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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

東北における石炭火力発電所10万kW級の余地

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現在の業務としては、太陽光発電の地主さんサイドに立った種々のアレンジメント以外に、タンザニアにおける天然ガスを活用したいくつかの事業モデルの具体化、そして、東北地区における木質バイオマス発電の案件形成、さらに、東北地区における石炭火力発電の案件形成を行っております。このうち、岩手県某市で進めている木質バイオマス発電については、なんとか具体化できそうな見込みです。
しかし、石炭火力発電10万kW級は、事業者の方が手を挙げさえすれば着手可能なところまで練れてきているものの、まだ身を乗り出す企業に巡り会っていません。ということで、当ブログ上で売り込みをかけさせていただきますm(_ _)m

■出力

周知のように火力発電所は11.25万kWを超えると、環境影響評価法に定める第二種事業という位置づけになり、環境アセスメントを実施しなければなりません。10万kW台とは言え、依然として大きな火力発電所であることに変わりはありませんから、近隣の住民、大気、河川、生態系などに与える影響を予め正確に予測し、対策が必要なものについては適切な措置を施して、地域と調和した発電事業として形作っていくべきことは、もちろんです。この環境アセスメントのために3年〜4年の期間がかかります。環境省と経産省の協議により、期間の短縮が図られていますが、現在のところ期間短縮の対象になるのは、いわゆる「改善リプレース」の石炭火力であって、その条件に合致しないものは従前どおりの環境アセスメント、すなわち、3〜4年をかける必要があります。この期間が、事業者側にとって大きな負担となっていることは言を俟ちません。

このことから、新設の火力発電では、石炭に限らずガスでも国が定める環境アセスメントを避けるために、出力を11.25万kW以下で設定するケースがよく見られます。ということで、出力は10万kW前後とします。規模が大きくなればIRRが若干よくなるため、所内電力10%を想定した正味電力10万800kWが妥当かと思います。

国の環境アセスメントが避けられるとはいえ、各都道府県では独自の環境アセスメント基準を持っており、それは実施する必要があります。本案件の用地がある県でも独自の環境アセスメント要件を定めており、実施しなければなりません。国が環境アセスメントにかかる期間の短縮に動いているということはあるものの、現状では、従来どおり3年間かかるものとなっています。(別な県では2年弱というケースもあるそうです)

■石炭のロジスティクス

石炭火力発電成立における制約条件はいくつかありますが、その筆頭に掲げるべきものが石炭のロジスティクスです。10万kW強の出力で、年間33万トンの石炭を消費します。定期点検等を勘案した年間操業日数が310日とすれば、1日1,060トン。これを10トンの積載量があるダンプトラックで運ぶとすれば延べ100台が必要となります。1日4往復で25台で済むとすると、1台1日当たり3.5万円と想定すれば、石炭1トンにつき、830円程度の上乗せの運搬コストがかかります。1日4往復と簡単には言うものの、現実的には3往復程度でしょうから、まずは、トン当たり1,000円の運搬コスト。一般的に、日本の港における石炭の調達コストは1万3,000円〜1万4,000円程度。これに1,000円上乗せされるだけで、事業の仕上がりのIRRが0.5〜0.8%程度は下がります。これは痛いです。

つまり、石炭火力発電は、ダンプトラックで運ばなければならないような場所で展開すべきではない。一度、新日鉄住金釜石製鉄所の自家発電設備15万kWを敷地の外から見させていただいたことがありますが、あそこでは釜石港の石炭積み下ろしバースから大変に長い距離をベルトコンベアで運搬していました。ベルトコンベア設備の建設に相応の初期投資がかかるわけですが、上記のようにダンプトラックで毎日かかるコストに比べれば微々たるものでしょう。

いずれにしても石炭火力発電所は、年間数十万トン〜数百万トンという石炭を海外から持って来て積み下ろしができる港湾設備のそばで建設するしかありません。

なお、日本では石炭輸入の受入基地とも言うべきコールセンターが数カ所あり、このコールセンターでいったん積み下ろしをした石炭を内航船によって石炭火力発電用地まで運ぶという方法もあります。その場合にも、石炭火力発電用地のそばには内航船用のバースが必要であり、港湾設備が必要になるということに変わりはありません。一般的にコールセンターと内航船を組み合わせる場合には、トン当たりの運搬コストが、コールセンター使用料も含めて1,000円〜2,000円程度かかると言われていますから、これもまた石炭火力発電事業の仕上がりのIRRを下げる要因となってしまいます。

本東北地区の石炭火力事業で選定した用地では、3万トン級の外航船が着岸できるバースがあり、上記の課題が克服できます。この地の利を生かして、石炭を海外から直接調達するということについても、かなり現実的な道筋を見つけています。それにより、日本着の石炭調達コストがかなり安くなります。

■送電線

送電線については、管轄する電力会社の基幹送電線のうち、一番下のクラスの15万4,000Vに容量の空きがあり、接続可能だということを口頭で伺っています(ただし、正確には手順に則って系統アクセス検討申込みを行う必要があります)。アクセスポイントまで新設の特別高圧送電線は2km弱が必要になる見込みです。

■用地

用地は上記の3万トン級の外航船が着岸できるバースに隣接した工業用地として、まず4haが利用可能なものとして存在しています。所有者の自治体様では、向こう1.5年〜2年程度の間に最終的な仕上げの整備を行い、公募の段取りを整えて公募します。現在のところは、興味を示している事業者さんは1社しかおらず、入札に勝つ可能性は大変に大きいです。また、用地が存在している自治体さんでは、雇用増につながるということもあり歓迎の意向を示していらっしゃいます。ここはぜひ地元自治体さんの支持姿勢を取り付けて、公募に臨みたいというところです。
もともとが工業用地ですし、近隣地区に数万kW級の石炭火力自家発電設備があるということもあり、近隣の住民の方の意向も前向きであると認識しています。

■燃料調達

石炭燃料については、国内の既存ルートからの調達という固定観念から切り替えて、海外からの直接調達の道を探りました。弊社ではタンザニアでの天然ガスに関係した事業の成立の余地を探っているということもあり、たまたま、石炭の国内輸入に興味を示している企業さんが見つかって、内諾レベルではありますが、国内の相場よりは2割程度は安い相場での直接買付が可能だとの道筋が見つかっています。
とはいえ、石炭火力発電は20年〜30年の長期にわたる事業であり、その間、安定的に調達する必要があることから、商流を堅くするための何らかの措置が必要であることは承知しております。そうした現実的な部分については、これからの取り組みとなります。

■発電設備

発電設備については、この分野で実績のあるプラントエンジニアリング会社さんとやりとりをして、実績のあるタイプの石炭火力発電設備一式の情報提供を受け、kW当たりのラフな見積もりもいただいております。また、その見積もりによって、25年操業の試算をしています。日本の石炭発電技術の最先端を取り込んだ、環境性能に優れる非常によい型番の施設です。
上記石炭運搬船着岸バースに隣接したエリアに運炭設備、貯炭場を設けますが、その設備についても同社に依頼できることになっています。
特に日本の石炭火力発電では、発電効率を高めるために炭種を細かく見ますが、それについても情報提供を受け、これに合致した炭種を上記の海外直接買付によって持ってくることにしております。

■石炭灰の処理

焚いた石炭の11%の石炭灰が出ることを想定しています。年間3万6,300トンとなります。
これを通常どおり産業廃棄物として処理すると、トン当たり1万5,000円の引取量がかかります。年間で5億5,000万円にもなろうという大きなコストになり、これが仕上がりのIRRを大きく悪化させます。これをそのままにしておくと、事業として取り組むことがかなり難しくなるのではないかと考えます。
打開策を色々と探ったところ、ある重電メーカーさんで、石炭灰を、簡単に言えば、セメントのようなものと混ぜて、高温多湿の環境で早期に固めて、そのカチカチに固くなったものを砕いて砕石とし、道路建設の際の資材として活用する。すなわち、砕石として販売できるようにするというやり方があることが判明しました。早速その重電メーカーさんに伺い、砕石製造プラント一式の初期投資額、および、トン当たりの砕石製造コストを伺ってきて、本石炭発電事業25年操業の中に組み入れました。思った通り、産業廃棄物として引き取ってもらうよりは、よほどよい仕上がりのIRRとなりました。ただし、これを実際に動かすには、砕石の売り先を探して歩く必要があり、そうした販売ルートづくりについてもこちらで動きたいと考えています。
なお、本発電所から出る電力の売電価格としては、10.5円を想定しています。関係者へのヒアリングによると、もう少し高い価格での販売が可能ではないかとのことです。それについては、先日上げた投稿「電力取引所での取引が急増していることから」に記した事情が関係していそうです。

■25年操業の試算結果

エクセルシート4枚で展開する手元の試算では、総投資額310億円、25%エクイティ、75%デットで調達した時のプロジェクトIRRが10.9%、エクイティIRRが17.7%と、かなりよい数字となりました。このよい数字が出てきた背景には、石炭調達コストが海外直接買付により安いということと、上記の石炭灰の処理の工夫があります。また、石炭運搬船が着岸できるバースに隣接した用地であり、運搬コストがかさまないということも効いているようです。
(なお、この数字は消費税5%で計算していたものですが、8%としても、0.2%程度IRRが悪化する程度です)

■事業環境の見通し

周知のように原発再稼働の見通しが立ちにくいなかでは、日本の電力需給では、海外から輸入してきたLNGや石炭による発電を増やさざるを得ません。LNGの輸入コストは、数年先には米国からのシェールガス、ロシアからのLNGなど調達先が多様化することにより現在よりも安くなることは確実であるものの、それにしても石炭発電コストにはかなわないことは明らかです。石炭発電が重要な役割を担っていくことには変わりはありません。特に24時間焚けるベース電源としての意味は大きいでしょう。

一方で電力小売の一般家庭までの自由化が秒読みとなった現在では、新たに小売ビジネスを仕掛ける際には、やはりまとまった量の電源が欲しいところです。再生可能エネルギー固定価格買取制度の下で、木質バイオマス発電などが新たな電源として加わってきますが、火力10万kW級のように大きな発電量は持たないため、まとまっているかどうかということでいうと、あまり大きな期待はできません。小売ビジネスを仕掛けるための新たな電源が欲しいという時、石炭火力10万kW級はちょうど手頃なサイズではないかと思われます。

■資金調達

本案件では、外資系ファイナンシャルアドバイザリー会社の方々とも適時、情報交換を行っており、一定の条件を満たした場合には、資金調達面で助力してもよいとのお言葉をいただいております。エクイティ部分についてもカバーする道筋がないわけではないそうです。

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