AIデータセンターの電源についてChatGPTに専門的な質問をしたらGoogle検索より300倍...
現在のChatGPTは、Google検索よりウルトラ・スーパー効率の良い検索ツールとして機能するようになっています。使っていて気づきました。
どういうことかと言うと、利用者の知りたいことを鋭く理解した上で、先回りして検索して、「あなたが知りたいことはこのリンクに書いてあります」と表示してくれるのです。質問が専門的であればあるほど、ChatGPTの検索性能は上がります。利用者の関心領域(専門)が絞り込まれているので、ChatGPTも検索すべき対象を絞り込めるからです。
例で見てみましょう。
新しい検索プロセス1:専門的な質問をする
How The Massive Power Draw Of Generative AI Is Overtaxing Our Grid (生成AIの膨大な電力消費が電力網に過負荷をかけている)
AIデータセンターに関するYouTube動画を見ていて、「米国におけるデータセンターの電力消費量が2030年に国全体の電力消費量の16%を占めるようになるというレポート」に言及していました。そこで、そういうレポートはあるのか?という質問をChatGPTにしました。
こういうシンプルだけれども専門性のある質問をChatGPTにしてみるのが、新しい検索プロセスの一番目です。この専門性を含んだ質問の内容からChatGPTはどういう情報が必要とされているかを判断します。
ChatGPTから意味のある回答を引き出すためには、こちらも意味のある質問をしなければなりません。しかも誤解する余地のない明快なものを。
新しい検索プロセス2:ChatGPTがリンクを含んだ回答をする
質問に合致したレポートはないとChatGPTが断ってきました。その上で、代替できる資料をいくつか出してきました。しかもリンク付きで。
このリンクを1つひとつクリックして確かめると、Google検索の一番目のページに表示される検索結果よりも、はるかに情報密度が高いページになっています。特に日本語の文献に混じって英語のWall Street Journalのわりと新しめの記事が含まれています。この記事は米国のAIデータセンターの電源問題をきめ細かく論じていて、大変に参考になりました。
ウィブル証券:AIデータセンターが電力需要を押し上げる:ゴールドマン・サックスがトレンドに乗る16銘柄を選定
axa-im.co.jp:強力な先導役:米国のデータセンター拡大が再生可能エネルギーの投資機会を促進
Wall Street Journal: Five Things to Know About AI's Thirst for Energy
この3本の記事を読むだけでも、AIデータセンターの電力消費に関する数多くの知見が頭に入ってきました。例えば、以下のことが明らかになりました。
・アメリカの電力関連会社(発電会社)がAIデータセンター関連銘柄と見なされている。
・原子力発電所に隣接したデータセンターというデータセンターの業態がある(Amazonが取り組み始めている)。
・PPA(Power Purchase Agreement)と呼ばれる電力会社とデータセンター運営会社との間で直接結ばれる長期の電力供給契約がある。(これは従来からある電力業界の慣行で、それがデータセンター業界にも浸透しています)
・AIデータセンターでは、サーバーの冷却に水が使われる場合があるが、その水の確保と排水とが課題になっている。
・WSJ記事によると、大規模なAIデータセンターを建設するには18か月〜2年。電源を再エネ発電所で賄うとすれば建設に3年以上。発電所とDCを繋ぐ新しい送電線の整備には10年以上必要になる。
・同、大規模なAIデータセンターの新設には原子力発電所1基分の1GW規模の発電所が必要。DCの建設期間内に原発の新設は間に合わない。現実的な選択は天然ガス(LNG)火力発電所か?
これらの知見は日本のAIデータセンターの先々を読み解く際にも有用なものです。
新しい検索プロセス3:ChatGPTの「情報源ボタン」でさらに有益なリンク多数に導かれる
ChatGPTを使った新しい検索で、さらにすごいのが「情報源ボタン」の存在。
この「情報源ボタン」を押すと現れる専門性の高い資料群!内外の専門性の高い文献を毎日探して歩いて読み込み、咀嚼し、レポートに書いていた小職としては、涙ものの情報源ボタンです。
通例、以下のような専門性のある、かつ、はずれがない資料群を集めるためには、Google検索で丸1日はかかります。検索結果に出てくるページを1ページずつ中を開けていって、ざっと読んで、使えるか使えないかふるいにかける...。丸一日色々なサイトを経巡ってようやくと意味のある資料10本が手に入る。そういう具合です。
それが、たった一つの質問と、それに対する回答だけで、ものの1分としないうちに集まってくる!この効率は...。
丸一日の実働を5時間300分とすると、ChatGPTを使った新しい検索では、検索スピードが300倍になった!ということができるのです。
[情報源ボタンにリンクされていた資料群]
Property Data Bank:投資家が注目するデータセンター、しかし死角も
JETRO:米エネルギー調査会社が電力需給の将来予測を発表、送電網の整備が課題に
HATCH:AIの普及によって電力消費量が増える? 国内外のデータセンターの現状と各国の対策は?
シティグループ証券(経済産業省 第21回資源開発・燃料供給小委員会における発表資料):米国電力セクターの動向から考える日本のエネルギー一事情
資源エネルギー庁:電力需要について(2024年6月)
Data Center Cafe:米国のデータセンターの電力消費は2030年までに倍増 〜Newmarkレポート
地球環境戦略研究機関(IGES):デジタル化の進展による電力消費量の変化と1.5℃目標実現への示唆
これは十分に検索革命と言って良いです。
どういうことが起こっているかと言うと...。ChatGPTは、Googleよりもはるかに深く、資料の中身を読み込むのです。そうして意味あるものだけをセレクトします。質問が専門的なものであればあるほど、その文脈をしっかりと理解して、その文脈に合った専門性のある記事を拾ってくるのです。そうして「情報源ボタン」に並べます。それがわずかに1分!
検索革命が起こっています。この検索革命が、OpenAIのDeep Researchの超高性能のレポート作成を支えています。すごい時代になったものです。