ゆくゆくアメリカ市場向けiPhone最新機種は全量インドで生産されることがわかった
上の画像は本調査報告書のカバー画像にするためにMidjourneyで生成したもの。カルナータカ州ないしタミルナドゥ州のiPhone工場の場面を描写した。
Apple iPhoneのインド生産移管が発表されました。
Wired: アップル、米国向けiPhone生産をインド移管か。立ちはだかる課題とは(2025/4/30)
調べてみると、iPhoneのインドにおける生産は数年前から着々と始まっており、現在では中国のFoxconn(鴻海精密工業)による生産量の2割程度はインドで賄えるようになっているようです。詳細は本報告書の内容をご覧下さい。
トランプ関税によって突然インド生産移管が始まったという訳ではないことがご理解いただけます。
iPhoneのインド生産が根付いてきた過程には、インド政府が戦略的に設定した「生産連動型インセンティブ(PLI)スキーム」という、インド国内で製造する事業者に対する優遇政策がかなり大きな役割を果たしています。その間の事情も以下の報告書で述べられています。
最終的に、米国に出荷されるiPhoneの最新モデルは全てインドで生産されるという、Appleの戦略が透けて見える形です。これには中国の人件費がもはや世界的には安くもなんともないという事情が深く関係しています。
この周辺を調べたnote版の調査報告書を公開しました。有料です。報告内容の価値からすればお安いかと思っております。
Apple iPhoneインド生産移管のキープレイヤー台湾・インドのEMS。インド政府の戦略的支援。日本各社の動き【1万2千字調査報告書】
目次
第一部 Apple iPhoneインド生産移管のキープレイヤー台湾・インドのEMS。インド政府の戦略的支援。日本各社の動き
1-1. 概要:インドで拡大するAppleの生産拠点
1-2. インド国内サプライヤー(部品製造・供給企業)の台頭
1-3. iPhone組立(アセンブリ)企業とその最新動向
1-4. 新規投資・工場建設・拡張計画の動向
1-5. インド政府の支援策とAppleサプライヤーへの影響
1-6. 日本企業への示唆・関連動向
1-7. おわりに
第二部 台湾華語調査による鴻海精密工業(Foxconn)の全体像と今後の方向性【要約】
2-1. エグゼクティブサマリー
2-2. 企業プロフィールと発展の軌跡
2.1 創業からグローバルリーダーへ
2.2 グローバルネットワークと規模
2.3 企業理念とESG
2-3. 財務実績と状況
3.1 主要財務指標
3.2 近年の業績動向
2-4. リーダーシップとガバナンス
4.1 取締役会とガバナンス体制
4.2 経営陣
2-5. 主要事業セグメントと市場での地位
5.1 EMSにおける支配的地位
5.2 主要製品カテゴリー
5.3 主要顧客
2-6. 戦略的変革:「3+3」イニシアティブ
6.1 戦略概要
6.2 新興産業への取り組み
6.2.1 電気自動車(EV)
6.2.2 デジタルヘルス
6.2.3 ロボット
6.3 コア技術の進化
6.3.1 AI
6.3.2 半導体
6.3.3 次世代通信
2-7. 研究開発とイノベーション
7.1 鴻海研究院(HHRI)
7.2 主要な研究開発成果
2-8. サプライチェーン管理とESG
8.1 サプライヤー管理
8.2 環境方針
8.3 社会的責任
2-9. 競争環境と市場ダイナミクス
9.1 主要競合
9.2 市場シェア
9.3 強みと弱み
2-10. リスク評価と緩和戦略
10.1 地政学的リスク
10.2 サプライチェーン強靭化
10.3 技術変化リスク
10.4 労働問題・風評リスク
2-11. 将来展望と戦略的提言
11.1 成長ドライバー
11.2 市場機会
11.3 戦略的必須事項
2-12. 結論
第三部 台湾華語調査によるPegatron(和碩聯合科技)の全体像【要約】
3-1. 会社概要・沿革
3-2. 経営理念・ビジョン
3-3. 主要事業・競争力
3-4. 製品・サービス
3-5. グローバル展開
3-6. 財務実績
3-7. 技術革新・研究開発
3-8. 最近の動向・市場展望
3-9. 結論
第四部 台湾華語調査による台湾ODM大手 Wistron Corporation(緯創資通)の全体像【要約】
4-1. 会社概要・沿革
4-2. 組織体制・事業内容
2.1 組織とリーダーシップ
2.2 主要事業セグメント
2.3 主要子会社
4-3. 製造能力・技術
3.1 グローバル生産拠点
3.2 製造技術
3.3 生産効率
4-4. グローバル展開・サプライチェーン
4-5. 財務実績
4-6. 技術革新・研究開発
4-7. 戦略的パートナーシップ
4-8. 市場での地位・競争環境
4-9. 持続可能性・CSR
4-10. 日本の製造業関係者への示唆
まとめ
この報告書のさわりがわかるポッドキャストもNotebookLMで生成してYouTubeに上げました。
YouTube: Apple iPhone最新機種をインドで製造する動きが始まった!
この調査報告書を仕上げる過程で見つかったインド経済紙が報じている村田製作所のインド進出の動き。
iPhone parts maker Murata eyes supply chain shifts toward India
以下はその要約。
村田製作所、インドへの供給網シフトを検討
京都に本社を置く電子部品大手の村田製作所は、iPhoneを含むスマートフォン向けの積層セラミックコンデンサ(MLCC)などの主要部品を製造しています。同社は、世界的なサプライチェーンの再編成の一環として、生産拠点の一部をインドに移すことを検討しています。tettiblog
村田製作所の中島規巨社長によれば、現在、最新のコンデンサは主に日本で製造されていますが、顧客からは事業継続計画(BCP)の観点から海外生産の要望が高まっているとのことです。
同社は、インド南部タミル・ナードゥ州のOneHubチェンナイ工業団地に工場を賃貸し、2026年4月から始まる会計年度にセラミックコンデンサのパッケージングと出荷を行う計画です。
中島社長は、「インドで統合生産施設を建設するには、電力などのインフラがまだ十分ではないが、顧客の生産シフトに対応するため、早期に一部の生産能力を確保したい」と述べています。
現在、村田製作所はMLCC(積層セラミックコンデンサ)の約60%を日本で生産していますが、今後数年間でその割合は50%程度に低下すると予想されています。ETRetail.com
Appleは中国以外での生産を多様化しており、最近ではAirPodsの試験生産をインドで開始しました。多くの中国の中価格帯スマートフォンメーカーも、豊富な労働力と急増する消費支出に引かれて、インドに工場を開設することが期待されています。
村田製作所は、インドでの長期的な需要を見極めるため、5年間で10億円(約660万ドル)のリース契約を活用しています。
同社は、AIエンジンを運用するサーバー向けの需要が急速に成長すると予想しており、これがMLCCの販売を後押しすると見込んでいます。電波新聞デジタル
村田製作所は、2024年度の世界のスマートフォン生産が前年比3%増の11億8000万台に達すると予測しています。
Bloomberg Intelligenceのアナリストによれば、AIや電気自動車向けの先進的なチップの機能を支えるMLCCの販売は、半導体市場とともに成長する可能性があり、村田製作所の長期的な利益を大幅に押し上げる可能性があります。
村田製作所やTDKがiPhoneインド生産に向けた動きを開始しています。そのほかのiPhoneサプライヤーもこれからインド進出を本格化するものと思われます。
Appleの方針として、また主要EMS 4社の方針として、できるだけ部品を現地で調達するということがあります。現地のサプライヤー状況の細かな調査については、私の会社インフラコモンズでご対応をいたします。お問い合わせはこちらからどうぞ。