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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

日本政府が推進するインドネシアのインフラ整備プロジェクト、予定通りの進捗を現地紙が好感

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日本の地震に関するニュースは海外サイトでも無数に出ています。また、福島第一原子力発電所の状況を非常にセンセーショナルな書き方で伝える米英メディアがいくつもあります。なにぶん、初期段階では情報がなかなか出てこなかったので致し方ない側面もありますが。

そんななかで、経産省がインフラ輸出政策の一環として進めているインドネシアのプロジェクトが、震災にも拘わらず予定通り進められることになったことを好意的に伝えているジャカルタ・ポストの記事が目に留まりました。

Japan investment in RI will continue as scheduled despite tragedy: Minister
(担当相:日本の対インドネシア投資、震災にも拘わらず予定通り実施)

"RI"はインドネシアのこと、Republic of Indonesiaの略です。

■インドネシアのインフラ投資には米国、中国も積極的

少し長くなりますが上の記事の背景を記します。

インドネシアは人口2億3,000万。中国、インド、米国に次ぐ世界第4位の人口大国です。GDPで見ても世界銀行の2009年データによればトルコに次ぐ18位。スイス、ベルギー、スウェーデンよりは上です。ロシアの半分弱ぐらいの規模があります。
1人当たりGDPでは約2,350ドルとエジプトと同水準ですが、中間層の消費が旺盛になりつつあり、紙おむつが売れ出すいわゆる3,000ドルのラインを超えるのもさほど遠くないと思われます。人口が多いだけに、所得水準が上がってきた時に表れる様々な市場には大きな可能性があり、インフラファンドを多数運営するマッコーリーグループは「東南アジアにおけるブラジルのような位置づけだ」と評しています

このインドネシアにおいてもインフラ整備は大きな課題となっています。電力、物流、交通、都市関連サービス、産業集積などをできるだけ早期に整備することによって、経済発展にはずみをつけることができます。

インドネシアに対しては日本だけでなく、中国や米国もインフラ投資の機会を狙ってトップセールスを繰り広げています。昨年11月横浜でAPECが開催された際の外遊で、オバマ大統領がインドネシアを訪問しました。オバマ大統領に対してはGEのイメルトCEOが「中国に負けずにもっとアメリカを売れ」とけしかけているそうです。

中国の温家宝首相は2010年4月にインドネシアを訪問し、インフラ投資への大々的なコミットを明らかにすると期待されていましたが、中国北西部の大地震により訪問はキャンセル。しかし事前に事務次官級の話し合いによって大規模な投資が内定していた模様です。

というわけで、米国も中国もインドネシアのインフラ整備にはかなり積極的です。

■ジャカルタ首都圏開発に日本は2兆円を投資

日本政府はインドネシア政府とインフラ整備に関する話し合いを2009年から続けてきています。ASEANの経済シンクタンクであるERIAが作成している広域インフラ整備の総合計画"Comprehensive Asia Development Plan"(総合アジア開発計画)。そのなかにインドネシアを対象としたインフラ整備プロジェクト群があり、「インドネシア経済回廊」という名称で括られています。インドにおけるデリー・ムンバイ間産業大動脈構想に似た位置づけの広域インフラ整備マスタープランです。
ちなみにERIAの一部のリサーチプロジェクトは日本の経産省が音頭を取っており、"Comprehensive Asia Development Plan"も経産省の意向を受けて作成されたもののようです。

"Comprehensive Asia Development Plan"の参考記事:
膨大なインフラ投資機会が動き始めた大メコン圏(上)
膨大なインフラ投資機会が動き始めた大メコン圏(下)

冒頭で触れたジャカルタ・ポストの記事では、このインドネシア経済回廊、および同時並行で進められているインフラ整備プロジェクトについて、日本の大地震の現況があるにも拘わらず、スケジュール通りにキックオフ会合が開催されることになったと報じており、言外に「日本は大地震にも拘わらず約束を守る」ことへの賛意が感じられます。

挙げられているプロジェクトは、ジャカルタ首都圏開発、MRT(Mass Rapid Transit、大量高速輸送)、地熱発電、運輸、投資資金の手当て。これらは2010年10月に発表された「大畠章宏経済産業大臣とハッタ・ラジャサ経済担当調整大臣による共同プレスリリース」と、2010年12月に経産省が明らかにした「日インドネシア両国政府による『首都圏投資促進特別地域(MPA)』構想に関する協力覚書への署名」の内容をほぼなぞったものとなっています。つまり、日本政府として正式にコミットしているものです。

ジャカルタ首都圏開発のプロジェクト群だけでも投資総額は2兆円に上るとのこと。詳細についてはいずれ機会を見てお伝えしていきたいと思います。

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