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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

欧州各国の再生エネルギー買取価格(三菱総研資料による)

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日本で始動する固定価格買取制度の価格が外国に比べて高いのか安いのか、判断する基準があった方がよいと思います。

三菱総合研究所・環境エネルギー研究本部主任研究員の井上裕史氏が作成したスライド「再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度等に関する動向」のなかで、欧州各国が設定した買取価格がまとめてあります。非常に参考になるので以下に掲げます。2010年6月25日に岡山市で開催された中国地域産学官連携コンソーシアム主催の講演会で用いられたものです。
(またこのスライドは固定買取価格制度の仕組みを考える上で、経産省が公開している資料と並んで、必読と言えるでしょう。)

Pricetable_2

この表で見るべき部分は、「太陽光(屋根用)」と「太陽光(その他)」とあるうちの後者、これが発電事業用の買取価格ですね。国別では、イギリスとイタリアが小規模導入のみ想定しており高めの価格になっているので日本の比較対象にはなりません。ドイツ、スペイン、フランスを比較対象とするとよいですね。
あとは「風力」。これもイギリス、イタリアは除外して、ドイツ、スペイン、フランスを見るとよいです。

するとおもしろいことがわかります。

発電事業を想定した「太陽光(その他)」の買取価格は、ドイツ、スペイン、フランスのいずれもが40円/kWh前後。「風力」の買取価格も10〜11円/kWhと同水準になっています。(なお、風力の場合は、洋上風力には高めの価格が設定されています。)
太陽光が40円前後、風力が10〜11円というのが、この時点(2009年)における欧州の標準的な買取価格だと言うことができるでしょう。

ただし注意しなければならないのは、買取価格制度一般に、制度開始当初は価格を高く、それから毎年価格を少しずつ下げていくメカニズムがあるということです。これは参入事業者に対してできるだけ早期に投資を行うインセンティブを持たせるためです。

ドイツの場合、この表の元となっている2009年時点で固定買取価格制度がスタートしてから、1990年電力供給法を起点にするなら19年、2001年再生可能エネルギー法を起点にするなら8年が過ぎており、以下の表に見るように風力においても太陽光(Photovoltaics)においても年間の発電量がかなり多くなっています。2001年を起点にするなら2009年の太陽光は86.5倍、風力は3.7倍もの発電をするようになっています。
このように制度が効いてきている段階に入っていますから、買取価格の設定は2001年当初に比べてかなりマイルドになっていると思われます。Wikipediaによると、ドイツでは風力の価格を毎年1.5%、太陽光の価格を毎年5%下げているそうです(2008年時点)。

Germanyregeneration

このへんを勘案すると、日本で設定される固定価格は太陽光なら、最初期には40円を上回る水準だと安すぎるということはないと言えるでしょう。再生可能エネルギー特措法の資料には風力、地熱、バイオマス、中小水力については一律で15〜20円とありますから、こちらは安すぎる心配はありません。

問題になるのは期間で、ドイツでは太陽光および風力が20年、スペインでは太陽光25年、風力20年、フランスでは太陽光が20年、風力が15年となっています。この期間設定は、これだけの年限を想定しないと、現実的なファイナンス(国際標準のプロジェクトファイナンス)ができにくいという事情を反映しているものと思われます。
期間の設定については、プロジェクトファイナンスの関係者からもヒアリングして、日本独自の設定にならないように注意が必要だと思います。

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