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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

太陽光発電の難しさ - 「相場」のなさ

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ブログを書くペースを忘れたので、当面は、書きたい時に書くという方針で…。

昨年の前半から太陽光発電の案件に相当な数関わりました。いま数えてみたら16件。着工にこぎつけたものもあり、途中で空中分解したものもあり。様々です。小さいもので500kW程度。一番大きなもの10MW前後です。もっとも一番大きな案件は土地の造成の費用が制約となって成約しませんでした(一応しゃれ)。

色んな経験をしましたし、色んな知見を得ましたが、今回は、太陽光発電が実現する上で懸案となりがちな「理不尽な値付け」について。

日本の山野にまとまった広さの土地を持っている地主さんの観点に立つと、昨年7月から始まった固定価格買取制度は、簡単に言えば「儲けのチャンス」。これまで寝ていた土地、バブル前後に購入して塩漬けにしていた土地がお金を生むわけですから、大いに期待したいわけです。しかし、「ここで一発当ててやろう」的な姿勢で臨むと、どういう商売でもうまくいかないのは世の道理。

太陽光発電では、発電事業者が土地を借りて行うパターンと、発電事業者が土地を買い取って行うパターンとがあります。多くは借りて行います。この時の賃借料が、だいたい、1平米当たり100円から250円。年間の賃借料ということです。250円はかなり高い方で、これで採算が取れるのは、よほど日射量の多い土地であるか、よほど太陽光パネルおよびパワーコンディショナーが安いかというケース。普通は250円なんて水準には間違ってもなりません。

太陽光発電、1MW=1,000kWをひとつの基準として言うと、だいたい、1万6,000平米の土地が必要になります。平米100円の賃借料なら年間160万円が地主さんに支払われます。

これが安いのか高いのか、いまいちピンときませんが、単位面積当たりの稲作がもたらす粗利をひとつの比較対象とすると、やや明らかになります。一般的に一反の田んぼがもたらす粗利(できあがった米の売上からざっくりと種籾代、肥料代、農機具利用コスト、農耕労務費等を差し引いたもの)は5万円程度であると言われています。一反はおおよそ10アール。すなわち1,000平米。1万6,000平米の田があるとすれば計80万円の粗利となります。稲作の粗利はこれよりも低いケースがあるようです。

これと比較すると、太陽光1万6,000平米が1年間にもたらす賃料は2倍。平米100円の賃借料でもけっして悪くない水準であることがわかると思います。

私は日本の田んぼの1割とか2割が太陽光発電の用地になればいい、などとは決して思いませんが、しかし、高齢化によって稲作をする人がいなくなった農家においては、例外的に太陽光発電に転用することを認めてもいいのではないかと思っています。現在のところは、農地法によって、まとまった面積のある田んぼに農地転用をかけ、太陽光発電の用地にすることは厳しく制限されています。

ちょっと脇道にそれましたが、太陽光発電の用地の賃借料の話をしています。地主さんは、太陽光がやってくるというので、できるだけたくさんの賃借料を得ようとする。「平米100円では貸さないよ」という態度に出ます。これが太陽発電事業の組成にとって、きわめて大きな障害となります。

昨年の後半に日経新聞の一面で、その当時、成立していた太陽光発電案件の賃借料が報道されました。ある企業が大規模に展開するケースで平米当たり200円台半ばから後半(訂正:300円台半ばから後半)の数字が出ていました。多くの地主さんはこの数字を読んだ。そして目を丸くした。こんなに取れるんだ?と。

さて、それ以降、多くの太陽光発電案件では、賃借料が高騰してしまい、組成がなかなか難しくなってしまいました。

太陽光発電では、その統計的に得られるその土地の日射量を元にして太陽光パネルが発電する発電量を事前に算出することができます。この発電量(単位はkWh、「キロワットアワー」)に、固定価格買取制度が太陽光セグメントに定めたkWh当たりの買取価格36円(消費税抜き)を掛けることによって得られます。この発電量は、太陽光パネルのメーカーが違っても、まずほとんど差がありません。ただ、日本の地域によって、太陽が降り注ぎやすい土地とそうでない土地があり、単位面積当たりの日射量にはややばらつきがあります。しかし、一番多いところと一番少ないところを比べても2割程度違うかどうか。土地による日射量のばらつきはおおむね10%程度と考えてよいと思います。

従って、ラフに言えば、単位面積当たりの売電収入は日本のどこでやっても、さほど変わりがない。1MWの太陽光発電所で1年間におおむね3,800万円プラスマイナス10%程度の売電収入があると考えればよいでしょう(36円の時)。

この売電収入にさほど差がないということは、1つの太陽光発電のプロジェクトが用地に出せる賃借料は「財布に限りがある」ということになります。

地主さんの側は、この「財布に限りがある」ということをなかなか理解してくれない。「売電収入はどうやっても増えないんです。だからお支払いできる賃借料にも上限があるんです」ということを言っても、なかなか理解して下さらない。

上の日経で読んだ高い方の賃借料を例に「220円で行きたいんだが…」とか「250円で何とか…」とおっしゃる。この取扱が大変に難しいということになります。

状況を端折って言えば、太陽光発電の用地の賃借料に関する「相場」の情報が流通していないんですね。どういう賃借料が安くて、どういうのが高いのか、地主さんの側では皆目わからない。なので、高い方の設定でがんばればいいもんだと思ってしまう。がんばって、がんばって、がんばって、事業者の側が折れなければ、その案件は流れてしまいます。このとき、地主さんが主張している金額が、太陽光プロジェクトが吸収できる水準であればいいんですが、そうでない場合には、非現実的な値段を言っているということになり、それがために案件不成立では地主さんのためにもなりません。

しかしこの賃借料の相場も、一概にいくらか適正かということが言いにくいのが現実で…。これについてはまたいずれ。

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