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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

フィンテック大手Blockの人員削減と利益急増が同時並行で進むAIメカニズム。みずほの5000人削減も同じ?

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2026年2月末、日本のビジネスシーンに激震が走りました。みずほフィナンシャルグループ(FG)が、AI導入に伴う業務効率化により、事務職5,000人規模の配置転換(実質的な削減)を検討しているというニュースです。

この動きに対し、SNS上では岡野タケシ弁護士が「世界ではさらに過激な動きが進んでいる」と指摘し、大手法律事務所ベーカー&マッケンジーがAIを理由に最大1,000人の人員整理を発表した事例を引き合いに出して警鐘を鳴らしました。

LinkedIn投稿から:

Baker McKenzie is cutting up to 10% of its global workforce (600-1,000 folks), primarily in support and business services roles, following what it describes as ... a review of how work gets done in an AI-enabled environment.

「ベーカー&マッケンジーは、AI導入によって業務の進め方がどう変わるかを精査した結果、事務・バックオフィス部門を中心に、全世界の従業員の最大10%(600人〜1,000人)を削減することを決定しました。」

しかし、この現象の「真の恐ろしさ」は、単なるコスト削減ではなく、「人が半分になっても、利益は爆発的に増える」という成功体験が世界中で共有され始めている点にあります。

ジャック・ドーシーの「組織のスリム化」という衝撃

その象徴とも言えるのが、ジャック・ドーシー率いる米決済大手「Block(旧スクエア)」の動きです。同社は10%を超える大規模な人員削減を断行しながらも、2025年度の営業利益が前年比で約24%も急増するという、市場の度肝を抜く決算を発表しました。

ドーシー氏は、「チームは小さければ小さいほど良い」という持論を展開しています。かつてのような「規模の拡大=従業員数の増加」という方程式は、AI時代においてはもはや旧時代の遺物となりつつあります。

ジャック・ドーシーが「チームは小さいほど良い」という哲学に基づき、AIを理由とした大規模な人員削減を断行した際の主要なフレーズは以下の通り。

  1. 「少数のチームの方がより多く、より良くできる」という確信

    原文: "A significantly smaller team, using the tools we're building, can do more and do it better."(要約): 「私たちが構築している(AIなどの)ツールを使えば、大幅に少人数のチームで、より多くのことを、より高い質で成し遂げられる。」

    • この発言は、従業員数を約10,000人から6,000人以下へと、一気に40%(約4,000人)削減することを発表した際の核となる理論です。

  2. 「規模拡大=増員」という旧来モデルへの決別

    原文: "Intelligence tools have changed what it means to build and run a company... I think most companies are late. Within the next year, I believe the majority of companies will reach the same conclusion and make similar structural changes." (要約): 「知能ツール(AI)は、会社を作り、運営することの意味を根本から変えた。......多くの企業は(この変化への対応が)遅れている。来年までに、大半の企業が同じ結論に達し、同様の構造改革を行うだろう。」

    • かつてのように「事業成長に合わせて人を増やす」のではなく、「AIインフラに投資して組織をスリムに保つ」ことが新時代の標準になると主張しています。

  3. 「より小さく、よりフラットに(Smaller and Flatter)」

    • 彼は自身のSNS(X)や社内メモでも、AIと「Smaller and Flatter(より小さく、より平坦な)」チームを組み合わせることで、意思決定のスピードを劇的に上げる戦略を強調しています。

なぜAIは「中間管理職」を不要にするのか

これまでのIT化は、単純な定型業務を自動化するものでした。しかし、現在起きている変革は、AIが「エージェント」として機能し、プロジェクトの進捗管理や意思決定の補助、専門的なアドバイスまでを代替する「知能の自動化」です。

特に物理AIや高度な推論モデルの普及により、これまで「人間同士の調整」を主な業務としていた中間管理職や、高度な専門職(弁護士、コンサルタント、エンジニア)の業務の一部が、瞬時にAIによって処理されるようになっています。

ベーカー&マッケンジーのようなトップティアの法律事務所が人員整理に踏み切ったのは、AIが「法律実務」という高度な知能労働において、すでに人間のジュニア・アソシエイトを凌駕するコストパフォーマンスを発揮し始めた証左と言えるでしょう。(今泉注:ChatGPT + Deep ResearchないしGemini + Deep Researchにより過去の判例等を調べる類の法律調査系の業務は、体感的に言って、50人分の作業を1人で置き換えることが可能)

「ゴーストGDP」と2028年の知能危機

ここで懸念されるのが、「雇用を伴わない経済成長(ゴーストGDP)」の拡大です。企業がAIインフラ(データセンターやNVIDIAの最新チップなど)に投資すればするほど、人件費は圧縮され、利益率は向上します。

専門家の中には、2028年までにAIの処理能力が人間の事務処理能力を完全に代替し、ホワイトカラーの雇用市場に「知能危機」が訪れると予測する声もあります。

私たちが向き合うべき「新しい現実」

みずほFGの5,000人という数字は、氷山の一角に過ぎません。企業がAIを「補助ツール」としてではなく、「組織の中核(コア・エンジン)」に据えたとき、組織図は劇的に書き換えられます。

私たちは今、AIを使いこなす側になるか、AIによって「最適化」される側になるかという、非常に残酷で、かつ避けられない分岐点に立っています。企業の「稼ぎ方」が変わるということは、私たちの「生き方」のアップデートも強制されているということなのです。

フィンテック大手Blockとは?
日本で馴染みのある業種やサービスに当てはめると、以下の3つの要素を併せ持った企業だと考えると分かりやすい。

  1. キャッシュレス決済・店舗支援(Square部門): 日本の「Airレジ」や「STORES」のように、個人商店や中小企業に決済端末やPOSレジ、売上管理ソフトを提供する事業。

  2. 個人向け金融アプリ(Cash App部門): 「PayPay」や「LINE Pay」のように送金ができるだけでなく、銀行口座、株式投資、ビットコイン売買まで完結するデジタルウォレット事業。

  3. 後払い決済(Afterpay部門): 日本でも普及している「Paidy」のような、BNPL(今買って、後で払う)サービス。

つまり、「決済インフラ」と「銀行機能」と「投資」をITの力で統合した新興金融勢力

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