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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

アラブ国家ファンドの運用者もつらいよ(たぶん)

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Business Weekのサイトに行ってみたら、アラブ産油国の国家ファンド(SWF)を運用するファンドマネジャーの実像を紹介する「Who's Afraid of Mideast Money?」(中東マネーなんかこわくない)が掲出されていたので、ざっと読んでみました。非常におもしろかった。

少し抜書きすると…。

・アブダビ、ドバイ、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国が運用する資産は、世界全体のSWFの約半分にあたり、1.7兆ドルに上る。これは世界のヘッジファンドの総額に等しく、プライベートエクイティ界の運用総額1兆ドルを上回る。
・モルガンスタンレーによると、これら6カ国のSWF総額は向こう数年の間、毎年4,000億ドルずつ増加することが見込まれる。
・サウジアラビアは新たに5,000億ドル以上のファンドを設定する予定。
・これら6カ国は2007年に原油およびガスで3,150億ドルを得た。一方、ファンドから得た収益はその半分以上の1,800億ドル。
・Dubai International CapitalのファンドマネジャーAl Ansari氏は120億ドルのファンドを運用。ただし自己資金1ドルにつき4ドルをHSBC、Barclays、Royal Bank of Scotlandなどから借り入れて投資を行っている。(彼に近い人間によると相当なレバレッジを効かせているとのこと)
・2,130億ドルを運用するクウェート投資庁のファンドマネジャーAl Sa'ad氏は企業への投資にあたって、1)複数年にわたるロックアップ(保有株を売らないこと)に同意することもある、2)CEOに対して何か意見を言うことがあったとしても、それは外部の人たちを一切シャットアウトした場において、という方針を公言。

同誌によると、これほど短期間のうちにこれほど影響力の強い(資金量の多い)投資主体が出現するのは、あまり例がないとのことです。最近の原油高で、運用しなければいけない資金が急激に増えたということなんでしょうね。

これらの国々のファンドマネジャーは米国の投資銀行などのように、運用成績に応じた高額の報酬を得ているわけではないそうです。へーという感じ。ただ、その水準の低さがわざわいして欧米の人材が寄ってこないという状況があり、人材難だそうです。

これまでは、比較的マイナーな出資比率に留まる控えめな投資が主流だったものが、最近では企業買収やプライベートエクイティにも積極的に乗り出しています。ただし、彼ら自身が企業経営の経験があるわけではないため、そうした丸ごと買う方式の投資の成果は未知数。

資金量が潤沢であるため、めちゃめちゃ高いパフォーマンスを上げられということはまったくないようで(当たり前ですね)、年率15%~20%程度だそうです。一部のファンドは実は収支トントンなのではないかという事情通の指摘も書かれていたりします。

運用は運用ですからね。誰かが特別に強いということはないんだと思います。

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