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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

PPPの基本: 海外PPP案件の受注には2〜3年かかる

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先日、インドネシア、インド・グジャラート州、オーストラリアの「案件情報」に焦点を当てたセミナーをやらせていただきました。

この時、情報を整理していて気づいたのは、インフラ案件は何も外国政府が行うPublic Private Partnership(PPP)に限らないという、ごく当たり前のことでした。PPPは海外インフラ案件の1形態に過ぎず、視野を広く取れば「PPPではない政府系案件」や「民間が主導するインフラ案件」も見えてきます。日本政府のインフラ輸出政策の目玉とも言うべきJBICによるプロジェクトファイナンスは、PPP以外のインフラ案件であっても、現地でSPCを設立して長期のインフラ事業を行う限りは対象になるはずですから、受注を図る企業はPPP以外にも目を配ってチャンスをつかむべきです(対象分野はこちらの投稿にあります)。

また、インドネシアに何度か行くうちに「インフラPPP案件の受注には実に時間がかかるものだ」ということがよくわかってきました。案件情報が公開されて(EOI)から落札者が決まるまでに3年はかかります。これはインドネシアの場合です。PPP先進国であるオーストラリアの場合は、万事先進国なりのスピードが期待できるわけですが、それでも輸送セクター(重厚長大案件なので時間がかかる)で平均20ヶ月程度かかっています(KPMGがオーストラリアのPPPの課題をレポートした"Review of barriers to competition and efficiency in the procurement of PPP projects"による)。これはかなり早い方だとこのとです。

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EOIから落札者決定まで、日本にいてぼんやり待っていればいいかと言うと、そういうことは絶対にありませんから、現地で誰かが張り付いて、政府側の進捗があり次第必要なアクションを取らなければなりません。自社案件であれば、事業計画にゴーが下った後は事業立ち上げチームがフルスピードで動けばいいわけですが、外国政府のインフラPPP案件では、チームを作ったはいいが2−3年は相手政府の出方待ちという状況が続くということです。なかなか歯がゆい時期が続きます。

これは案件をハンドリングする外国政府にとってもPPP案件は「重たいもの」であり、万事に時間を要すということが背景にあります。いわゆるCapacity(人的なPPP案件の処理容量)が十分な政府はそう多くありません。

こういう現実に対する解法としては、1つの国で複数の案件の準備を同時並行で進めて、チームの仕事が途切れないようにするか、インドネシア、インド、オーストラリアなど近隣国の特定セクターのPPP案件を1つのチームがハンドリングするようにして、やはり仕事が途切れないようにするのがよいかと思います。PPPは、いわば"PPP語をマスターする"といった感じの特殊な知識を必要とする仕事であり、PPPの習熟に相応の投資が必要ですから、相手政府の出方待ちでチームが遊ぶような状況はもったいないです。

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