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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

これまでのPKSとバイオマス燃料への取り組み

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海外インフラ案件のリサーチをやり始めたのが2011年。その後、土地勘がある分野ということで発電案件に特化して行き、その流れでバイオマス燃料の輸入に関係するようになりました。2012年7月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度が施行され、木質バイオマス発電もその対象になったことが背景にあります。

2013年、2014年のあたりは、岩手県に足しげく通って、大船渡市、陸前高田市の用地で5,000kW程度の木質バイオマス発電所を具体化するための動きをしていました。結局、燃料が足らずにこの件は流れてしまいました。そこから海外産の燃料に目を転じました。

2015年1月から情報収集とリサーチを始め、インドネシアのバイオマス燃料およびトレファクション(半炭化)の専門家であるEko Sb Setyawan氏と知り合って、密に情報交換を行うようになりました。彼の紹介で知り合った現地在住オランダ人ビジネスマンの手ほどきにより、2015年半ばにはインドネシアスマトラ島のパレンバン、ドゥマイ、ランプーンにあるPKSストックパイル(集積所)を訪問。同年11月にはランプーンのPKSストックパイルに、バイオマス発電大手の某社の方2名をご案内しています。
PKSの取引成約には多様な要素が関係し、この時には残念ながら成約には至りませんでした。

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当時はまだ日本のPKS市場は供給者が多く、現実の需要が少ない状況があり、なかなか成約しない時期が続きます。2016年から2017年にかけて、インドネシアで、1年で成木になる早世樹種Cをプランテーション栽培で育てる木質ペレット事業の組成にも取り組みました。また、ベトナムにも何度か行って、ホーチミン近辺のペレット製造会社と仲良くなり、ハノイ近郊のペレット会社も訪問しています。
インドネシアのPKSについても、月間3万トンの供給が可能なW社の社長と会い、別な訪問ではドゥマイのS社のストックパイルを訪問しています。マレーシアのクアンタンにも行きました。
しかし、2017年になってもまだ供給過多なところがありました。

2018年はコンシューマ系IT事業立ち上げのためにほとんど海外にいたのですが、今年1月に帰ってきてからは、PKSを輸入したいという引き合いが、人伝手で、あるいはインターネットの情報を介して来るようになりました。感謝なことです。

買い手サイドで現在手当てが進んでいるのは、2020年ないし2021年運開の木質バイオマス発電所の主燃料としてのPKSと、大手セメント会社の石炭混焼用のPKSです。また、時々は、現在動いている発電所用のPKSが何らかの出来事で来なくなったため、急いで手当する、というような引き合いも、近くを流れています。

インドネシア産のPKSは、従来パーム品種のDURA種であり、果肉が厚く、それだけ多く油分を含んでいるので、正味発熱量が高い傾向があります。また、長い時間燃えるそうです。一方で、マレーシア産のPKSは、パーム油が果肉から多く取れるように改良した品種のTENRA種であり、果肉が薄く、正味発熱量はインドネシア産より低い傾向があります。

発電所は、燃料を買う際には、正味発熱量を買っているため、代金支払いでは正味発熱量に応じて価格を調整する動きが一般化しているようです。
なお、既存発電会社により、スポットものを競争入札で極端に値下げする動きは、そろそろ難しくなっているのではないかと推察します。供給がタイトになり始めているからです。

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現在、手当ができるPKSストックパイルは、インドネシア・スマトラ島に、1系統で最大出荷量月間5万トン(ただし購入希望の日本企業複数あり)と、スマトラ島に散在する複数のストックパイル会社が3~4社(各月間1-2万トン)。FOB75~80ドル程度(輸出税・賦課金込み)。
その他、スマトラ島では、アチェ州で手付かずのパームオイルミル(搾油工場)があり、半年程度、相応の手間暇をかければ、出荷可能になるはずです。

インドネシア領カリマンタン島にも膨大な手付かずのPKS資源が存在していますが、1万トンの運搬が可能なバルク船が接岸可能で、PKSをローディングするための設備がない港がほとんどだと認識しています。サマリンダは一度訪問したことがありますが、PKS資源の確認にまでは至りませんでした。

インドネシアでは屋根のあるストックパイルは珍しいですが、日本の発電所の料金支払いが、含水量と相関関係がある正味発熱量に応じて、支払い代金を変えることがあるという認識がインドネシアに広まるに及んで、屋根を付ける動きが出始めています。
日本人の関係者によると、新設ストックパイルで、コンクリート床にして、異物除去装置を入れ、屋根をしっかりしたものにすると、8,000万円程度の投資が必要になるそうです。

その他、珍しい情報としては、マレーシアの政府系パーム企業による、パームオイルミルから直接出てくる未処理のPKSの価格が40ドル程度だった、というものがあります(ただし早い者勝ち的な原料)。現地で、PKS異物処理会社を手当てして、必要な運賃などを加味すると、港渡しの値段が70ドル弱ぐらいになります。日本企業がこれを買うには、すべての必要コストを前払いするファイナンスの枠組みが必要です(現地のPKS会社のビジネスモデル)。一度、組成しようとしましたが、前払いに対応する企業が出なくて頓挫しました。今年2月のことです。

PKSがタイトになってくると、ベトナムなどの木質ペレットにも注目が集まって来るものと思います。原料がゴムだと、カリウム成分が高い傾向があり、これが難です(カリウムが高いと、バイオマスボイラー設備内部で灰が固まりやすい)。
ロシア極東の森林資源に着目して、これをペレットにして持ってくる動きが出始めています。私の周辺にも仕込みを始めている人間がいます。

しかし、アチェ州やカリマンタン島のPKS資源は、まだまだ開発できる余地がありますので、ベトナム・ロシア島のペレットと両にらみで取り組むのがよいでしょう。

あとは、ベトナムのホーチミンにある、米国で教育を受けた社長が経営している木質ペレット製造販売会社があり、月産2万トンのペレット工場を5億円強で新設可能です。同社はすでにペレット工場複数を保有して輸出を行っているため、同社の監督により運営すれば、スムーズな生産と出荷が可能でしょう。

2017年頃の資料で少し古いですが、各樹種の特徴などを記した小職作成の資料がこちらにあります

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