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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

[新春夢想] 発電ビジネスを組み合わせて入居コストを下げるスマートシティ

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Marcelgermain
Courtesy of MarcelGermain

昨日に引き続き、お正月ということで多少「夢」の要素が入ったお話を。

■スマートさのコストを誰が支払うのか

昨年は官民挙げてスマートシティへの注力が本格化しました。スマートグリッド関連技術に加えて、スマート家電、省エネが進んだエアコン、エコキュートなどの効率的な暖房、太陽光などの家庭における再生エネルギー発電、実用化が始まった家庭用蓄電池、プラグインハイブリッドや電気自動車などを組み合わせることで、住環境を丸ごとスマートにすることができます。

ただその一方で、「スマートさのコスト」を誰が支払うのかが気になります。現在のスマートシティはそのほとんどが実証実験やショーケース的なものですが、これが本格的に販売されるようになった場合、スマートさを実現するために必要な種々の新しいタイプの製品の購入費用、より正確に言えば、既存製品とスマート関連製品との差額、そして、それらを統合的に管理するシステム等にかかる費用を、誰かが支払わなければなりません。誰がそれを支払うのか?

エンドユーザーの消費者は、この「スマートさのコスト」に対して支払う用意ができているか?と言えば、まだ、そういう段階ではないと思います。世界的に見れば、スマートグリッドのスマートメーターのコストですら、エンドユーザーが払うというコンセンサスができていません。世帯当たり100万円を超えるようなコストを、消費者が支払うか?と言えば、まだまだというところでしょう。

では、スマートシティのデベロッパーが支払うのか?仮にデベロッパーが「スマートさのコスト」を請け合ったとしても、彼らもビジネスですから、そのコストを最終的には入居する消費者に転嫁していくはず。直接か間接かの違いはありますが、消費者が支払うということになれば、それを割高だとしてスマートシティへの入居を拒否するケースも出るでしょう。むしろその付加価値をよく理解して、あえてスマートシティへの入居を選択する消費者もいると思いますが、まだ少数派だと思います。

スマートシティ開発が公的なプロジェクトになっているとすれば、国や自治体が「スマートさのコスト」を税で負担するということも考えられます。しかしこの場合も、納税者に対する住民サービスは公平であるべきという原則に立てば、都市を丸ごとスマート化する場合はよいとしても、一部の区域だけをスマートシティ化した場合には、恩恵にあずかれない住民から不満が出ると思います。

こうした「スマートさのコスト」の問題を、それこそスマートに解決する必要があると思うのです。

■発電ビジネスで「スマートさのコスト」を負担する

スマートシティは、多くの場合、スマートグリッド的な要素、言い換えれば、マイクログリッド的な要素を含んでいます。マイクログリッドとは、誤解を恐れずに単純化して言えば、その区域内で電力の自給自足ができる環境です(もちろん例外はたくさんあります。詳細は、電気新聞ブックス「マイクログリッド」を参照)。すなわち、発電施設を自らの区域内に持ちます。

これを、自給自足の域を超えて、売電を可能にするものとして捉え直し、さらには、インフラ投資的な目線で、IPP(Independent Power Producer、卸電力事業)としても採算が合う程度にまでレベルを上げる…そういう発想で行ってみてはどうかと思うのです。そして、IPP事業で出た利益を「スマートさのコスト」の補填に使うという発想です。

これによって、エンドユーザー側のコスト負担をゼロにします。

さらに突き進んで、発電ビジネスが組み合わされたそのスマートシティに入居すれば、既存の土地に入居するよりも、入居費用が安くなるとか、中長期にわたって発電ビジネスから利益分配があるといった状況になれば、ものすごいことになります。「新春夢想」なので現実的な難しさをあえて捨象して書いております…。

■キャッシュを生む「インフラ」になればインフラファンドも投資する

IPP事業を組み入れたスマートシティでは、「何で」発電するかが非常に重要です。多くのスマートシティが持っている理念からすれば、再生可能エネルギー発電が一番妥当なのでしょうが、「スマートさのコスト」を支払ってあまりがある状況にするには、より発電単価の安いものが望まれます。ガスタービンなどの熱電併給がもっとも現実的な線ではないでしょうか。

日本の電機メーカーの技術力をもってすれば、数百世帯〜数千世帯のスマートシティのユニットに対して、最適化された発電規模、マイクログリッドのコントロール、各世帯に設置するスマート家電や冷暖房、さらには電気自動車の充電などを組み合わせた、最良の機器ポートフォリオができあがると思います。なお、再生可能エネルギーによらないオンサイト発電の余剰電力は、現状では電力会社に売電しにくいという状況がありますが、これもまた「新春夢想」ということでお許しください。

この目線で出てくるビジネスは、「売り切りの住宅」ではなく、IT業界で言うSaaS式の「House as a Service」としても可能性が出てきます。このスマートシティの住環境は、消費者が「購入する」ものではなく「サービス」として提供される。オンサイト発電があり、熱電併給がなされて、スマート家電なども一式が提供され、しかも入居してみると、年間の総経費では一般的な集合住宅や貸家などよりも安い。それらが包括的なサービスになっている…。そういうスマートシティになる可能性があります。

インフラ投資の観点で言うと、安定的にサービス料金を支払うエンドユーザーがいる「インフラ」は、中長期的なファイナンスを施して投資を行う投資対象となります。すなわち、このタイプのスマートシティは、海外のインフラファンドなどが投資をする可能性が出てくるということです。それはまた、このスマートシティの初期投資は、デベロッパーや機器メーカーが負担しなくても、彼らが負担してくれるということでもあります。

現実的なモデルを詰めてみてもいいかも知れませんね。

仮に、居住コストが低廉な、そしてサービスとして提供可能な「発電ビジネス付きスマートシティ」が千戸単位、一万戸単位のモジュールとして提供できるようになり、そこに対するインフラ投資も一種のパッケージにすることができれば、これはほんとにすごいことになります。

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