お金のなる木 Tacit Interactions
McKinsey Quarterlyは時々、非常に刺激的なものの見方を提供することがあり、それとなくチェックしておくとよいかと思います。紙版は印刷物としての出来が非常によく、入手できれば最高ですが、オンラインでも読めます。ただ一部の記事は有料。無料購読者にも記事のアップデートをメールで知らせてくれるサービスがあります。
最近、私が詰めている部門で話題になったのが以下の2本の記事。
The next revolution in interactions
Competitive advantage from better interactions
次のようなことを言っています。
・過去、企業はリエンジニアリング、自動化、アウトソーシングによって労働生産性向上に取り組んできたが、これが長きにわたってその企業の競争力を維持するかと言うと、そんなことはない。競合企業も同じ方策を模倣してキャッチアップにかかるから。
・企業活動は広義のサービスに重心が移っている。高い付加価値を生んでいるのは、課題を解決する方法を見つけ出し、プロセスに落とし込む職務であって、プロセスそのものを処理する職務の(経営者から見た)重要性は低い。
・課題解決は、顧客、取引先、他部門などと密な関係を持ちながら、非常に複雑かつインタラクティブな作業を行うことが必要となる。
・一般的に、このような課題解決型の職務を行う従業員に支払われるサラリーは高い。
・例を挙げれば管理職、営業担当者、看護婦などがそういう職務を行っている。(そのほか、コンサルタント、SE、プロジェクトマネジャー、設計者、チームで治療に携わる医師、行政の政策立案担当者、などなどいっぱいありますね)
・彼らの職務は、暗黙知に基づく(ということは本記事では言っていませんが、後掲のtacitが出てくるので今泉が補足)、非定型の、別な主体とのやりとりを伴うものである。これをTacit Interactionsと名づける(今泉注。Tacit InteractionsというのはMcKinsey Quarterly記事筆者の造語です。関連の経営学などで使われているものではありません)
・Tacit Interactionsは、生産性向上という観点で見て、未開の原野である。高給与の従業員が行う職務だということもあり、ここで生産性向上を達成することができれば、企業収益に与える影響はかなり大きい。(今泉注。顧客に対応する部分でもあることから、利益上乗せ効果も期待されます)
・また、Tacit Interactionsにおいて行われる生産性向上は、過去のリエンジやアウトソーシングとは異なり、容易に競合企業が真似できるようなものではない。本質的にコピーできないという特性を持つ。
・ただ、Tacit Interactionsの生産性を向上させるためのノウハウは、現在のところ明確化されていない。既存のリエンジニアリングや自動化のノウハウが適用できないのは明らか。新しいものが出てくるまで待つしかない。
ということで、未開の原野だそうです。業種によっては、昔、ERPを導入して得られたのに匹敵するような、計量可能な効果が出るのではないかと思います。
私見ですが、ここで言うTacit Interactionsの生産性を上げるには、組織内の「個」に着目していてはダメで、ある部門、企業内カンパニーといった、組織のサブセグメントを単位として取り扱うこととし、そこへのインプット(課題)が何であるか、アウトプット(何らかの課題解決を伴う付加価値の付いた何か)が何であるかを明確に定義して、インプットがアウトプットに変わるメカニズムを可視化しなければなりません。その上で一種の診断を行い、改善方策を、何らかのITを使う個別具体的なアプリケーションとして実装することが必要になります。
まずは可視化するところから始めるのが順当です。そのへんに使えるツールとして注目されるのが、現在では、オープンソース版も入手できるSocial Network Analysisのアプリケーションです。
モデルとなってくれる組織が3種類ほど得られ、2人で1年間、いろいろ試行錯誤とカスタマイズを施すと、なんとか使えるものができてくるのではないかと思っています。どこぞの企業様。リソースの割当を。