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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

リーマンショック以降の不況が味方してくれたわけ

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★続きものが続きます(笑)。振り返ってみるとリーマンショックのおかげで採用してくれた会社数がぐっと伸びました。今朝はそれについて。

自分として大いに勉強になったのは、チームで技術を蓄積するということの凄さです。個人の技術ブレイクスルーに頼るのではなく、チームでのアプローチをすると、より大きな、仕組みとしてのブレイクスルーができるという実体験でした。

■リーマンショックによる新規案件総崩れ
リーマンショックを機にした突発的な不況は、特にそれまでは絶好調の様相をしていた自動車産業に大打撃を与え、連鎖して製造業全体の元気を無くします。その結果、いわゆる新規投資が次々と凍結され、IT業界にも大きな打撃を与えました。

携帯電話で会社のシステムをリモートで使う、利便性や業務効率アップを謳うというようなものは、真っ先に検討がカットされます。CACHATTOはまさにそれに当たりました。2008年下期から突如始まった、保守マインドの台頭には驚きました。

それまで、4年連続で40%の増収を続けてきた自分たちとしては、その年もさらなる成長を目標としてました。しかしリーマンショック以降は、さすがに急ブレーキがかります。同じ路線で進めていくことはできません。方針の転換が必要でした。

■不況時でも伸びている会社がある
自分たちの強みと弱みを冷静に省みます。iPhoneのデモキャンペーンから始まった大量のデモ導入というスタイルがヒントになりました。導入時ノートラブル率90%以上という実績は明らかな長所です。さらに、自分たちの製品が、業界の分け隔てなく、金融機関に至るまでの広いお客様に採用されていたことも特異なことです。

CACHATTOは導入時間が極端に短いです。90%以上のケースで、2時間もあれば動いてしまいます。競合するようなサービスとはけた違いの短さです。また、不況のときであれ、しっかりと成長する会社は多数存在します。利用企業の業態に偏りが無いので、不況時に強い会社にアプローチするということもできるわけです。

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結果的には無償デモでメリットを感じてもらい、それで少人数でもいいので購入してもらえば、翌年も利用料金がいただけるし、景気回復感とともにそれぞれが膨らむはずです。No.1ビジネスアクセスソリューションへの大まかな戦略は見えました。

・不況時にせっせと種まきをする。
・好況時にそれぞれを膨らませる。

自分たちのビジネススタイルは、「使ってもらっただけ使用料をいただく」という、いわゆるSaaSに近いものです。さらにはお客様数が増えると安定するストック型です。新規案件の売上に過剰に頼 らずとも、すでに事業が成り立つようなっています。ここで、種まきに徹する選択肢が取れることも幸運でした。

■営業現場担当者が導入コンサルタント
不況時にせっせと種まきをするにはどうすればいいか。それには、それぞれの案件に効率的に到達し、こまめにデモンストレーションを実施し、その結果を的確にフォローすることでの無理のない採用を促すのが王道です。

大手代理店や流通がいてくれるというのは頼もしいです。お客様カバー率が圧倒的に高いです。全体的には数が激減している新規案件の検討テーブルに確実に乗ることができるようになっていきました。

検討のテーブルに乗れば、従来は商談が進むにつれ、営業担当者は「次回は技術者を同行してきます」とやってきていました。しかしそれでは無駄が多すぎます。上記の王道を通るだけでコストが膨大なものになってしまいます。さらに営業担当者の信頼感が増すこともありません。最初から技術のわかる人がでてきてくれればいいのにと、代理店さんからもお客様からも御用聞き営業では不信感を買ってしまいます。

そこで、従来の営業担当者にはそれぞれレベルアップしてもらうことにしました。導入コンサルタントとしての顔も持てるように勉強してもらったのです。それまでCACHATTOの導入技術者として活躍していた佐藤さんを営業部隊にコンバートします。

佐藤さんには営業部隊の周りの担当者に、CACHATTO導入の要素技術を、それこそ隣の席から手取り足取り伝授してもらいます。導入技術が習得できた営業担当者は、商談の進み加減で、それを自分のテーマとして、デモ実施を含めて実践できるようになります。

副次的には、お客様からの担当者への信頼感が上がります。技術も分かっている担当者というのは頼もしく見えるからです。いわゆる御用聞き営業から、導入コンサルタントへの脱皮ができたのです。

導入コンサルタントの集団を、ビジネス・パートナー・グループと命名しました。セールスではなく、ビジネス・パートナーとしてお客様から信頼してもらえるようにとの思いからでした。その結果、リーマンショックのあった2008年9月以降もCACHATTOはより一層、新規採用者数が伸びるという結果になりました。

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★採用社数累計グラフです。

以下次号・・・ 『撤退の仕方:docomoに学んだお客様優先の経営方針

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※20100327 10:50 累計数グラフ追加しました。

※20100411 15:40 以下次号のリンクを追加しました。

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