クラウド市場で進む勢力図の再編:大手3社とネオクラウドの台頭
IT専門調査会社 Synergy Research Group は2025年11月19日、2025年第3四半期(Q3)におけるクラウドインフラサービス市場の最新動向を公表しました。
Cloud Market Share Trends - Big Three Together Hold 63% while Oracle and the Neoclouds Inch Higher
今回のレポートでは、世界的なクラウド需要の急増を背景に、Amazon、Microsoft、Google の大手3社が市場全体の63%を占めたことが示されています。8四半期前は61%であり、大手3社の存在感が着実に強まる一方で、Amazonのシェアは緩やかに縮小し、MicrosoftとGoogleが増加する構図が続いています。また、OracleやCoreWeave などのネオクラウド事業者が徐々に台頭しており、クラウド市場の競争地図は新たな局面を迎えている状況です。
市場規模はQ3時点で約1,069億ドルに達し、世界各地で高い成長率が維持されています。インド、オーストラリア、メキシコなどが現地通貨ベースで世界平均を上回る成長を示したほか、米国は依然として最大市場として大きな影響力を持ち続けています。
今回は、市場の勢力図に生じている変化、大手3社の競争状態、ネオクラウドの台頭、地域別の成長動向、そしてこの構造変化が今後のクラウド戦略に何をもたらすのかについて取り上げたいと思います。

出典:Synergy Research Group 2025.11
大手3社が主導する市場の再構築
Synergy Research Group の最新データは、クラウドインフラ市場の構造変化がゆっくりながら着実に進行していることを示しています。Q3の市場シェアは Amazon29%、Microsoft20%、Google13%となり、この3社合計で63%に達しました。この割合は過去数年にわたりわずかに上昇しており、競争の激しさが高まる中でも大手3社の支配力が強固であることがうかがえます。
注目されるのは、Amazonのシェアが2021年の32%超から約29%まで縮小し、MicrosoftとGoogleがその差を詰めている点です。AI需要の高まりに伴い、GPUクラスタやAI向けマネージドサービスを強化するクラウド事業者は増えているものの、多様なサービスをグローバル規模で展開できる企業は限られています。その意味で、Amazonの堅固なシェア維持は依然として大きな存在感を保っています。
一方で、Microsoftは企業向けAIツール群の拡大とクラウド基盤の統合戦略により成長を続け、Googleはデータ分析・AI領域での差別化が寄与しています。大手3社の成長軸が異なることで市場全体の進化も加速しており、利用企業はサービス選択の幅が拡大する状況にあります。
Oracleとネオクラウドが示す新たな潮流
今回のレポートで目立つのは、大手3社以外のクラウド事業者の中で、Oracleとネオクラウドが確実にシェアを伸ばしている点です。特にAI向けインフラ需要の拡大が、これらの企業の成長を後押ししています。
ネオクラウドの代表格である CoreWeave は、GPU特化のクラウドで急成長しており、AI開発企業の重要な選択肢となっています。さらに、Crusoe、Nebius、Lambda などの企業も電力効率の高い設計やAI特化基盤を強みに存在感を高めています。これらの企業は大手より規模こそ小さいものの、AI市場の急成長とマッチした独自性が支持を集めています。
Oracle は自社アプリケーションとの統合性と高性能コンピューティング分野での強みが評価され、クラウド売上が漸増しています。一方で、Alibaba や Salesforce は成長率が市場平均を下回り、IBM は戦略転換により横ばいとなりました。
市場の裾野は広がっていますが、スケールの壁は依然として大きく、Google の規模が4位の Alibaba の約4倍という事実は、上位企業とそれ以外の差がむしろ拡大しつつあることを示しています。
世界各地域で広がるクラウドの加速成長
地域別にみると、クラウド市場は全世界で堅調に成長しています。現地通貨ベースで世界平均を上回る成長を示した国には、インド、オーストラリア、インドネシア、アイルランド、メキシコ、南アフリカが並び、クラウド利用の広がりが新興地域にも浸透していることがわかります。
米国は依然として最大市場であり、その規模はアジア太平洋地域全体を大きく上回っています。Q3の米国市場は28%成長し、クラウドの中核的な需要地であり続けています。一方で、欧州では英国とドイツが主要市場でありながら、高成長地域としてスペインやイタリア、アイルランドが台頭し、多様なクラウド需要が拡大しています。
地域により成長の背景が異なる点も重要です。アジアではデジタル政府・モバイル決済・AI開発が普及を後押しし、欧州ではデータ主権と規制対応に合わせたクラウド利用の最適化が進んでいます。地域特性に応じてクラウド導入の基盤が進化していることが、世界市場の強い伸びにつながっています。
今後の展望
クラウドインフラ市場は、AI需要の急拡大とともに再び大きな転換点に向かっています。大手3社が依然として中心的な役割を果たす一方で、AI特化クラウドが台頭し、中堅以下の市場構造はこれまで以上にダイナミックに変化する兆しがあります。GPUクラスタの不足やデータセンター用電力の制約といった課題が深刻化する中で、クラウド事業者には電力効率の改善やネットワーク最適化への取り組みがより求められています。
企業側も、クラウドに対する評価軸を「価格」から「AI処理性能」「地域分散」「電力・環境対応」へと広げる必要があります。特にAI活用が企業戦略の中心となる時代には、単一クラウドに依存するリスクを低減しつつ、用途に応じて最適なクラウドを使い分けるアーキテクチャが重要となります。
このような環境下では、ネオクラウドはさらに存在感を強める可能性があります。電力効率とAI対応能力を強みにした新たなクラウド選択が広がることで、市場競争はより多層的なものになるでしょう。

※Google Geminiにて編集