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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

「エアポートシティ」という魅力的な考え方(上)

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空港系の資料に目を通していて最近気になるのが「エアポートシティ」(Airport city)という言葉です。同じ意味で"Aerotropolis"を使う場合もあります。
「エアポートシティ」はインフラ事業としての空港運営の延長で捉えられるだけでなく、スマートシティの文脈で捉えることもできる、きわめて興味深い考え方です。

■事例1:韓国のスマートシティ新松島(New Songdo)においてGale Internationalが取り組んでいるもの=大型国際空港の近隣に新コンセプトの都市をつくるタイプ

こちらの投稿でも書きましたが、韓国の新松島は仁川国際空港の戦略的な地の利を生かしたスマートシティです。仁川空港から飛行機で3.5時間の圏内に北京、上海、東京、大阪、台北、香港を含む100万都市が61都市。中国、日本、韓国、その他北東アジア諸国を合わせたGDPは世界の24%、域内人口15億人。それらの真ん中にあるのが仁川国際空港です。

こうした広域経済圏の中心にある国際空港のそばに都市を開発することで、その経済圏でビジネスを行う人々が拠点を置くのにふさわしい地の利が得られます。オフィスが置かれ、そこに通勤する人が住みます。
新松島の場合は完璧に欧米系のビジネスパーソンのための街として作られており、彼らが心地よく暮らすには何が必要かという発想で都市空間をデザインしています。地元を大切にするアプローチとは真逆ですね。それがよいかどうかはまた別の話ですが。

関連投稿:
スマートシティ新松島の背景:仁川自由貿易地域と仁川国際空港
スマートシティ新松島のネットワーク発想
総投資額350億ドルのスマートシティ新松島

新松島は米国のデベロッパーGale Internationalが一手に引き受けて開発を行っており、民間企業による世界最大の不動産開発プロジェクトであると言われています。総事業費350億ドルですから、確かに巨大です。同社代表のStan Gale氏がよく好んで"Aerotropolis"という言葉を使っています(本投稿では「エアポートシティ」と同じ意味の言葉として扱います)。

McKinsey & Company "What Matters": At home in the aerotropolis(2011年2月)

上の記事によると、この"Aerotropolis"という言葉はStan Gale氏の発明によるものではなく、米国University of North CarolinaのJohn Kasarda教授の造語だそうです。
Kasarda教授によるロジックはこうです。歴史的に言えば、人々は社会的、経済的、知的な「コネクション」を求めて都市に住むようになった。グローバリゼーションが進んだ今日では「他の世界都市とのコネクション」が重要になっている。すなわち空港を核にしたコネクションが重要。従って、現在の人々は「空港を取り囲むようにして住むべきだ」となります。
これは大都市の鉄道網が発達した日本で言えば「駅の回りに住め」ということとほぼ同意であり、至極筋の通った考えだと言えなくもないです。
既存の航空便に加えて、LCCによるバス並みの運賃が可能になっている現在、新しいタイプの社会的、経済的、知的活動を行う人々は「ちょっと六本木まで」という感覚で、「ちょっとクアラルンプールまで」と考えるはずであり、「空港を取り囲むようにして住むべきだ」という発想にはリアリティがあります。

Airportcity

John Kasarda教授によるエアポートシティの概念図

Financial Times: Aerotropolis(2011年2月)

上は同一の著者によるより詳しい記事です。この中にKasarda教授の次のコメントがあります。

「中国では新松島と同じサイズの新都市をあと500つくる必要がある(注:新松島は人口30万)。人口100万人規模の都市もあと100必要だ」

彼はこれらの都市がすべてエアポートシティであるべきだという考えに立っているようです。なかなか過激です。

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