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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

三菱UFJが英国RBSのインフラ融資部門を買収するというニュースから

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11月3日付日経新聞朝刊では、三菱UFJが英国最大手銀行Royal Bank of Scotland(RBS)のプロジェクトファイナンス部門を5,000億円で買収することが報じられていました。たまたま昨日上げた投稿(書いていたのは前日です)で触れたインフラ投資に関係するニュースだったので、興味深く思いました。
今日はこの流れで、インフラ投資関連のトピックをいくつか拾ってみましょう。

■プロジェクトファイナンスで世界トップだったRBS

検索でインフラ投資業界に特化したニュースサイトを見つけました。その名も"Infrastructure Investor"。専門サイトがあるとは驚きです。ここはなんと年間購読料が2,000ドル以上!
RBSのproject finance関連で検索してみると、2009年2月の記事で、RBSが超長期のプロジェクトファイナンスから手を引くという報道が見つかりました。

RBS to exit project finance amid £24.1bn annual loss

これによるとRBSは2008年度に241億ポンド(現在のレートで3兆1,000億円)の損失を負ったため、貸付期間が15年以上のプロジェクトファイナンスの貸付余力がなくなったとのことです。記事によると15年、20年、30年といった超長期のプロジェクトファイナンスがあるそうです。橋梁、道路、鉄道、空港、港湾、発電所といった社会インフラではそれだけ長期を設定しないと、投資の回収ができないということなんでしょうね。

ここで、プロジェクトファイナンスの定義を確認しておくと、当該プロジェクトによって構築される資産(道路など)を担保とした貸付で、返済金はその資産から上がるキャッシュフローのみによって賄われます。例えば、ある自治体Aが有料道路をすでに5本持っており、6本目の有料道路Bに対してプロジェクトファイナンスが組まれた時には、Aの返済金はBのキャッシュフローからのみ捻出すればよく、他の5本の有料道路の売上が非常に大きかったとしてもそれは切り離して考えてよい、ということになります。

自治体等のプロジェクト遂行主体は、すでに保有している社会インフラのことを捨象して、「これから作る資産」のみに考えを集中すればいいので、非常にラクだと言えるでしょう。一方で貸し手の側は、そのプロジェクトが将来的に生む収益について、リスクを負う格好になるため、事前の意志決定が大事になりますね。中長期にわたる予想収益をシミュレーションすることも当然行われるのでしょうし、その前提として経営環境に関するシナリオプランニングも不可欠になると思われます。
プロジェクトファイナンスではよくシンジケート(複数の金融機関による協調融資)が組まれますが、これはリスク緩和の定番手法ということなのでしょうね。

このプロジェクトファイナンスの世界で、RBSはトップの座にありました。同記事の一番下には、2008年における世界の銀行のプロジェクトファイナンス規模のランキングがあります(三井住友、三菱UFJ、みずほの名前も見えますね)。これを三菱UFJが買収することになるわけですね。日経記事によると、特にRBSは欧州、中東、アフリカに強みがあるそうで、この領域における三菱UFJの存在感が高まりそうです。

■インフラ投資のメリットとリスク

インフラ投資は上で見たように15年〜30年といったスパンで考えるので、長期にわたる投資が常態である投資主体、すなわち、年金基金のような投資主体に向いていると言うことができます。たまたまた見つけたJ.P. Morganが投資家向けにインフラ投資を解説しているページでも、目線は年金基金に向いていますね。

このページで驚いたのが、インフラ投資は、投資対象(アセットクラス)としては、かなり新しいタイプのものであり、オルタナティブ投資に属するものだということですね。オルタナティブ投資とは、現物株などの従来型の投資対象とは異なる、ヘッジファンド、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、ストラクチャードプロダクツ(仕組債など)などの新しいタイプの投資対象による運用を指します。
アセットクラスとしてインフラ投資(ここではインフラ関連公開株を除く)を見ると、株式市場などの市場動向の影響をほとんど受けないというメリットがあるわけですね。リーマンショックのようなことがあっても、資産価値はほとんど目減りしないという性格があるのかも知れません(とはいえ、世界経済そのものが減速している状況では、インフラ資産から上がる収益も減少するということはあるでしょうね)。

その他、このJ.P. Morganのインフラ投資の解説で気づいた点は、インフラは、その地域におけるほとんど独占的な事業であり、実質的に競合が入ってこれないため、収益源としては低リスクであるということです。言われてみればそうですね。
ただ、日本の成田空港や羽田空港を見ればわかるように、空港と言えども仁川(韓国)、チャンギ(シンガポール)、スワンナプーム(タイ)、浦東(中国)などとの世界的な競争にさらされることもあるわけで、あまり脳天気に低リスクを信じてもいけませんね。

■インフラ投資のリスク

J.P. Morganのインフラ投資解説ページで指摘されていたリスクを拾っておきます。2つのリスクがあります。1つは、投資対象としてはまだ歴史が浅いので、100年以上の変動を歴史的に振り返ることができる(英米の場合)株式などと違って、過去に起こった大きな損失から学ぶというわけには行かないことです。常にポジティブなリターンが得られるのかどうかについては、わからないと言うしかありません。
もう1つは、その国が規制を強めたり緩和したりした際に、建設されたインフラから上がる収益が大きく影響を受ける可能性があるということです。例えば、政権が変わった際に、有料道路がすべて無料になる、なんてことが起こりえます…。ということを同ページでは指摘しています。インフラ投資も決してノーリスクではないということは、念頭に置いておかなければなりません(経済がなおネットワーク化していくと、市場との相関も強まっていくかも知れません)。

次回は非常に有名なスマートシティ、アブダビのMasdar Cityの現況についてまとめます。

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