【スパイ防止法】アメリカの「スパイ防止法」から日本が学ぶべきこと Espionage Act of 1917
高市早苗新首相がいわゆる「スパイ防止法」の制定に動いていると報道されています。個人的には大賛成です。日本は米国進駐軍が制定主体となった憲法によって戦争放棄を誓った訳ですが、その反面、国の防衛という意味ではタガが外れた状態が終戦以来続いています。中曽根元首相がスパイ防止法制定に動いた際の「日本はスパイ天国である」という発言が、今でも真実である状況があります。
中華人民共和国の人民解放軍は軍備増強を重ねてきており、先日の建国70周年記念軍事パレードで練り歩いた最新兵器のレベルを見ても、準戦時と言える状態で準備を進めていると言っても過言ではありません。以下の報告書で記されている
第I部:中国人民解放軍(PLA)の主要システムに関する優先的脅威評価
の最新鋭兵器の性能をご確認下さい。日本が相手となれば自衛隊の防御が一溜りもなく破れ去るようなレベル感です。
調査報告書:人民解放軍の建国70周年記念軍事パレードにおける能力展示と地域安全保障への戦略的影響に関する分析(noteにて公開中)
(なお本調査報告書は、YouTubeで公開されている中国人民解放軍の建国70周年記念パレード動画をGoogle Gemini Proに視聴させ、兵器を特定し、中国国内で公開されている中国語資料を参照して細部を補強し、記述したものです。純然たる公開情報が情報源である調査報告書であることをお断りしておきます。)
また人民解放軍トップには「超限戦」の考え方があり、文化戦略やメディア戦略をも併せたハイブリッド戦略を当たり前のこととして思考する土壌があります。この超限戦の考え方をベースにすれば、日本で中国の訓練を受けたスパイが相当数"自由"に諜報活動等を行っているであろうことはほぼ確実です。しかしこれを取り締まる法制度が日本には欠落しています。
今ここで大いに議論を戦わせて、日本の国防のために不可欠であるスパイ防止法を制定すべきだと考えます。
このシリーズでは、日本の国会議員の参考に資するべく、またこの議論を報道する報道機関にも参考にしていただけるように、世界各国のスパイ防止法の概要をまずまとめます。各国1本ずつ。その後、必要があるようでしたら、各国のスパイ防止法の条項のうち、特に日本に関して参考になる点を掘り下げます。法の運用形態についても日本にとって意味があるようなら詳述します。
なお、本シリーズもまた、海外市場調査屋であった私が日々の知的生産活動でフルに活用しているChatGPT 5を用いた海外情報収集とまとめであることをお断りしておきます。また、私も食べていく必要があることから、末尾でセミナーの広告を掲出することもお断りしておきます。
アメリカ「スパイ防止法」から日本が学ぶべきこと
──自由社会が100年かけて模索した"国家機密と報道のバランス"
第1章 100年以上続く「国家安全と自由のせめぎ合い」
アメリカのスパイ防止法、Espionage Act of 1917 は第一次世界大戦の開戦直後、国家防衛情報の漏洩を防ぐ目的で制定された。
当初は、ドイツへの諜報活動や徴兵忌避運動を取り締まるための緊急立法だったが、のちの100年間で、国家と国民の自由のバランスをめぐる議論を生み続けてきた。
この法律は単なる「スパイ摘発法」ではない。
"国家が何を秘密にできるか"、そして"報道がどこまで真実を伝えてよいか"という、民主主義の根幹に関わる問いを抱えている。
日本でスパイ防止法が議論される今、最も学ぶべきはこの「バランス感覚」だ。
法をつくること自体よりも、どのように運用するかを定義することのほうが重要なのである。
第2章 法律の骨格:曖昧な「国家防衛情報」という概念
Espionage Actの特徴は、対象が非常に広いことにある。
国家防衛情報(National Defense Information)を「無断で取得・保持・転送した者」を処罰できる。
しかし、「国家防衛情報」という言葉には明確な定義がない。
そのため、軍事スパイだけでなく、報道機関や内部告発者まで巻き込む運用が可能になった。
戦時中はこの曖昧さが「安全保障」を守った。
だが平時には、政府にとって都合の悪い情報を隠す根拠にもなり得た。
日本の議員が学ぶべき点
法文を曖昧にすればするほど、恣意的運用の余地が広がる。
「軍事情報」「経済安全保障情報」「外交機密」など、情報の分類と線引きを法の中で明確にすべき。
第3章 象徴的な3つの事件:告発者か、反逆者か
① ローゼンバーグ夫妻事件(1951年)
原子爆弾の機密をソ連に渡したとして逮捕。
民間人として初めて死刑となった夫婦であり、冷戦期の恐怖を象徴する事件。
後に一部情報は真実だったが、司法手続きの公平性が疑問視された。
② ダニエル・エルズバーグ事件(1971年)
ベトナム戦争の極秘報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)を報道機関にリーク。
政府の虚偽説明を暴いた英雄とも、国家機密を漏らした反逆者ともされた。
最高裁は報道の自由を支持し、「政府が不都合な真実を理由に検閲してはならない」と判示。
③ エドワード・スノーデン事件(2013年)
NSA(国家安全保障局)の極秘監視プログラムを暴露。
全世界での個人通信監視を明らかにし、現在もロシアに亡命中。
国家安全保障とプライバシーの境界を問い直した。
日本の議員が学ぶべき点
「裏切り者」と「内部告発者」を同一視すれば、健全な行政監視が失われる。
告発者保護法との整合を取り、国家の透明性を確保すべき。
第4章 デジタル・AI時代への教訓
近年、米国ではこの法律がAI開発・クラウド・サイバー防衛の文脈で再び注目されている。
防衛関連のAI学習データが国外クラウドで扱われる場合、それ自体が「国家防衛情報」の流出とみなされる可能性がある。
情報漏洩の主戦場は、もはや書類やUSBではなくデータモデルである。
AIモデルに含まれる知識・機密・訓練データが「国家の資産」として保護対象になる時代が来ている。
日本の議員が学ぶべき点
スパイ防止法は、物理的漏洩よりもデータ経路・クラウド越境管理が核心となる。
経済安全保障の観点から、民間企業のAI・クラウド活用に明確なガイドラインを設ける必要がある。
結語:国家を守る法律は、国民の信頼を守ってこそ強くなる
アメリカのスパイ防止法は、100年を超える歴史の中で、
「国家の安全を守る法律は、同時に民主主義の強さを試す法律である」
という現実を示してきた。
日本がこれからスパイ防止法を制定するなら、
敵を恐れるよりも、法律の運用が国民の自由を脅かすリスクを先に見ておくべきだ。
国家を守る法律は、国民の信頼を守ってこそ強くなる。
その原則を忘れないことが、アメリカの100年の経験から得られる最大の教訓である。
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【内容】
調査の切り口に着目した分類
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◆例題:国内半導体製造装置メーカーの競合として、米国アプライドマテリアルズの過去5年の動きを知る
◆例題:米国株式市場の昨日の動きを知る
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◆例題:マレーシアにおける非アルコール飲料の市場
◆例題:英国におけるコールドチェーンの現況
D.制度 EU規制の個別制度調査
◆例題:EU AI法は現在どうなっているか?
◆例題:ガソリンエンジン車を2035年までに全廃するEU規制の大枠を知る
E.個別の企業に関する調査、自社にとっての競合
◆例題:欧州の民生用健康機器市場、主なプレイヤー
◆例題:米国の木造住宅建設の主なプレイヤー
F.潜在提携先及びM&A候補
◆例題:ドイツのロボティクス企業のうちM&A対象になる企業をスクリーニング
◆例題:欧州の半導体製造装置会社のうちM&A対象になりうる技術を特定した上で、その企業の買収金額を試算
G.海外進出準備、海外の工業団地
◆例題:インドの工業団地進出、インド政府の生産連動型優遇策(PLI)政策の概要を知る
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