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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

中堅企業のためのインフラ輸出

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インフラ輸出と言うと、日本を代表する重電メーカーやプラントエンジニアリング会社、さらには大手商社の独壇場のように思われるかも知れませんが、その実、商機は売上高100億円〜数百億円クラスの中堅企業の方にある…。というのが、ある開発系の国際金融機関の方の見方です。

なぜか。

意思決定が早いから、との理由です。

どういうことかと言うと、まず、新興国では、少し入り込んで情報を入手してみると、インフラ系の事業機会がとにかく多い。

私が以前に3回訪問して、インフラ事業関連の政府機関等をまわったインドネシアの場合で言うと、2億4,000万の大国ですから、諸地方、諸都市から「これを整備したい」「あれをやりたい」というプロジェクトの要望書が無数に上がってくる。上がってくる先は、中央政府でインフラ事業を統括している(正確に言えば、PPP案件をふるいにかけている)国家計画庁です。ゴミ処理、小規模の発電(水力から太陽光まで)、都市交通、水、鉄道、などなど。ほんとに無数の案件が集まってくる。これらのうち、外国の企業・投資家が着手して意味のある案件のみがふるいにかけられて情報が出てきます。従って、出てこない案件というのは相当数あります。よくよく吟味すれば、日本の中堅企業が手がけるのに意味のあるものがあるかも知れません。総投資額が数億円〜数十億円規模のものです。

昨年ご縁ができて今年前半に2度訪問したタンザニアの場合で言うと、当社のスタッフが現地で動いていることもあって、以下のような案件情報や引き合いが来ました。

・ミネラルウォーターにまだまだ商機があるので、ボトリング機械を日本から輸入して、ミネラルウォーター製造販売業をやりたい。
・年産数十万トンクラスの肥料工場をやりたい。
・産業用モーターに商機があるので、日本のモーター製造会社と提携して工場を拡大したい。
・米食が増えているので、米の増産・商品作物化を進めるため、日本の高い技術の精米機をタンザニアで製造できる工場を作りたい。
・産出される天然ガスを活用して、数千kW〜数万kWのガス火力発電事業を行いたい。

こういう話がたくさんあります。

Tanzania

ダルエスサラームのタンザナイトホテルから見た市街地(下町地区)

タンザニアは、隣接しているケニヤ、ウガンダ、ブルンジ、ルワンダと東アジア共同体を形成しつつあることもあって(ASEANのような経済統合が進行中)、ウガンダなどからも案件情報が入ってきます。

・首都カンパラ郊外の新都市建設計画にぜひとも日本企業に参画してもらいたい。
・地元建設会社は建機を購入することができずに工事受注の機会を逃しているので、建機レンタル会社を展開したい。

最近では、JICAの新興国進出支援の枠組みでも、中小企業を想定したプログラムが始まったと聞きます。
上記のような案件、それも、EPC案件ではなく、「事業そのもののオーナーとなって展開するタイプ」については、カバーする世界銀行系の保証プログラムもあります。場合によっては、国際協力銀行の融資が付くかも知れませんし、時間はかかりますが、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行の融資が付くケースもあります。

特に東アフリカでは、年率5〜8%という高い経済成長が続いているので、投資回収期間は日本では信じられないほど早いというのが一般的。その「事業分野に賭ける」というより、「経済成長の勢い全体に賭ける」というタイプの投資になるので、よほど特殊な分野でない限りは、まず間違いないと思われます。他の地域ではわかりませんが、東アフリカではまだまだ純朴なビジネスマンが多いという印象を感じました。言語は英語で何とかなります。

こういう事業機会があるわけですが、大企業になると、リスクの洗い出しから入って、かなり複雑な意思決定のプロセスがあって、最終的には投資に至らずという決断が下ることが少なくないです。また、要求される事業規模もそれなりに大きい。

それに対して、中堅企業の場合は経営がオーナー経営者による場合が多く、速い意思決定が期待できる。事業規模も上述のような規模で十分に意味がある。そういう案件は実に多い。だからこそインフラ輸出は中堅企業の肩にかかっている…というのが冒頭の国際金融機関の方のお考えです。

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