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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

世界最大のEV工場 - BYDが安価で高品質のEVを大量生産できるのはなぜか?中国語で調べた調査報告

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インフラコモンズ代表の今泉大輔です。

noteでBYDに関する調査報告書を2週間の予定で公開しました。価格は7,000円です。

中国語情報で調査: BYD 「安価と高品質」を両立させた「部品内製化」「現地調達」「世界最大鄭州EV工場」「最先端深圳スマートファクトリー」(1万4千字)

2週間後からは紙版の調査報告書として刊行し、2万円程度の価格で販売する予定です。注文窓口は弊社ウェブサイトとなります。

この調査報告書は日本人がアクセスしにくい中国語の情報源を中心に調べており、日本の自動車業界人の方々がほとんど知らない内容に満ちています。

BYDが「いかに巨大なEV工場(鄭州工場)を持っているか?」

「いかに優れた製造の仕組みを確立しているか?」

「安くて品質の良いEVを大量生産できるのはなぜか?」

がわかる内容となっています。ぜひ、ご活用下さい!

なお、本投稿のタイトルに「300万円超の価値」とあるのは、中国語で調査ができる海外市場調査会社に発注すると、少なく見積もっても300万円以上になる内容であるからです。(そういう現場に数年いましたので肌感覚でわかります)

以下は目次です。「第二巻」となっているのは、先にnoteで公開した「第一巻」があるからです。(第一巻 BYDの世界戦略 タイ/ハンガリー/ブラジル/トルコ/インドネシア/メキシコ)


第二巻 BYDのサプライチェーンとスマートファクトリー 目次
2.1 垂直統合型サプライチェーン - バッテリーから組立まで自社一貫生産
動画:5分で充電が完了する新バッテリーシステムの紹介
動画:BYDの「ブレードバッテリー」に釘を貫通させる実験
動画:海豹(Seagull)2023年モデルの車内
動画:BYDの河南省鄭洲市にあるBYD鄭州ギガファクトリーの紹介(敷地面積130平方km世界最大のEV工場。Tesla社ギガファクトリー・ネバダの10倍の広さ、日本語字幕あり)

2.2 地域最適化戦略 - 進出先での現地調達・現地生産の徹底

2.3 スマートファクトリー導入 - 生産性向上と品質管理の高度化(ファーウェイとの協業)
動画:EV車種"Atto3"を生産するスマートファクトリーの紹介
動画:BYD深圳本社工場における全車インテリジェンス(特に都市型ナビゲーションオンアシスト)技術デモ

付録1:BYDのスマートファクトリーを詳細に紹介した中国語ブログ要約

付録2:"YouTube動画、BYDの河南省鄭洲市にあるBYD鄭州ギガファクトリーの紹介"の要約

付録3:BYD深圳本社工場の全体像


この調査報告書のハイライト

◉2024年のBYD自動車部門の粗利益率は21.02%に達し、高級EVを手掛ける中国新興メーカーの理想汽車(19.8%)や小鵬汽車(14.3%)、低価格路線の零跑汽車(8.4%)などを上回り業界トップクラスとなっている​。一方で同年のBYDの1台当たり平均販売価格は14.45万元と前年より約1.5万元も下がっており​、値下げによる販売拡大と高い利益率を両立している点は特筆に値する。

◉BYDは国外展開において、自社工場を現地に設立し「現地生産・現地調達」によって地域ごとのコスト最適化を図る戦略を取っている。その代表例がタイとブラジルである。(第一巻 BYDの世界戦略 タイ/ハンガリー/ブラジル/トルコ/インドネシア/メキシコ も参照)

◉BYDのコスト競争力は、調達面だけでなく生産プロセスの効率化・高度化にも支えられている。同社は近年、スマートファクトリー(智能工厂)化を積極的に推進しており、生産ラインへのデジタル技術導入によって生産性向上と品質改善を図っている。特に注目すべきは、ICT企業のファーウェイ(華為技術)との協業による工場の高度ネットワーク化・自動化である​。

◉(世界最大のEV工場である)BYD鄭州工場は「バッテリー、モーター、最終組み立てなどのコンポーネント」の生産に特化した「16の専用生産ライン」を持つ予定である。現在6ラインが稼働しており、年間400,000台を生産しているが、2025年末までに全16ラインが稼働すると、「年間100万台」の生産能力を持つことになる。

◉立地は「中国中部の河南省にあり、主要な高速道路や鉄道路線の交差点に戦略的に位置している」ため、「国内および国際的な車両輸送が容易になる」。これにより、「輸送コストを沿岸部の工場と比較して約20%削減できる」。
河南省には「リチウムとレアアース金属の世界最大級の埋蔵量」があり、「バッテリーに必要な材料を輸入に頼ることなく確保できる」という大きな利点がある。

◉BYD深圳本社工場は、主要な部品供給を工場から半径100km以内に集約する「3時間供給チェーン」を構築しています。​これにより、物流コストの削減と生産効率の向上を図っている。

BYDの「巨人」ぶりを示す業績

Teslaを抜いて世界最大のEVメーカーとなった中国のBYD(比亜迪)は、調べれば調べるほど「巨大な人」であることがわかります。以下は2024年と直近の四半期の業績。さらに地域別販売台数と従業員数です。

トヨタは例外として世界で1,000万台超を販売していますが(2024年、以下同)、日産、ホンダ、スズキはいずれも300万台前半〜後半です。EV主体で生産販売する中国のBYDがこれら3社をすでに上回っています。

2024年通期業績(2024年1月~12月)

  • 売上高:​7,771億元(約1,070億ドル)
    前年比29%増加。初めて年間売上高が1,000億ドルを突破し、テスラの売上高(約977億ドル)を上回りました。

  • 純利益:​403億元(約56億ドル)
    前年比34%増加し、過去最高を更新。

  • 営業利益:​約498億元(約68億ドル)
    営業利益率は6.4%で、前年より改善。

  • 販売台数:​427万2,100台
    前年比41.3%増加。内訳は以下の通り:

    • 純電気自動車(BEV):約176万台

    • プラグインハイブリッド車(PHEV):約249万台 これにより、BYDは世界最大の電動車メーカーとなりました。

  • 海外販売台数:​約42万台
    前年比71.9%増加し、全体の約10%を占めました。

2025年第1四半期業績(2025年1月~3月)

  • 売上高:​1,704億元
    前年同期比36.4%増加。

  • 純利益:​91億5,000万元(約1800億円)
    前年同期比2倍に増加し、アナリスト予想の81億元を上回りました。

  • 販売台数:​約100万8,000台
    前年同期比60%増加

地域別販売台数(2024年)

  • 中国本土:​約385万台

  • ブラジル:約8万台

  • タイ:約6万台

  • インドネシア:​約1万5,000台

  • 日本:​約2,200台

その他の指標

  • 従業員数:​約90万人(2024年9月時点)

  • 平均賃金:​正確な平均賃金のデータは公表されていませんが、同社は人件費として売上の約17.5%を充てており、業界平均を上回る水準と推定されます。

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