木質バイオマス発電の採算性に大きく影響する「灰」の処理
東北地方のある地域で5月頃から木質バイオマス発電5,000kW級の準備を進めています。よい用地が見つかり、送電線の目鼻も立ち、さらにはもっとも重要な木質チップ燃料の調達の目安もついて、あとは「ゴー」の判断がなされれば形になろうというところ。
実際に携わってみてわかってきたことは多々ありますが、今日は「灰」の話を簡単に記してみたいと思います。
■灰処理はトン当たり1万5,000円以上
木質チップ燃料を焚くと灰が出ます。これの量がハンパではありません。5,000kW級の木質バイオマス発電所では、年間6万〜7万トン程度の木質チップ燃料を焚きます。(これもまた膨大な量です。年6万トンで1日に190トンあまり。10トントラック20台で運び込まなければなりません)
燃料のおおむね10%程度の灰が出ます。年間6万トン焚くとして、灰の量は5,800トン。1日18トンの灰が出ます。一言で「1日に18トンの灰」とは言っても、10トントラック2台分と言えばものすごいということがよくわかります。
この灰、産業廃棄物なんですね。従って、法に則った処理をしなければならない。普通に考えれば、産業廃棄物業者にお金を払って引き取ってもらうということになります。
灰の引取量は、1トン1万5,000円〜1万7,000円程度。1万7,000円で計算すると年間1億円弱の灰処理費ということになります。
5,000kW級木質バイオマス発電所の年間売電売上は、12億6,000万円。その8%近い灰処理コストということになります。ものすごく大きいです。
仮に灰処理コストがまったく要らないとすれば、プロジェクトIRRが2%程度跳ね上がります。それほどまでに灰の処理費は大きい。
■灰を森林に戻すのが自然
この灰を、産業廃棄物としてではなく、どうにかして有効活用することはできないか?
仮に、1トン1,000円であっても、有価値なものとして売ることができれば、採算性はぐっと増します。
木質バイオマス発電所の灰は、もともとは森林の樹木。燃やして出た灰を森林に肥料として戻すことができれば、エコライフサイクル的にも有意というもの。
実際に、灰を森林の肥料として還元することの有用性を確かめる研究はあちこちでなされています。
木質ペレット燃焼灰を適正かつ安全に有効利用するための調査研究
灰を森林に戻すルートが(ビジネスモデルが)確立すれば、木質バイオマス発電所は採算性の成約を免れてより広範囲に普及すると思います。