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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

グローバルなプロジェクトファイナンス界では日本のメガ3行の存在感が高まっている

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外国政府が民間企業にコンセッションを与えるインフラPPPとプロジェクトファイナンスとは切っても切れない関係にあります。プロジェクトファイナンスの動向、例えば、貸出総額が増えたとか減ったとかいう話は、インフラPPP動向の別な側面だと言えます。

一般的に言われていることとして、リーマンショックを境に、プロジェクトファイナンスのクロージング(案件に対してシンジケート行による融資が成立すること)件数が著しく減り、融資額も急減したということがあります。リーマンショックによりリスクが取れなくなった銀行は、融資期間が20年といった長期にわたる案件に資金を出しにくくなりました。新規の融資ができないばかりか、超長期の債権を抱えていることができずにプロジェクトファイナンス部門を売却するところも出てきました。この分野最大手のRoyal Bank of Scotlandがプロジェクトファイナンス部門を三菱東京UFJ銀行に売却したニュースは記憶に新しいところです。

リーマンショックによってプロジェクトファイナンスが大きく凹んだ後に、どういう状況がもたらされているか?そのへんについてまとめている記事、コラム、論文などが最近は目につきます。以下もその1つ。インフラ関連ファイナンスのリサーチ会社サイトにあったブログです。

What will the post-credit crunch competitive landscape look like for project finance banking?

プロジェクトファイナンスは、貸出対象となるコンセッション型PPP(BOTなども含む)がイギリス発祥のものであるという背景もあって、初期には英国系の銀行がメインのプレイヤーでした。
この投稿によると、1995年当時はプロジェクトファイナンス融資総額に占めるトップ20のアレンジャー(Mandatory Lead Arranger=いわゆる主幹事行)のシェアが70%もあったのに対し、リーマンショックを経た2009年には44%に減少しているとのことです。

背景には、プロジェクトファイナンス界に多くの新プレイヤーが参入してきたということと、従来からの大手行がこの分野から撤退したということがあります。

専門誌"Project Finance"では、Dealogicというこの分野のリサーチ会社のデータを元にプロジェクトファイナンス融資額のランキングを発表しています。(トップページの下の方にあります)

この"MLA"(Mandated Lead Arranger)セクションを見ると、第七位に三菱東京UFJ銀行の名前があります。類似のランキングは、他にも1社(Prequin)が提供しており、各々順位は違いますが、並んでいる銀行の名前はほぼ同じで、そうしたランキングには三井住友銀行、みずほコーポレート銀行も入っています。20位までをとると、どちらのランキングにおいても3行が並ぶでしょう。国際協力銀行も入るはずです。

趨勢としては、英国などの従来からプロジェクトファイナンスに注力してきた銀行が退場していくなかで、相対的に日本のメガ3行の存在感が高まっていると言えます。国内企業による資金需要の傾向を考えると(震災によって一時的に融資が急増していますが)、おそらくは、今後ますますメガ3行のプロジェクトファイナンスの融資額は増えるのではないでしょうか。

このような邦銀のプロジェクトファイナンスへの注力が、日本の事業会社による海外でのインフラプロジェクトへの参画を活発化させる側面支援になればと思っています。個人的には、金融界が保持しているコンセッション型インフラPPP事業におけるファイナンスの実務ノウハウを(プロジェクトファイナンスに関わるなかで得られたノウハウを)、未だノウハウが持てないでいる大手商社以外の事業会社に伝授する枠組みがあればいいのではないかと思っています。

余談ですが、プロジェクトファイナンス融資総額のランキングを見るたびに、インドの銀行(State Bank of India)が必ずトップにいるのが気になります。これは、インドではインフラPPP案件が無数にあり、そこに同行が貸しているということなのか、それとも同行がグローバルプレイヤーとして真に力をつけている(国際案件に積極的に融資している)ということなのか。どちらなのでしょうか?

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