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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

新春夢想2009年版:住宅+自動車+家電一式+毎日の食+電力+ネット+携帯をすべてサービス化した新型住宅産業

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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年一部で好評だった新春夢想を今年もやりたいと思います。

[前置き]
米国金融危機およびグローバル経済変調の背景を色々と研究してみると、復調の決め手は、米国住宅市場の回復に伴う米国個人消費の再活性化だということがわかります。
BRICsが米国個人消費に代わる世界経済牽引のエンジンになり得るかというと、まだ年数がかかりそう。消去法で行くと米国の個人消費が残ります。米国の新築着工件数はひと月で100万~100数十万件。日本は1年間で120万件ですから米国の住宅市場がいかに大きいかがわかります。

しかし、この住宅市場は住宅ローンという資金の手当てがなければ動きません。図式を単純化すれば、米国住宅ローンの最終的な貸し手になっていたのは膨大に蓄積されたドルの運用先に困る新興国でしたが、彼らが現在、資金の逃避先としている米国債から再び住宅ローン証券化商品に回すかというと、それも当面はあり得ない情勢です…。

ということで、巡り巡って「日本に賭ける」という発想に行き着きます。
世界経済の成長エンジンに、日本が名乗りを上げるという流れなわけです。じつに新春夢想らしい!

[大規模な個人消費の誘発にはファイナンスが不可欠だが]
改めて確認しておくと、世界経済の成長のためには膨大な中間層の旺盛な消費が必要であり、その旺盛な消費のためには、雇用の安定はもちろんのこととして、非常に強い消費者側のインセンティブ(強い消費意欲)と標準化されたコンシューマーファイナンスが不可欠です。
日本の高度成長期では、みんなが家電製品一式を購入したいと思い、月賦(月々の分割払い)が大活躍をしました。その後、自動車ローン、住宅ローンが同じ役目を担い、大規模な消費を支えてきたわけです。

米国の旺盛な個人消費も、住宅ローン、ホームエクイティファインナンス、自動車ローン、クレジットカードなどのコンシューマーファイナンスがあったからこそ。中国の個人消費が世界経済成長のエンジンになるにはまだ役不足だという理由の1つとして、コンシューマーファイナンスの環境未整備があります。

日本でも、世界経済成長のエンジンになるほどの個人消費が起こるには、これまでとは中身の異なるファイナンスが必要です。

[個人ではなく企業が借り手になる]
とは言え、世界経済の成長エンジンになり得るような大きな金額の消費(住宅+α)のために、今日び消費者が大型のローンを組むかと言うと、そういうマインドでもないと思います…。
そこで、既存の発想であれば消費者が個別にローンを組むような場面において、企業が消費者に成り代わって借り手となり、消費者に対してはサービスという形でその住宅を提供するという図式に思い至ります。
従来型の賃貸住宅では何のおもしろみもありませんから、そこに、「消費生活のサービス化」という近未来のフレイバーを混ぜてみましょう。

仮に、新種の住宅提供サービスが立案され、そこに膨大な資金需要があるとなれば、その企業に対しては様々な貸し手が現れる可能性があります。貸し手側の意識からすれば、消費者向けのローンを束ねた債権よりも、単一の企業が借り手になってくれた方が信用供与もしやすく、以降のメンテも手間がかかりません。おそらくはかなり喜ばれると思います。
場合によっては、現在、金利ゼロの米国債に張り付いている膨大な新興国の資金がその企業に回されることになる可能性も少しはあります。

いずれにしても現時点では、消費者が大型消費の借り手になるよりは、企業が借り手になる方が話がスムーズに行くのではないでしょうか。
既存のマンション販売主体の不動産会社と異なるのは、あくまでも、新型集合住宅のオーナーはその企業であり、その企業のブランドの下に、新種の複合型住宅サービスを提供するという点です。このビジネスモデルの違いをきちんと説明すれば、既存の不動産業界に逆風が吹いた後の現在でも新たな資金の出し手が出現するのではないでしょうか。

[消費生活の未来を実現する]
ITの現在の趨勢は「所有からサービスへ」となっています。ハードウェアも、ソフトウェアも、これまでは購入するのが当り前だったものを、大手企業が巨大なインフラを構築して、1ユーザー月額いくらといった形で提供する「サービス」として利用するようになりつつあります。Googleしかり、Salesforce.comしかり。今のところカバー領域はごく限られていますが、早晩、多様な領域がサービス化していくことでしょう。新規事業を準備中の大手、中堅、ベンチャー企業も多いと思います。

このサービス化は、企業のIT活用の側面だけで見ても非常に興味深いですが、消費者に対するビジネスモデルとして捉えてみてもおもしろいです。
「これからは”購入する”時代ではない」。「必要な時に必要なものを”合理的な料金で利用する”時代だ」。発想をこのように切り替えると、色々と見えてくるものがあります。いずれもITの世界では、仮想化のメリット、サービス化のメリットとして強調されているものばかりです。

・個別世帯で購入・保有されていることに伴う消費社会全般のムダが効率化される可能性がある。(電力、水、食品)
・個別世帯レベルでは「利用しない時間」「使わない時期」を別の世帯とのシェアリングによって埋めることができる。設備あたりの稼働効率が高まる。
・購入→利用中のメンテナンス→廃棄のプロダクトライフサイクル全般にわたって、企業側が当該設備の保有主体として積極的に関わることができ、もって消費者側の手間が減る。企業側はメンテ等でスケールメリットを享受できる。
・供給内容(居室、下記の自動車から食品に至るサービス等々)を標準化することができ、これによって、消費者にコストメリットを還元することができる。
・最新の設備、備品等を比較的安いコスト負担で消費者に利用してもらえる。

このサービスに含まれるのは以下。
 -集合住宅の一区画
 -自動車(カープール制)
 -家電製品一式(白物、AV、情報家電、冷暖房・防犯等住設家電等の一式)
 -毎日の食生活に関わる食品、日用品等をネット/携帯から注文(モデル世帯用の一定量・一定品目までなら月定額で収まる)
 -電力(家電が規格品であるためモデル世帯の電力消費量の算出が容易。標準的な利用における大幅ディスカウント可能)
 -ネット接続
 -固定電話/携帯電話
 -通勤用の交通費(乗降区間に応じて変化するが既存通勤定期より割安)

消費者はこれらを月額いくらのオールインワンパッケージで利用できるということになります。当然ながら、消費者には、これらを個別に購入したり、個別に利用契約を結ぶよりは、大幅なディスカウントのメリットが与えられます。例えば訴求は「年収○○万円台で○○万円台のハイグレードな生活」という感じ。あるいは、エコロジー面の価値を徹底的に追求してもよいと思います。

[スペック]
住環境については、標準よりも広い空間にしつつ、バスや洗濯場なんかは思い切ってシェアリング方式にするとか、抜本的に新しいことをやってみてもよいのではないでしょうか(結果、戸別専有面積はより小さくても済む)
生活排水は再利用、太陽電池やエコキュート的な省エネ方策、生ゴミの有効利用、最近一部で見られる家庭菜園などもある…などというエコ志向。
月極定額の食品購入はRFIDなどで単品管理して、指定店で買う限りであれば、買う人が1日ごとの予定数量がすぐにわかり、予算オーバーすることがないといった仕組み。糖分、脂肪分、カロリーなどのコントロールにも役立つならなおOK。
等々、等々。ありとあらゆるアイディアを盛り込むことができると思います。

[事業主体]
電鉄大手、不動産大手、自動車大手、電力会社、家電大手、家電量販店大手、総合商社など様々な主体が考えられます。名乗り出たもの勝ちでしょう(^^)。日本の慣行では、オールスターキャスト的な企業連合による大型新規事業ということになるのではないでしょうか。

[事業規模]
新春夢想なので、デカイ方がよいわけですから…。当初は1,000世帯単位で10単位程度計画し、事業の詳細を検証。有効性が確かめられたら、向こう10年で100万世帯の供給を目指す。
1世帯80平米程度、300世帯の棟(20階建)を4棟。実際にはバスや洗濯場などのシェアリング等の省スペース措置により、入居可能戸数は2割増で1棟360世帯。
この世界の単価には不案内ですが、建物だけでおおよそ100億円。その他設備や家電、カープール用自動車等で10億円。土地はおおよそ10億円程度。360世帯用で初期投資120億円。これが4棟で計480億円。もろもろディスカウント等を勘案して420億円。
これを単純に月額賃貸収入で回収するとすれば、1世帯月額25万円で約10年で回収できる計算となります(資金調達コストも日々のオペレーションコストも無視したごくごく素朴な計算)。これは不動産系の投資では早い方だと思います…。おそらくは組み込み可能なコスト低減策、税法上の特典の適用、提携企業からの収入等で2割程度短くすることは可能ではないでしょうか?
消費者にとっては、家電一式にカープールが付いた住環境がこの価格で利用できるようになります。バリューはいかがでしょうか?
仮に食料品・日用品、電力、水道、ネット、固定電話、携帯電話、通勤交通費などを乗せて、両親+子ども1人のモデル世帯で月額30万円台前半に納めることができれば、首都圏であれば非常に魅力的な生活環境となると思います。

このままでは、まだ既存の価格帯の域を出ないので、4棟1単位(1,440世帯)を10単位行うことによる標準化メリット、スケールメリットの追求で、消費者から徴収するぜんぶ込み込みの月極料金を30万円で納める。これで爆発的な需要を喚起できると思います。
資材や備品等の調達のイノベーションにより、月額25万円程度が実現できるとすれば、10万世帯単位で顧客を獲得することが可能になるのではないでしょうか

また、対象顧客のプロフィールを勘案して、よりグレードの高いパッケージや、二人世帯、単身世帯に向けたより低価格のパッケージなどを展開することもよいでしょう。

これを首都圏だけでなく、全国の政令指定都市において実施し、規模のコントロールができるようになったら他の都市にも拡大すれば、兆円単位の投資が毎年実施されることになります。

[まとめ]
というわけでシロート発想で住宅だけでなく家電から自動車から毎日の食品までが込み込みのサービスとして提供され、全体としては毎月の支出がぐーんと安くなる形態というのを考えてみました。細部が粗いですが、発想自体は使えると思います。

歴史的に見ると、国レベルの経済の成長とは、中間層が分厚くなって膨大な消費が誘発されることから起こるようで、日本で大幅な経済成長が可能になるためには、どこかに「中間層を措定する」必要があります。(同じ意味で、米国の近年の経済成長は、サブプライムローンの対象となったセグメントが”消費意欲旺盛な中間層”として措定されたと見ることができます。)
中間層とは、非常に旺盛な消費意欲を持った世帯ということなわけですが、現状の商品体系、現状の流通では、大多数の世帯の消費意欲を喚起しません。何らかのわかりやすい「パッケージ」が必要であり、かつそのパッケージには、ブランド的に見てもコストパフォーマンス的に見ても、有無を言わせぬ魅力がある必要があります。
かつては、家電製品一式であり、自家用車であり、戸建て住宅であり、通勤に便利なマンションであったような、わかりやすい、強い消費意欲をそそる何か。新時代の、世界経済の不透明さが増すなかでの強い消費意欲をそそる何かと言うと、例えば、上で記したような、複合的なサービスとして提供される住環境ということになるかと思います。しかも、エコロジー的に見ても意味があるという…。

これにより、現在は売れ行きが不振のマンション、自動車、家電などが、かなりまとまった顧客群と巡り会い、もって大規模な消費が誘発されるのであれば(直接の買い手は個人ではなく法人ですが)、日本経済にとって非常によいことかなと、思う次第であります。

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