衆院選「世論調査」は古くてオワコン。新しい選挙予測はOSINT + AIトレンド分析4手法で高解像度
2026/1/25 今泉追記
以下の投稿の冒頭で記した通り、現実的にネットで無料で得られるデータで衆院選シナリオを予測するには、ベイズ確率的統合(ベイズ統計モデリング)が最適だと判明しました。
AIが「ベイズ確率的統合」で衆院選シナリオを詳細予測。結果は高市早苗政権が継続(2026/1/22版)
ナラティブ・ダイバージェンス・インデックス、「感情ベロシティ」分析、デ・アストロターフィング、のいずれも非常に興味深い分析手法ではあるのですが、いずれもX、TikTokなどのSNS投稿データをふんだんに与える必要があり、そのためには相当な金額で各SNSからデータを買わなければなりません(TikTokはそれも不可能です)。ということで無料でアクセスできるデータのみで分析できる「ベイズ確率的統合」(ベイズ統計モデリング)が現実的に使える手法ということになります。
衆議院選挙が近づくにつれ、連日のように新聞やテレビで「世論調査」の結果が報じられています。しかし、ビジネスの最前線にいる皆さんは、こうした報道と、ご自身の肌感覚やSNSのタイムラインとの間に、奇妙な「ズレ」を感じることはないでしょうか?
「新聞ではA党が優勢と書かれているが、ネットではB候補の政策が熱狂的に支持されている」「立憲民主党の政策批判ばかりテレビで報じられるが、SNSでは圧倒的に高市早苗首相を支持する声があふれている」――。
この違和感の正体こそが、現代の選挙、ひいては現代のマーケティングにおける最大の課題である「ナラティブ・ダイバージェンス(物語の乖離)」です。
オールドメディアが報じる「表層の世論」と、デジタル空間で醸成される「深層の世論」。この二つの世界はもはや分断されており、従来の調査手法ではその実態を捉えることが困難になっています
そこで人類最高のAIの呼び声高いGemini 3 Proにお出ましいただいて、古臭い世論調査の枠組みを刷新する、AIを大々的に活用した、新しいタイプの世論調査のやり方が、一つだけでなく複数あることを解説してもらいましょう。そして、僭越ながら、小職がそれらのAI世論調査を駆使しまくって、この選挙期間中、新しいタイプの『民意を汲み取る仕組み』をデモンストレーションして行きたいと思います。オールドメディアの牙城に風穴を開けます。
なお、同じやり方は、大企業が、日本の消費者のセグメントされた状況を把握することにも使えます。基本的には新しいタイプのマーケティング調査の方法論です。源流は、マーケティングの本場、米国です。
なぜ今、AIによる「OSINT」が必要なのか?
日本の選挙におけるデジタル活用は、諸外国に比べて特殊な進化を遂げてきました。長らく続いた規制の影響や、「沈黙の螺旋」と呼ばれる同調圧力により、多くの有権者(特に無党派層や中間層)は、自身の政治的意見をSNSで声高に発信することを避ける傾向にあります
その結果、X(旧Twitter)などの空間は、極端な意見を持つ「ラウド・マイノリティ」や、組織的に動員されたアカウント(ボットや工作員)によるノイズで満たされがちです。単に「いいね」の数やキーワードの出現数を数えるだけの、従来のソーシャルリスニング(社会的聴取)では、このノイズに惑わされ、真の世論を見誤ってしまいます。
私たちが目指すべきは、ノイズを除去し、沈黙する多数派(サイレント・マジョリティ)の微かなシグナルを拾い上げ、それを確率論的に統合する「OSINT 2.0」のアプローチです。具体的には、以下の4つの高度な分析手法を組み合わせます。
方法論A:ナラティブ・ダイバージェンス・インデックス(NDI)
〜メディアとネットの「意味の距離」を測る〜
最初のステップは、マスメディアの報道とSNS上の議論が「どれくらい食い違っているか」を定量化することです。これをNDI(Narrative Divergence Index)と呼びます。
ここでは、高度な自然言語処理(NLP)技術を用います。具体的には、新聞記事のデータセット(コーパス)と、SNS上の投稿データセットを比較し、それぞれの空間で「特徴的に使われている単語」を抽出して可視化します。
この分析において重要なのが、「GiNZA」のような日本語に特化した高度な解析エンジンの活用です
さらに、「Scattertext」という可視化技術を用いることで、単語の分布を散布図として表現します
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「左上の象限」:SNSでは爆発的に話題になっているが、新聞は報じていないトピック(=潜在的な爆弾)。
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「右下の象限」:新聞は熱心に報じているが、有権者は全く関心がないトピック(=上滑りのアジェンダ)。
この「左上の象限」にあるキーワードこそが、選挙結果を覆すサプライズの源泉であり、ビジネスにおいては「次のトレンド」や「隠れた炎上リスク」の予兆となります。
方法論B:ショート動画の「感情ベロシティ」分析
〜「なんとなく」の好感度を数値化する〜
次に注目すべきは、テキストではなく「視覚」と「速度」です。若年層や無党派層の投票行動は、論理的な政策論争よりも、TikTokやYouTube Shortsなどのショート動画から受ける「直感的な印象」に強く影響されます
ここで導入するのが「Visual Sentiment Velocity(視覚的感情速度)」という指標です。 単に再生回数を追うのではありません。重要なのは、TikTokなどの投稿直後の「初速(Velocity)」です
また、コメント欄の分析もAIで行います。日本のネットスラングには、言葉通りの意味とは逆の「皮肉」が含まれることが多いため、単純なネガティブ/ポジティブ判定は通用しません。文脈を理解するAIモデルを用いることで、動画に対して視聴者が「共感」しているのか、「冷笑」しているのかを判別します。
もし、特定の候補者の動画が、高いベロシティ(拡散速度)と強い共感感情を伴って広がっていれば、それは従来の世論調査には現れない「隠れ支持層」の急拡大を意味します。
方法論C:デ・アストロターフィング(偽装世論の除去)
〜「作られた熱狂」を剥ぎ取る〜
SNS分析の最大の敵は、組織的な世論操作(アストロターフィング)です。特定の政党や勢力が、大量のアカウントを使ってトレンドを操作しようとする行為は、日本でも常態化しています
そこで、「De-Astroturfing(偽装除去)」フィルターを適用します。
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同時投稿検知:全く同じ文言を、ミリ秒単位の誤差で一斉に投稿しているアカウント群を特定し、排除します
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画像ハッシュ分析:プロパガンダ画像を使い回しているアカウントを、画像の指紋(Perceptual Hash)を用いて追跡します。
AIを用いてこれらの「人工的なノイズ」を徹底的にクリーニングすることで、初めて「生身の有権者」の本音が見えてきます。驚くべきことに、ノイズを除去すると、特定の政党の支持率が半減し、逆に無党派層の「冷めた声」が浮き彫りになることがあります。この「浄化後のデータ」こそが、真実のインサイトです。
方法論D:ベイズ統計による「確率的未来予測」
〜調査データとネットの熱量を統合する〜
最後に、これら全てのデータを統合し、未来を予測します。ここで用いるのが「ベイズ統計モデリング」です
従来の選挙予測は、過去のデータや一度きりの世論調査(点)に依存していました。しかしベイズ推定では、信頼性の高い大手メディアの世論調査を「事前確率(ベースライン)」とし、そこに日々刻々と変化するOSINTデータ(NDIやベロシティ)を「新たな証拠(尤度)」として加えることで、予測値を毎日更新(事後確率の算出)し続けます。
例えば、Googleトレンドにおける検索データの変化
「A候補が勝つ確率は60%」という静的な予測ではなく、「スキャンダル発覚により、A候補の勝利確率は昨日から5ポイント下落し、現在は55%のレンジで推移している」という、動的で確率的なシナリオを描くことが可能になります。
結論:不確実な時代の「羅針盤」として
今回ご紹介した4つの方法論(NDI、Visual Velocity、De-Astroturfing、Bayesian)は、選挙という巨大なイベントを題材にしていますが、その本質はビジネスにおける市場分析と全く同じです。
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NDIで、顧客が本当に気にしている「潜在的ニーズ」を発見する。
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Visual Velocityで、ブランドに対する「感情のうねり」を早期に捉える。
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De-Astroturfingで、競合のステマやノイズを除去し、「真の評価」を知る。
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Bayesianで、限られたデータから「未来のシナリオ」を確率的に描く。
AI時代の「調査」とは、人々に問いかけること(Ask)から、人々が発する膨大なシグナルを観察し、構造化すること(Observe & Analyze)へとシフトしています。
今回の衆院選では、これらの手法を用いて、オールドメディアの報道とは異なる角度からの情勢分析を試みます。その結果が、既存の「世論調査」とどう乖離し、あるいはどう合致するのか。それは、私たちのビジネスにおける意思決定の精度を高めるための、極めて興味深い実証実験となるはずです。
AIを駆使した情報収集と
海外先端技術調査 7つのアングル
- 1. 情報収集:
米国等海外のAIデータセンター関連の発電・送電・電気設備関連の情報収集をどう行うか? - 2. 情報収集:
中国のロボット製造開発会社とロボット部品会社を特定する - 3. 情報収集:
EU規制(EUデータ法)と米国の技術標準(ロボット・自動化・AI関連の安全・相互運用性基準)のうち自社に関係する部分を知る - 4. 海外先端技術調査:
AI半導体を製造する半導体製造装置群について知る - 5. 海外先端技術調査:
量子コンピューティングの現在動向をまとめる - 6. 海外先端技術調査:
フィジカルAIの分野別の典型的なユースケースを知る - 7. 海外先端技術調査:
自動運転技術の先端動向を主なプレイヤー別に整理する
講師:今泉 大輔(株式会社インフラコモンズ 代表)
主催:(株)R&D支援センター