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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

【AI活用海外市場調査】マレーシアにおけるユニリーバ/ロレアル/ネスレのハラル展開

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AIを活用した海外市場調査の一例として、この投稿を作成しています。私の場合、ChatGPT 5の有料版を主に使用しています。無料版と生成された報告内容を比較すると、解像度に雲泥の違いがあります。少なくとも業務用途で利用する際には、必ず有料版(PlusかPro)を使うべきでしょう。

Geminiの場合も有料版のGemini Proでないと業務には使えないと考えるべきです。

無料版を少し操作しただけで「このAIは使えない」と判断するのは、アメリカ合衆国の国力を判断するのに、数時間だけNYタイムズスクエアをうろうろして判断するようなもの。アメリカ合衆国の底力を舐めてかかっています。

シリコンバレーの天才達が組み上げているLLMを舐めては行けません。優れた知的生産物を引き出すことができないのは、

第一に、ChatGPT 5が学習した文献等の「量」と「質」を知らなさすぎる(適切な問いを立ててやれば、彼が学習した内容の概要を語ってくれます)、

第二に、ChatGPT 5がRAG技術によってニアリアルタイムで取得してくることができる資料、情報等の「量」と「質」を知らなさすぎる、

ことから来ています。つまりは使用経験が圧倒的に不足しているのです。

それとITプロダクトにおける「シリコンバレークォリティ」を知らない...ということも相まっています。これには「英語の壁」もネガティブに働いています。筆者はシリコンバレーに本社がある、世界市場で勝負をかけている企業で働いたことがあるので、シリコンバレーに本社があり世界市場でシェア一位を取っている企業が持つ「技術の凄み」をある程度はわかっています。GoogleもOpenAIもそうしたシリコンバレークォリティの賜物です。(Microsoftはワシントン州シアトル、Amazonもワシントン州シアトルが本社なのでシリコンバレー云々は使えません)

(シリコンバレーには優れたテック技術者集団<インド、中国からも天才級が集まっています>、ドットコムバブルを生き残ってきたテック企業群、マーク・アンドリーセンが代表を務めるアンドリーセン・ホロビッツに代表されるVCコミュニティ...これらが合わさった世界ダントツのテクノロジー製品を生み出すことができる層の分厚さがあります。これは日本にいては到底想像できないものです。筆者は毎日のようにChatGPT 5を使って知的生産物を生み出しながら、常にそうしたシリコンバレークォリティの質の高さに驚嘆しています。)

これからAIを駆使して自分のキャリアを作っていく諸君は、「日本の古い常識」に惑わされることなく、どしどしChatGPT 5(有料版)なりGemini(有料版)なりを使って、最新のAIがもたらす、過去には考えられなかったような知的処理の恩恵をフルに浴びて生きるべきです。

ケーススタディ:マレーシアにおけるユニリーバ/ロレアル/ネスレのハラル展開

はじめに

日本企業がマレーシア等のアジア・イスラム諸国に参入する際の基礎資料として、旧イギリス植民地であるため英語資料が比較的充実しているマレーシアに関して、ベンチマークとして欧米著名企業のハラル対応を調べる。具体的には、ユニリーバ、ロレアル、ネスレを例に、公式認証状況・製品ライン・戦略・消費者受容・競合比較を整理する。

(今泉注:同じ調査をインドネシアで行うと、インドネシア語を読解できる専門家の絶対数が少ないということと、インドネシア政府関連資料等がインターネットで公開される量は少ないということがあるため、調査費用がマレーシアの3〜4倍かかります。基礎調査ということであれば英語が使えるマレーシアで簡単に済ませるのが賢明です。

なお以上はChatGPT出現前の話。ChatGPT 5が使える現在、インドネシア語でもネットに資料がある限りほぼ確実にリーチできるため、トライしてみる価値はあります。ChatGPT 5に言語の壁はありません。

付言するとマレーシア政府の方がインドネシア政府よりも外国企業に対してオフィシャルなハラル対応の便宜を図っているのは間違いないです。過去にインドネシア政府のインフラ案件の調査を行った際にインドネシアの関連省庁等を回りましたが、ややおっとりしている気風が見受けられました。一事が万事ということはあります。)

1. 公式認証状況・ハラル対応の公的確証

企業 マレーシアでの取組 認証の範囲・特徴
ユニリーバ(Malaysia) 複数の製品で JAKIM 認証あり。例:KNORR ソース、シーズニング、スープミックスなどの製品リストが JAKIM データベースに掲載。 Salaam Market 製品単位での認証。証明書番号 JAKIM.700-2/3/1 008-03/2004 等。 Salaam Market
ネスレ(Malaysia) ネスレ・マレーシアは「すべての食品・飲料製品を JAKIM 認証付きで製造・輸入・流通」する方針を掲げている。 Nestlé Malaysia 製造・輸入・流通すべてを JAKIM 認証対象とし、マレーシア拠点を「グループ内ハラルエクセレンス拠点」に位置づけ。 Nestlé Malaysia
ロレアル(L'Oréal) 公開情報はやや限定的。市場レポートで「ロレアルは原材料のハラル認証を取得している」という記述あり。 Coherent Market Insights 製品成分・原材料レベルでのハラル対応を進めている可能性。ただし、JAKIM 認証済の商品リストそのものは確認できていない。

補足・論点

  • ユニリーバは「食品・日用品/ホームケア等」の事業範囲が広いため、ハラル対応は製品別に分かれている。

  • ネスレはマレーシアにおけるハラルをグループ全体への「基準モデル」「ハラルセンター」化しており、JAKIM 認証を徹底。

  • ロレアルについては公開性が低いため、現地の認証データベース(JAKIM「Verify Halal」等)で具体的な SKU/証明書を追う必要あり。

2. 製品ライン・カテゴリー展開

ネスレ(Malaysia)

  • 食品・飲料分野が中心。ネスレ・マレーシアは 500 以上のハラル製品を扱っていると明言。 Nestlé Malaysia

  • 製造拠点から輸入品すべてに JAKIM 認証を義務付け、現地拠点を「ハラルエクセレンスセンター」と位置づけ。 Nestlé Malaysia

  • 製品例:Milo、Nescafé、Maggi、KitKat などの輸出・国内流通製品が含まれる。 eprints.usm.my

ユニリーバ(Malaysia)

  • 食品/調味料の分野でハラル認証製品ラインあり:Knorr シリーズ(ソース、スープ、シーズニング等)など。 Salaam Market

  • アイスクリームブランド「Wall's」などについてもハラル対応を表明。 adlifikir.blogspot.com

  • 日用品・化粧品分野も、ユニリーバ自身のポジション文書では、ムスリム消費者のハラル要求に応える意向を表明。 Unilever

ロレアル(L'Oréal)

  • 市場レポートに「ロレアルは成分レベルでハラル認証を取得している」という言及。 Coherent Market Insights

  • ただし、どのブランドや SKU がマレーシアで JAKIM 認証を持っているかの公開情報は探せず。

3. 戦略・メッセージ

  • ユニリーバは公式文書で「ムスリム消費者の選好を尊重し、現地規制・慣習に合わせてハラル製品を提供する」と明記。

  • ネスレは、マレーシア拠点をグループ内の「ハラルセンター・オブ・エクセレンス」として位置づけ、国内外への輸出拠点として機能。

  • ロレアルに関しては、ハラル製品への言及がレポート文脈で散見されるが、戦略発表としては見つかっていない(さらに調査が必要)。

4. 消費者動向・受容性

  • ECサイト・レビューを直接調べてはいないが、ネスレ・ユニリーバ製ハラル製品は、消費者から「信頼/安心感」の評価を受ける可能性が高い(「JAKIM 認証」ブランド重視傾向あり)。

  • 「ハラル承認済」「JAKIM ロゴ付き」が購買決定要因となる消費者層が強いことは、マレーシア市場共通認識。

  • ユニリーバの「Wall's アイスクリーム」は、国内・輸入製品共に JAKIM 認証を取っていると表明しており、信頼性強化を図っている。 adlifikir.blogspot.com

5. 競合比較(ローカル vs 外資)

  • ローカルブランド(例:Safi など、マレーシア発ハラル化粧品ブランド)と外資系(Unilever、Nestlé、L'Oréal)との間で、認証信頼性・ブランド展開力・流通ネットワークで差が出る。

  • 外資は「認証の信頼性」「グローバル基準/スケール力」を武器にする一方、ローカルは現地ニーズへの柔軟性で強みを持つ。

  • ネスレやユニリーバは、ハラル認証を徹底することで、ローカルブランドに対して"信頼の優位性"を築きやすい。

6. 示唆・注意点

  1. 認証の徹底性が鍵
     公開されている製品名・証明書を丁寧に追い、認証対象範囲(製造・輸入・流通)を明らかにしないと、認証"看板だけ"のリスクあり。

  2. 成分レベル・原材料の供給チェーン管理
     化粧品・個人ケア製品では、微量成分(アルコール、動物由来原料等)の許容/排除が認証可否を左右。

  3. ローカル認証機関の相互承認可否に注意
     たとえば JAKIM が他国認証をどう扱うか、認証の互換性が展開戦略を左右する。

  4. ブランド信頼 vs コスト負担のバランス
     ハラル対応には追加検査・工程分離・監査コストがかかるため、価格設定や利益率調整が必要。

  5. 情報公開の限界・ギャップを想定
     ロレアルのように公開情報が乏しいケースあり。現地調査・認証DBクロール・インタビュー調査が補完要。


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AI を活用した海外市場調査と情報収集ノウハウ

〜ニッチ市場から規制・地政学リスクまでを迅速に把握する最新手法〜

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講師:株式会社インフラコモンズ 代表取締役 今泉 大輔

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開催日:2025年11月 5日(水) 10:00~11:30 

受講料:1名につき 27,500円(税込)

申込と詳細はSSKセミナーのページをご参照下さい。

https://www.ssk21.co.jp/S0000103.php?gpage=25519

講義内容

企業が海外事業を展開するうえで、信頼性の高い市場調査や規制情報の把握は欠かせません。しかし、従来の有料データベースや専門調査会社への依存はコスト・時間の両面で大きな負担となってきました。

本セミナーでは、生成AI を用いた新しい海外市場調査のアプローチを紹介します。具体的には、ニッチ市場の流通構造の把握、金融レポートや調査資料の要点抽出、現地語による情報収集と翻訳要約、M&A候補企業や投資動向の探索、EU 規制の要点整理、業界や国ごとのトレンドモニタリング、さらに防衛・地政学リスクの動向把握など、多岐にわたるユースケースを取り上げます。

各テーマごとに情報源の選定、生成AI を活用した効率的な調査手順、出典確認の方法を具体的に解説し、参加者は終了後すぐに自らの業務へ応用できる知見を得ることができます。経営企画・海外事業・新規事業・調査部門など、日常的に海外情報を扱う方に最適の内容です。

1.イントロダクション

 ・海外市場調査における生成AI 活用の可能性

 ・無料版ChatGPT・Gemini の特徴と制約

2.ユースケース別の活用法

 ・ニッチ市場調査(インドの豆腐流通状況)

 ・海外金融市場レポートの調査(ドイツ証取の自動車セクター値動き)

 ・現地語による情報収集と翻訳要約(台湾華語によるTSMC 給与水準)

 ・M&A 候補企業の探索(ドイツのロボティクス企業買収候補)

 ・EU 規制の要点把握(EU サイバーレジリエンス法の概要)

 ・各国・各業界の動向トラッキング(特定国特定業界の情報収集)

 ・防衛・戦争リスクに関する情報収集(例:ドローン戦術米中比較)

3.まとめと留意点

 ・情報の信頼性・出典確認の重要性

 ・無料版AI でできること/できないこと

 ・実務への応用と今後の展望

4.質疑応答


従来、調査会社に発注すると100万円〜500万円かかっていた海外市場調査を、必要な時に、必要とする人が、直接手を動かして調査する事ができるようになるノウハウを伝授します。

調査のコスト削減ができる意味も大きいですが、業務の現場で必要が出てきた都度、フレッシュな海外情報を手元に入手できること。また、追加の情報ニーズがあればそれもすぐに入手できるという俊敏性が、過去には得られなかったものです。

これにより海外事業に関する意思決定が飛躍的に精度の高いものになります。

ふるってご参加下さい。

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