オルタナティブ・ブログ > 色々やってる社長のブログ >

我が国は現在、閉塞感が漂っているとよく言われていますが、実は、よく観察すると、新しいビジネスチャンスがあふれかえっています。それを見つけて、成功させるコツとヒントをご紹介します。

野良犬がいなくなって気づいたこと――街の静けさと野生動物の接近

»

nihonken50.jpg

私が子供の頃、大阪市内でも野良犬がまだ街の片隅にいました。時には群れをなして悠々と街を歩き、夜には遠吠えをしていました。
それが普通の街の風景であり、野良犬の怖いようでかわいい姿を気にしながら、公園で遊んだりすることが日常でした。
これは、田舎に行けばなおさら顕著でした。どこの田舎でも、野良犬なのか放し飼いなのか判らない複数の犬たちに出くわすことが常でした。

ある時、こんなことがありました。
私はとある漁港のバス停でベンチに座っていると、10匹ほどの野良犬(または放し飼い犬)の群れに取り囲まれたことがあります。それも迫力のある中型犬~大型犬揃いでした。
「お前は誰?」みたいな表情をしてこちらを見る犬たちは、敵対行動をするでもなく、かといって餌をねだるわけでもなく、微妙な距離感で私の周りでしばらく居座っていました。
まあ、私に吠えたり唸ったりするわけでもなく危険はなかったのですが、それでも犬とはいえなかなかの迫力がありました。

そして時は流れ、今では野良犬はほとんど見かけなくなり、都会も田舎も町は静かになりました。野良犬に咬まれるといった事故も少なからず起こっていたのは事実ですから、安心して歩けるようになったことは間違いありません。

しかし、その一方で、熊の目撃や農作物を荒らす獣の被害が近年増えているという話を耳にする機会も増えました。環境省のデータによれば、2000年前後からシカやイノシシの捕獲頭数が急増し、獣害対応が強化されています(環境省資料 pdfファイル)。また、日本クマネットワークの報告からも、2000年前後を境に、熊による事故件数が増加傾向にあることがうかがえます(日本クマネットワーク報告書 pdfファイル)。

ちょうどこの頃なにがあったかというと、1999年に動物愛護法改正され、野良犬や無管理の放し飼いの規制が厳しくなり、野良犬は著しく減少し始めた時期と重なっています。その結果として、野良犬がかつて果たしていた、熊や獣の人里侵入を防ぐ「警備役」が消えた可能性も考えられます。犬が吠えることで動物たちは警戒し、距離を置いていたのかもしれません。

また、環境省のデータより、<所有者不明犬の引取り数>と<クマ人身被害の推移(全国)>をグラフ化すると、明確な相関関係が見られます。
<所有者不明犬の引取り数>の減少は、野良犬・放し飼い犬の減少を意味しています。



クマグラフ3.jpg

もちろん、これはあくまでひとつの仮説であり、明確な因果関係が証明されたわけではありません。生態系は複雑で、多様な要因が絡み合っていることは言うまでもないでしょう。しかし、この可能性を踏まえ、野良犬減少の社会的影響について改めて考えてみる価値はあるのではないかと考えます。
実際、軽井沢のようにベアドッグの導入で、熊追いに成功している事例も出て来ました。

私たちが住む町に野良犬がいなくなり、静かに安全になったことは喜ばしいことです。しかし、その静けさの裏で、別の「動物たち」が人里に近づいた現実にも目を向ける必要があります。犬のいない町の静けさは、安心と同時に、新たな課題をもたらしているのかもしれません。

この問題については、今後もさらなる調査と議論が求められるでしょう。多様な視点を取り入れながら、慎重に考え続けることが大切です。読者の皆さんにも、それぞれの経験や感覚から、この話題を考えていただければ幸いです。

(使用したデータは公的なものを参照していますが、あくまで傾向の一部を示すものであり、断定ではないことを付記しておきます。)

Comment(0)