ラピダス:IBMがグローバルファウンドリーズによって提訴されている件の背景
日本政府が大々的に支援している国策と言っても過言ではない半導体製造会社ラピダス(Rapidus)関連のニュースとして、最近気になるのが、ラピダスと提携する予定のIBMが知財をラピダスに不法に共有したとして訴えられている件です。
ロイター:
グローバルファウンドリーズがIBM提訴、「ラピダスと知財不法共有」
2023年4月19日
私は業務として海外の半導体産業に関して勉強をさせてもらった経験から、台湾のTSMC、韓国のSamsungがいかに国策として、国の経済の屋台骨として、政府が支援しているかを知っているつもりです。
その上で申せば、IBMがグローバルファウンドリーズ(GlobalFoundries)から提訴されて支払うことになる3,000億円は、むしろ日本政府が肩代わりして支払うべきだと考えます。台湾政府のTSMC支援、韓国政府のSamsung支援を考えれば、それぐらい日本政府がしないと、熾烈な半導体産業の競争の中で生き残っていけません。
○ChatGPTによるロイター記事の要約
上記のロイターの記事の要約をChatGPT3.5に要約してもらいます。
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要約:
この記事では、IBMがGlobalFoundriesに25億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしたことが報じられています。IBMは、同社の仕様に基づいたチップを製造するためにGlobalFoundriesを雇ったが、契約で合意した仕様を満たさなかったと主張しています。これによりIBMには重大な被害と経済的損失が生じたとされています。一方、GlobalFoundriesはこれを否定し、IBMが契約で合意した数量のチップを購入しなかったことで契約違反をしたとして反訴しました。この訴訟はまだ継続中であり、どのように解決されるかは不明です。
ご参考までにChatGPT4で要約させるとこうなります。
要約:
半導体製造業者のGlobalFoundriesは、チップ製造技術に関連する2014年の合意に違反したとして、IBMを25億ドルで訴えています。提訴は、IBMがインテルを含む第三者に機密情報を漏らしたと主張し、その違反に対する賠償を求めています。IBMは、この主張を否定し、常に合意に従って行動していると述べています。この訴訟は半導体業界に影響を与える可能性があり、両社の顧客やパートナーに潜在的な影響を与えるかもしれません。
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甲乙つけ難いですが、後述する機密漏えいが今回の提訴の発端であることを踏まえると、ChatGPT4の方が文脈理解では精度が高いと言えます。
○グローバルファウンドリーズの言い分
本件についてはグローバルファウンドリーズが積極的に情報開示をしています。
同社の2023年4月19日付プレスリリース
GlobalFoundries Files Lawsuit Against IBM to Protect its Intellectual Property and Trade Secrets
(GlobalFoundriesが知的財産と営業秘密を保護するためにIBMに対して訴訟を提起)
同社が投資家向けサイトで投資家に情報共有する目的で流しているニュース。2023年4月19日付。
GlobalFoundries Files Lawsuit Against IBM to Protect its Intellectual Property and Trade Secrets - Accuses IBM of unlawful disclosure to Intel, the Japanese consortium Rapidus and others
(GlobalFoundriesが知的財産と営業秘密を保護するためにIBMに対して訴訟を提起 - IBMを不法にIntel、日本のRapidusコンソーシアムなどに情報を漏洩したと非難)
確認するとどちらもほぼ同じ内容を書いています。プレスリリースの要約を1500字でChatGPT3.5に書いてもらいます。(字数を短くすると内容伝達が舌足らずになります。多くするとChatGPTが自分の分析を含んだりして冗漫になります。本件では1500字ぐらいがちょうどいいです)
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GlobalFoundriesは、IBMに対して知的財産権の侵害と不正競争行為に関する訴訟を提起しました。同社は、IBMが同社の7nmチップ製造技術の機密情報をIntelや日本のコンソーシアムであるRapidusなどの競合企業に提供したと非難しています。訴訟では、GlobalFoundriesは、IBMが同社と共同開発した技術を不正に使用していると主張し、損害賠償を求めています。
両社の製品は、半導体産業で使用されるため、訴訟は産業全体に影響を与える可能性があります。この訴訟の結果は、知的財産権の保護に関する新しい標準の確立につながる可能性があります。
この訴訟は、両社にとって非常に重要であり、どちらも自社の権利と利益を守るために戦っています。IBMは、GlobalFoundriesの主張を否定する声明を発表しています。
GlobalFoundriesは、訴訟によって自社の技術や権利を保護することができる可能性があります。同社は、IBMが自社の技術を不正に使用したと主張しており、訴訟によって競合他社からの権利侵害を防ぐことができると期待されています。
一方、訴訟が長期化することで、両社の生産能力に影響を与え、半導体産業に供給不足を引き起こす可能性があります。現在、世界中の多くの産業が半導体不足に悩まされており、この訴訟がさらなる混乱を引き起こすことが懸念されています。
訴訟は、半導体産業における競争がますます激化する中、競合企業の取り組みを見るうえで重要な局面となっています。半導体産業は、現代のテクノロジーに不可欠であるため、この産業における競争はますます激化することが予想されています。
訴訟の結果は、半導体産業に大きな影響を与える可能性があるため、世界中の関心が高まっています。今後の動向に注目し、訴訟の結果が産業にどのような影響を与えるかを見守る必要があります。
この訴訟は、知的財産権の保護に関する新しい標準を確立する可能性があります。このような標準の確立は、公正な競争環境の維持に役立つことが期待されています。同様の訴訟が起こる可能性があり、産業全体に影響を与える可能性があります。
GlobalFoundriesのCEOであるTom Caulfieldは、"私たちはIBMと共同で開発した技術を不法に使用され、競合他社に提供されたことに対して激しい不満を持っています。私たちは、自社の技術と知的財産権を守るため、適切な措置を講じることに決意しています。"とコメントしています。
一方で、IBMは、この訴訟についてコメントを発表していませんが、同社はGlobalFoundriesの主張を否定する声明を発表しています。同社は、半導体産業に貢献してきたと主張しており、同社の立場を強く主張しているようです。
両社の訴訟は、半導体産業にとって非常に重要であり、産業に大きな影響を与える可能性があります。訴訟の結果は、半導体産業に大きな影響を与える可能性があるため、世界中の関心が高まっています。
この訴訟は、半導体産業における競争がますます激化する中、競合企業の取り組みを見るうえで重要な局面となっています。訴訟の結果は、半導体産業に大きな影響を与える可能性があるため、今後の動向に注目が集まっています。
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○提訴の原因となったインシデント
この要約を得たあとで、英文のプレスリリース本体をざっと読んでみました。肝心のインシデントがこの要約からは抜け落ちています。以下の部分です。今回の提訴でかなり決定的な事実です。
The complaint notes that IBM's executives have described the Intel and Rapidus partnerships as based on decades of technology derived from research conducted at the Albany NanoTech Complex, technology that they had no right to disclose. It also raises concerns over the extent to which IBM may have unlawfully disclosed GF's IP and trade secrets beyond these two heavily publicized partnerships.
DeepLによる翻訳(ChatGPT3.5の翻訳はイマイチ事実関係が甘いです):
訴状には、IBMの幹部が、IntelとRapidusとの提携が、アルバニー・ナノテック・コンプレックスで(グローバルファウンドリーズと共に、部外秘で)行われた研究に基づく数十年にわたる技術であると述べており、彼らが開示する権利がなかった技術であると指摘しています。また、IBMがこれらの2つの広く公表された提携以外にも、GFの知的財産権や営業秘密を不正に開示している可能性についても懸念が示されています。
つまり、グローバルファウンドリーズ(GF)がIBMを提訴している理由は、IBMと同社がAlbany NanoTech Complexで共同研究した内容で、かつ、部外秘の技術を、Intelとラピダスに漏らしたから、少なくともGFの主張はそうなっています。
○GFが訴える7nmは世界最先端技術ではない
議論の焦点の技術は7nmですが、現在、半導体製造装置メーカーのASMLやApplied Materials、そうしてその顧客である世界最大の半導体メーカーTSMCがしのぎを削っている先端分野は3nmです。
何を今さら7nmが世界最先端技術だと騒ぐ必要があるのかという気もしますが、グローバルファウンドリーズにとっては必死です。3,000億円の損賠賠償金が得られるチャンスです。
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○日本政府はIBMが支払う損害賠償を肩代わりして、積極的に前に進むべき
グローバルファウンドリーズがIBMを提訴したことで、IBM社内ではラピダスとの提携をやめようという議論が沸き起こっていることは確実です。提携したところでGFから3,000億円取られるのであれば、何の経済的なメリットがあるか?それはそうでしょう。
私は、日本政府が3,000億円を肩代わりして、GFに提訴を下ろさせ、IBMとの提携を粛々と進めて、先に行く方が合理的だと考えています。最近の名著「半導体戦争」にも克明に書かれている通り、これは国家間の戦争です。台湾や韓国に負けないためには、日本は頑張るべきです。