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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

国連系のPPP普及啓蒙機関 - UNESCAP

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昨日のインフラ輸出セミナーでは、インフラ輸出およびインフラ事業に取り組むメーカー、通信会社、シンクタンク、コンサルティング会社の実務担当者の方々にお集まりいただきました。どうもありがとうございます。
いただいた質問に関して、この場を借りてお答えしていきたいと思います。

まずは、国連系のPPP普及啓蒙機関について。

国連の立場では、加盟各国のインフラが順調に整備されて、経済発展の礎となることは非常に喜ばしいことです。PPPは、各国政府における財政負担を軽減し、インフラ整備を加速化させるものですから、国連としても多いに奨励したいわけです。
自らの力でPPPを発展させてきたイギリス、オーストラリアなどは例外であり、ほとんどの国では、中央政府官僚も地方政府のお役人も、PPPのよさは理解していながらも、実際に個別のインフラ案件をPPPによる公開入札に持って行くまでの実務能力が追いつかない状況にあります。

そこで国連系のPPP普及啓蒙機関では、
 1) 各国で取り組まれたPPPのベストプラクティスの共有
 2) カンファランスの開催、各地域での普及啓蒙拠点の設立
 3) インターネットを使った政府実務担当者向けの学習素材の提供
などを行っています。

政府側にインフラ案件をPPPに仕立てる実務能力が不足している状況は、「capacityがない」と表現されており、国連系のPPP普及啓蒙機関が取り組んでいるのはいわゆる"capacity building"ということになります。

国連系のPPP普及啓蒙機関は2つあります。1つは、アジア太平洋地域をカバーしているUNESCAP(United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)です。インフラのPPPということで、Transport Divisionの下にPPP推進機関があります。サイトはこちら

ここはアジア太平洋地域のPPP担当大臣を集めた会合を1〜2年に1度開催しています。直近では2010年4月にジャカルタで開催されました。その時の発表資料の一部はここで公開されています。Information paperを細かく読み込むと各国のPPPの取り組み姿勢、PPP制度の整備状況がわかります。
なお、2007年10月にソウルで開催された1つ前の会合では、各国においてPPPへの取り組みを活発化する合意を盛り込んだ「ソウル宣言」が採択されています。
ソウル宣言で具体的に挙げられている項目は、各国において、

  • PPP政策のフレームワークを構築すること
  • 法制度、規制面の改革をすること
  • PPP案件において良好なガバナンスが働くように監督メカニズムを確立すること
  • 官側においてPPP案件を実施できるキャパシティを確立すること

となっています。

このソウル宣言は2008年に開催されたESCAPの会合において、ESCAP Resolution 64/4として合意され、各国政府に強制力が働くものとなっているようです。

UNESCAPが提供しているPPPのガイドラインには、2009年の"A Guidebook on Public-Private Partnership in Infrastructure"があります。これは、政府関係者がざっと一読してPPPの全体像を頭に入れるための小冊子という性格です。実務面で役立つ詳細なマニュアルというものではありません。

政府の実務担当者向け教材に相当するものでは、"PUBLIC-PRIVATE PARTNERSHIPS IN INFRASTRUCTURE DEVELOPMENT, A Primer"と、ここのページで公開されている複数のオンライントレーニング教材があります。

国連系の欧州に拠点を置くPPP普及啓蒙機関については、続く投稿で記します。

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