ぶれない澤上篤人氏とIT産業強気論
99年から2001年にかけて、米国ネット証券会社最大手が日本に参入した際に、ものを書く立場でお手伝いをしました。そのプロジェクトにはさわかみ投信の澤上篤人氏も参画していらっしゃって、その発言を直接聴く機会が何度かありました。
その後、周知のように、さわかみ投信は独立系の投資信託として非常にユニークな投資姿勢を打ち出し、多くの個人投資家の支持を得て、現在に至っています。
驚くべきことに、澤上氏の発言は当時からまったくぶれがありません。株は長期で持て。優れた企業活動を行っている銘柄を割安な時期に買え。世界経済の長期動向を見よ。短期の相場にふりまわされるな。総悲観のなかでも長期の目線で銘柄を探せ。
日経ヴェリタスの最新号や日経ビジネスオンラインに澤上氏の現在の相場に関するコメントが載っています。「買って買って買いまくれ」という趣旨の発言です(しかし銘柄選びはしっかりやれともおっしゃっています)。いやぁ清々しいなぁ。
澤上氏のこのスタンスには、私が知っているだけでも過去8年程度、ぶれがありません。これはすごいことです。戦略的長期投資家。戦略的楽観論者。ウォーレン・バフェット氏とも通じるところがあるんでしょうね。こういう姿勢は、人間の経済活動を信じる。産業の発展を信じる、という素朴な信仰から来るのだと思います。見習うべきところです。
ここで当方の見立てを書くのも気が引けるわけですが、以前のリーマン・ブラザースに関わる投稿で「ニューヨーク界隈の金融村で起こった大きなプレイヤーの市場退出という出来事は、世界経済的にはあまり騒ぐに値しない。」などと能天気なことを書いたことの罪滅ぼしとして…。
米国経済ですが、周知のように個人消費がGDPの7割を占める超大国。復調までには相応の時間がかかると考えられます。というのも、近年の経済成長の何割かはホームエクイティローンで底上げされている風があるからです(「あ!ホームエクイティローンがあった!」と気づいたのがつい最近)。この底上げ効果がそぎ落とされると、消費がどの程度まで落ち込むのかがまだ見えません。米国の個人生活一般で、借り入れに依存しない消費ということに適応できるようになるまで、そして、企業全般がそのシフトを取れるようになるまで、少し時間がかかると思います。
そういう中で、収益機会を見つけるのが早い米国企業がどういう動きをするのか?おそらく、"Own"よりは"Share"、"Asset"よりは"Access"ということになっていくと思います。言うまでもなくITの出番です。
また、消費者一般の生活スタイルの変化について考えてみても、リアルでゴージャスなエクスペリエンスよりはバーチャルな諸活動の方にどうしたって向くと思います。これもITには追い風です。
個人的には、色々な業界においてビジネスモデルが大きく組み変わっていく大きな流れの中にあるのかなぁという気がしています。"Own"よりは"Share"。"Asset"よりは"Access"。
以前に書いた「家電製品をタダで配布するモデルから生まれるもの」や「中間層の支出をまとめるイノベーション」なんかが現実味を持ってきているように思えます。