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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

タンザニアの稲作投資機会

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アフリカでは伝統的にキャッサバやトウモロコシを主食としてきましたが、お米を食べる人がだんだん増えているそうです。お米を炊いたご飯は食べてみるとやはり「うまい!」わけで、一度お米のうまさを知ると、昔のようにキャッサバやトウモロコシには戻れないと聞きました。

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今年に入ってタンザニアの首都ダルエスサラームを2度、訪問しました。タンザニアは人口4,400万人。うち320万人が首都のダルエスサラームに住んでいます。
ダルエスサラームはクルマで移動したり歩いてみたりした印象では、西欧人の手が入った、つまりは植民地時代に核ができた都市で、れっきとした都会です。ただ、道路網がクルマ社会用にはできておらず、朝晩の渋滞はひどいです。クルマで2時間はかかるような郊外からも通勤している人が少なからずいます。

インド洋をはさんでインドと相対している位置関係にあるため、古くから印僑がやってきて商業を営んでいます。その証拠に商店街の店の並び方や看板の掲げ方はインドの都市そのまま。昔行ったカルカッタやデリーを思い出しました。飲食店でもインドの影響を受けたメニューが少なくありません。私は事あるごとにビリヤニ(ビルヤニとも。Biryani)を食べていました。インド・中近東を源流とする炊き込みご飯です。これがやたらとうまかった。米食のレベルは決して低くはないと思いました。

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■JICAもタンザニア稲作の底上げを長期プロジェクトで支援

タンザニアでも都市化が進んでおり、都市人口の増加率は年間5%近い水準になっています。中間層が増えたということか米の消費量も増えており、国内の生産量ではまかないきれないため、輸入が増えています。私も一度訪問したTanzania Investment Centreの資料によると、米の輸入は2007年〜2011年までの4年間で毎年40%ずつ増加しているそうです。

その結果、タンザニア国内の米価は国際平均であるトン当たり500ドル〜600ドル程度から大きく乖離して、1,000ドル〜1,400ドル程度になっています。それだけお金を出してもご飯を食べたいという人々が増えているということですね。

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こうしたお米の需要増大に応えるため、タンザニア政府では稲作生産の増強に取り組んでいます。当面の目標は1ha当たりの平均収量が2トン程度しかないところを、倍の水準に引き上げること。ちなみに日本の収量は1ha当たりおおむね5トンです。タンザニアでは日本の稲作からすればごくごく当たり前のことが行われていないために生産量が低いままに留まっている現状があり、日本では常識的な1直線に苗を植えるといった方策をいくつか適用するだけで、確実に効果があるそうです。

日本のJICAでは、こうしたタンザニア政府の取り組みを支援する活動として、日本の稲作技術を移転するプロジェクトを実施しています。

Project for Supporting Rice Industry Development in Tanzania (Tanrice 2)

JICAが公開している情報によると、現在は第2期のプロジェクトが始まっており、2012年11月から2018年12月まで9億5,000万円をかけて、7つの稲作指導センターを通じて高い技術を持った稲作農家の育成に取り組んでいます。

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■SAGCOT - 稲作生産増大のための官民連携プロジェクト

JICAの取り組みは、ほとんど技術を持たずに生産量が低迷している農家の底上げを図るものです。一方で、投資事業としてタンザニアの稲作に取り組む動きもあります。ここで言う投資とは、ある程度のまとまった資金を投じて、それによって稲作の生産量を増やしたり品質を上げたりして、売上&利益としてその果実を得、もって投資回収を行うという動きのことです。

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まず、ベースになっているのが、SAGCOT (Southern Agricultural Growth Corridor of Tanzania、タンザニア南部農業成長回廊)と呼ばれる、一種のPPP(官民連携)のプロジェクト。このSAGCOTの具体的な中身については筆者としても要研究で、いわゆるインフラ案件のPPPとは仕立てが異なっているようであり、興味を引きます。SAGCOT成立の端緒は2011年にダボスで開催された世界経済フォーラムだとのこと。欧米主導の動きなんでしょうね。SAGCOTをビジネススクール教材のケーススタディにしたものがハーバード大学で作成されています。たぶんそれだけユニークな試みだということでしょう(ハーバードのケーススタディになるというのは、ものすごいことです)。

Mobilizing the Southern Agricultural Growth Corridor of Tanzania: A CASE STUDY

■1,000万ドルのエクイティ投資が求められている

このSAGCOTの下で大規模な稲作投資事業に取り組んでいるのが、Agricaという英国の企業と、同社に投資する米国カリフォルニア州拠点のファンドCapricorn Investment Groupおよびノルウェー系ファンドNorfundです。欧米ではこのように新興国の農業に投資するファンドがあるんですね。

これらはKilomberoという谷にKilombero Plantations Ltd.という一種の特別目的会社を設立して、6,500万米ドルの総投資額(デット含む)が必要なところ、3,500万ドルを投資済みです。

Kilomberoには肥沃な土地が広がっていて、雨量も年間1,400〜1,800mmと多く(東京の平均雨量1,460mm)、対象用地がすべて灌漑されるならば年間3万3,000トンの米収量(精米後重量)が見込めるとのことです。3万3,000トンと言うと、栃木県の年間収穫量が約34万トンですから、その1/10ですね。かなり広大な用地が広がっています。Agricaはこのうち灌漑による水田215ha、雨水による水田5,000haを開発し、加えて50km圏内にある5,000軒の農家を指導して、早期に年間収穫量6,000トンの達成を目指しています。なお、ha当たり収量8トンという好成績を収める水田も出てきているとのこと。

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総投資額6,500万米ドルのうち、上述のように3,500万米ドルの手当ができているものの、さらに1,000万米ドルをエクイティで投資する海外の投資家を求めています。1,000万ドルがエクイティで入ってくれば、残り2,000万ドルは融資で調達可能だそうです。

ゆくゆく3万3,000トンの収穫が実現すれば、小売でトン1,000ドルとして年間3,300万ドルの売上。投資として見ればかなりよいパフォーマンスになりそうな様子が窺えます。

関心のある方は問い合わせてみてはいかがでしょうか?

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