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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

興味深い大阪ガスの英国水道事業参入

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今朝の日経で「大ガス、英で水道事業。住商子会社に50%出資」という記事が出て、大変に興味深く読みました。

記事によると、住友商事が英国で単独出資していた水道事業の持株会社に大阪ガスが50%出資。この持株会社はロンドン南東部で67万人に水を供給するSutton and East Surrey Waterを保有しています。

水道ビジネスは、メーターを設置して、使用量に基づいて顧客に課金するというところだけを抜き出してみるなら、ガス供給ビジネスと非常に似通っています。電力と水道を併営する、電力とガスを併営する、ガスと水道を併営するといった形は、欧米では広く見られるもので、大阪ガスが水道事業に参入するのは隣接領域に進出するという意味合いがあります。

Sutton and East Surrey Waterは完全に英国に根を下ろした水道会社として運営されており、同社のウェブサイトを見ると経営陣は住友商事の方1名を除いてすべて英国人です。1862年から水道事業を続けてきた民間企業であり、地元からも支持の厚い企業のようです。

Sutton and East Surrey Waterは2013年初頭まで、英国のインフラファンドであるAqueduct Capitalが保有しており、2013年2月に住友商事に2億5,900万米ドルで売却しました。

Sumitomo Buys U.K. Water Supply Firm For $259 Million (WSJ、2013/2/5)

この時、住友商事側のバイサイドアドバイザーとしては野村證券が、Aqueduct側のセルサイドアドバイザーとしてはCitigroup Global MarketsとFreshfields Bruckhaus Deringerが付いたと報じられています。(Aqueduct Capital sells water management group to Sumitomo for £165m

水道、電力、鉄道、高速道路、空港、港湾など、キャッシュを生むインフラビジネスの世界では、特に欧米では、所有の構造がかなり洗練されていて、実は所有者がインフラファンドだったということはよくある話です。インフラファンドは、様々な理由により、一度持ったインフラ事業の株式を売りたいと思うことがありますから、そこに買い手が現れればディールが成立します。

インフラファンドが一度持ったインフラ事業の株式を売りたいと思う理由は様々で、思ったようなリターンが得られない、投資しているセクターをまとめたい、より大きな事業を買収するために小規模な事業を売却したい等々。これはいわゆるファイナンシャルインベスターの考え方です。これに対して、買い手の側は、いわゆるストラテジックインベスターとして、リターンの多寡よりは「事業者としてその事業内容に興味がある」という意図で買うことがあります。ここで両者の利害は一致して、ディールが成立します。ということで、世界的に見れば、売り手も買い手も相当数いる世界です。

例えば、米国の電力小売が自由化されている州で展開するある電力小売会社を日本企業が買ったとすれば、その日本企業は、オーナーとして顔を出して営業することもできるし、純粋な株主として顧客の前に出ないで保有することもできます。公益事業という性格と地元感情を考えれば、日本企業がオーナーであるということが表に出ない方が好ましいのではないかと思います。

このような表に出ない保有形態であっても、オーナーとして事業の様々なノウハウを学ぶことはできますから、中長期的に外国において公益事業に携わって行こうという場合には、十分に意味のある投資ということになると思います。

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