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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

中国地方政府のインフラ事業を買収するインフラファンドが誕生

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Financial Timesの報道によると、インフラファンド最大手の豪マッコーリー(Macquarie)が中国を対象に新しい発想のインフラファンドを設定したようです。運用総額は7億2,900万米ドル。

Financial Times: Macquarie in $729m fund with Everbright

背景を確認しておきます。

中国ではまだPPP関連の法制度が整備されていない模様で、欧米やアジアで一般的に行われているインフラ案件のコンセッション型PPPの公開競争入札事例はありません。
(上下水道ではVeolia Waterが上海市などでオペレーションを受注、エコシティ開発では天津においてシンガポール系デベロッパーのKeppelがゼネラルコントラクターになっている例がありますが、これは地方政府と当該企業との随意契約であり、契約のプロセスは不透明で、ファイナンスのスキームも他企業が投資家として参画できるようなものではないようです)
従って、中国のインフラ案件では、個々のインフラ事業を運営する特別目的会社が存在せず、そのエクイティに投資するというパターンも不可能です。従って、これまで中国のインフラを対象としたインフラファンドは成立しませんでした。

■債務履行が厳しくなった地方政府のインフラ資産を買収

では、マッコーリーの新しいインフラファンドは中国の何に投資するのか?記事によると、中国の地方政府が設立した企業が運営するインフラ資産が債務返済不能などによって売りに出された際に買うという形で投資を行います。中国では、地方政府が設立したインフラ企業による債務が全国で1兆2,340億米ドルに上ります。うち半分はインフラから上がる収益だけでは債務が返済できない状況にあり、その半分はデフォルトの可能性が高いと伝えています。対象分野としては、水力発電、有料道路が挙げられています。その他、経済特区的な性格がある工業団地ないし企業団地、港湾などもあるでしょう。新ファンドは売りに出される可能性のあるインフラを150件リストアップしていると伝えられています。

このインフラファンドに資金を拠出しているのは、オランダの年金のアセットマネジメント会社、韓国の教職員クレジットユニオンなどとなっています。他のインフラファンド同様、年金運用者の関心が高いわけですね。

しかし、インフラ投資の世界で言うプラマリー(インフラ事業の初期にエクイティ投資)でもなく、セカンダリー(インフラ事業の立ち上げ以降にエグジットを図る主体のエクイティを買い取る投資)でもない、債務履行が厳しくなった地方政府の資産を買収するという発想が、なかなかすごいなと思います。


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