いです。具体的な答えをもってきたタッキーさんに少し感心します。

緊急体制という言葉を免罪符にして、人のケアが機械的だったことを反省します。万能のツールというものは無いようです。人のケアのための補完的手段として月1回の面談を開始したのはこのためです。

この面接をTMCと名づけました。全メンバーと「10~30分程度の会話をする」という意味です。Ten Minutes Conversationです。それが twenty でも thirty でもTMCで済むあたりは自分でも内心自慢だったりしますね(笑)。

実際に2006年末から始めてみました。飲ミュニケーションではない、仕事の場としての、この月次個人面談の効果は大きかったです。2-3回も続けると両者リラックスしてきます。個人個人の悩み、会社のどこにどういったひずみがあるかということ、個人的に指導しておきたいこと、話題は個人個人でずいぶんと異なります。ただ、それぞれの意見に大いにヒントとなるものがあります。

■もっと売れてくれていいはずなんだけどなぁ…
対外的には開発が元気になって、大手顧客にも採用が進み始め、製品品質にもそろそろしっかり感が出てきた2007年夏のことです。連日悩みます。

「やはり売り方が悪いのかな、もっと売れてくれていいはずなんだけどなぁ…。」

以下次号・・・『カスタマイズ無しでお客様要望にすぐ応えられる製品ができた背景

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※20100316: 次記事へのリンク張りました。あとtypo修正しました。

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