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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

Xに内蔵されたAI Grokのすさまじい威力

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前置き。

Grokそのものに興味がある方は、小見出し「イーロン・マスクが投稿していた円チャートがGrokで出てきた」からお読み下さい。それまではXのタイムライン表示の優れたアルゴリズムの話を書いています。

タイムライン表示アルゴリズムでXが「論壇」になった事例

AI (LLM) の動きが活発になった2023年前半から、X (Twitter) で、興味深い発言をする人をフォローして、「人間ベースの情報取集」みたいなことを断続的に続けてきています。この間、Xの自分のアカウントのタイムライン(特に「おすすめ」)に表示される投稿を決めるアルゴリズムがどんどんバージョンアップして、「関心のある投稿が、いつ開いても、誰かから流れてきている」という感じになってきました。これをエコーチェンバーと言うのか、言わないのか?

Google Search Lab / AI によると、エコーチェンバー(echo chamber)とは、自分と似た意見ばかりが目に入る状況を指し、閉じた部屋で音が反響する物理現象にたとえた言葉だそうですが、私は、現在のXの高度なタイムライン表示アルゴリズムが、エコーチェンバーであるとは思っていません。どうも、その人の関心を先読みするAIのようなものが、裏で動いていて、そのAIが繰り出してくる投稿群であるようなのです。

具体的に、どういう事例があるかと言うと、米国大統領選でトランプが勝つか?カマラ・ハリスが勝つか?という競り合いが行われていた昨年。最終的に民主党の地盤である州で共和党(トランプ)が勝つということが続いた際に、X上で、国際関係論や政治学の専門家及び米国に詳しいジャーナリストらによって、なぜそのような現象が起こったのか?を解説する議論が起こったということがありました。Xがちょっとした「論壇」のようになって、毎晩のように新たな論客が登場し、目の覚めるような自説を披露するということが行われていました。これは日本語による議論です。

その際に痛感したのが、Xが、よくもこれだけ私がフォローしていない米国大統領選の専門家の投稿を、次から次へと「おすすめ」に出して来るようになったな...ということでした。

意味が取りにくい英語の投稿はGrokに解説させる(そうしてChatGPTで和訳する)

同じことが、DeepSeekについて、AI関係者が一斉に話題にし始めた時にも起こりました。私がフォローしていない人で、DeepSeekについておもしろいことを言っている投稿が次から次へと現れるようになりました。投稿はほとんどが英語。

英語ネイティブの米国人の投稿は、文章を端折ったり、特殊な俗語を用いることがあって、X内蔵の翻訳機能で日本語に訳しても意味が取れないことが多いです。しかし現在では、Xに内蔵されたAIであるGrokが大いに役立ちます。Grokに「この投稿は何を意味している?」と問うのです。

英語の投稿に関してGrokに尋ねる際は、英語でやるのが鉄則です。米国で開発されたAIであるため、日本語で尋ねると日本語投稿のみを参照して答えを作るようになっているようです。英語で「What this post means?」と入れ、投稿のURLを噛ませると、すぐに、関連する文脈を明快に解説する文章が出てきます。これも英語ですが、現在はChatGPTの英文和訳がものすごくこなれているので、すぐに英語をコピペしてChatGPTに「翻訳を」とお願いします。すると目が覚めるような知見がそこに出てきます。

そのようにして意味を取りながら、毎晩、DeepSeekで沸き立っているX界隈を見ていました。特にシェアする必要があると思った投稿は、日本語訳付きで、私が管理人になっているChatGPTとMidjourneyのビジネス活用を探っていく勉強会の方でシェアしました。

イーロン・マスクが投稿していた円チャートがGrokで出てきた

さて、ここからが本題です。先ほど、中国のAI(DeepSeekが代表格)が中国のEVのように世界市場で存在感を持ってくるということを論じていた記事(DeepSeekで激震、AI産業が学ぶべき「中国EVの教訓」:Wired JP)に目を通していて、以前に、イーロン・マスクがX投稿で、Teslaの時価総額が世界の自動車メーカー全社の時価総額に占めるシェアを一つに円に表して、Teslaの存在感がいかにすごいかを示していたのを思い出しました。

あの時価総額シェアの円チャートをGrokなら探し出せるのではないか?と思い、以下のように英作文で聞いてみました。

Do you know global auto industry market capitalization share in a circle posted by Elon Musk's X account? (ChatGPT訳。イーロン・マスクのXアカウントに投稿された円グラフで示された、世界の自動車業界の時価総額シェアを知っていますか?)

すると、出てきたのです!かすかに記憶にあったあの円チャートが!

Grokの回答です。(ChatGPT訳)

イーロン・マスクのXアカウントが、テスラの時価総額と世界の自動車業界に関する投稿を行いました。Xの投稿によると、テスラの時価総額は急上昇し、世界の自動車業界全体の時価総額のほぼ半分に達しています。具体的には、テスラは1.4兆ドルとされ、トヨタ(2310億ドル)、BYD(1070億ドル)などの主要自動車メーカーを大きく上回っています。ただし、これらの数値はXの投稿に基づくものであり、ソーシャルメディア上の情報は正式なものではなく、急速に変動する可能性があることに留意する必要があります。最も正確で最新のデータを得るには、金融ニュースや市場分析サイトを確認するのが望ましいでしょう。

そして、関連投稿の中に示されていたのがその円チャート。(出典:@amuse投稿

GlobalAuto Industry.jpeg

これを見ると、Teslaの存在感が、日本の経済人一般が考えるよりもとてつもなく大きいということがよく理解できます。次いで我らが日本のトヨタです。その次に中国のBYDが来ます。なおこれは繰り返しになりますが、時価総額で見たシェアです。

ここでGrokが果たした機能をまとめると...

・以前にチラと見た、印象に残るX投稿を、質問が適切なら探し出せる可能性がある。

ということです。これはXを先端動向の情報収集で使っている人にとっては涙ものの機能です。

なお、同じ内容の質問を日本語でしたところ、次のような答えが返ってきました。つまりその円チャートを見つけることは不可能だということです。

質問

イーロン・マスクが以前にXの投稿で、世界の自動車会社の時価総額のシェアを、一つの円で表したチャートを出していたことがあるのですが、それはどれかわかりますか?

回答

イーロン・マスクがX(旧Twitter)で世界の自動車会社の時価総額のシェアを一つの円で表したチャートを投稿していたかどうかについて、具体的な投稿を見つけることは困難です。しかし、関連する情報を提供することはできます...(以降、補足する情報が続く)

Xで、英語の投稿で情報収集をしている人は、Grokに質問する際にも英語で通す方が良いようです。

Grokは、特定の業界について情報収集するためにフォローすべき人を特定する用途でも使えます。これについては、次の投稿で詳しく書きます。「Xの個々のアカウントを分析する機能」が強力なのです。

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