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中国を代表するUBTECH Walkerシリーズをロボット工学的に読み解く

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中国・深圳に本拠を置くUBTECH Roboticsは、ヒューマノイドロボットの開発に注力しており、特にWalkerシリーズは家庭用から産業用まで幅広い用途に対応しています。本記事では、Walker、Walker X、Walker S1の各モデルについて、ロボット工学的な観点から解説します。


Walker:家庭用ヒューマノイドの基礎

  • 身長約145cm

  • 重量約77kg

  • 自由度36(脚部:6×2、腕部:7×2、手:4×2、首:2)

  • 駆動方式フレームレストルクモーターと精密ハーモニック減速機の統合駆動ユニット

  • バッテリーリチウム鉄リン酸バッテリー(54.6V/10Ah)、充電時間約2時間、稼働時間約2時間

  • 通信Wi-Fi(802.11 a/b/g/n、2.4GHz/5GHz)、Ethernet(RJ45)、EtherCAT(高速リアルタイムバス)

  • OSUbuntu + Linux RT Preempt + ROS + Android

  • エミュレーションプラットフォームURDF + Gazebo ubtrobot.com

Walkerは、家庭やオフィスでのサービス提供を目的とした二足歩行のヒューマノイドロボットであり、基本的な移動や物体操作、音声対話などの機能を備えています。


Walker X:機能強化と柔軟性の向上

Walker Xは、Walkerの進化版であり、以下のような特徴を持っています:

  • 運動性能の向上身長を低くし、重量を軽減することで安定性と柔軟性を向上。最大歩行速度は3km/hに達し、外部からの衝撃にも耐えるバランス能力を備えています。

  • 手の機能強化7自由度の腕と6自由度の手を採用し、各指には力覚センサーを搭載。操作速度は40%向上し、作業空間も50%拡大されています。

  • 視覚システムの強化四眼システムとデュアルRGB-Dセンサーを搭載し、物体の識別や操作能力が向上。冷蔵庫やコーヒーメーカー、掃除機などの家電を自律的に操作可能です。

  • モジュール化設計頭部、手、バッテリーは迅速に取り外し・交換が可能で、メンテナンス性と量産性が向上しています。

  • ナビゲーションと障害物回避多眼視覚センサーを用いた3D立体視定位システムを搭載し、ARナビゲーションや2.5D障害物回避、動的環境下での最適経路の自律ナビゲーションが可能です。

これらの機能強化により、Walker Xは家庭内での複雑な作業やサービス提供において、より高度な対応が可能となっています。


Walker S1:産業用途への適応

Walker S1は、産業用途を想定したモデルで、以下のような特徴を持っています:

  • 高度な知覚と反応能力多モーダルプランニング大規模モデル、セマンティックVSLAM、学習型運動制御などの具身知能技術を搭載し、産業現場での汎用的なタスクに対応可能です。

  • 産業現場での実績Audi-FAWの新エネルギー車工場で、空調システムの漏れ検査などの品質検査業務に従事しており、視覚認識速度は70ミリ秒以下、ミリメートルレベルの精度を実現しています。

  • 耐荷重性能最大15kgの荷物を運搬可能で、バランスを崩すことなく作業を継続できます。

  • 全天候型運用24時間稼働が可能で、軍用グレードの構造安定性を備えています。

Walker S1は、製造業や物流業界における人手不足の解消や作業効率の向上に貢献することが期待されています。


まとめ

UBTECHのWalkerシリーズは、家庭やオフィスでのサービス提供を目的としたWalkerから、産業用途に特化したWalker S1まで、多様なモデル展開をしています。これらのロボットは、高度な運動制御、知覚能力、AI統合により、さまざまな環境での自律的な作業が可能です。今後、日本国内での導入や応用が期待される分野として、製造業や物流、サービス業などが挙げられます。

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