アジア開発銀行が「グリッドパリティ」目指して3年で90億ドルの太陽光発電計画を推進、日本にもチャンス?
アジア開発銀行が再生可能エネルギーの普及に本腰を入れ始めました。3年以内にアジアの太陽光発電の総容量を現在の6倍の3,000MW(標準的な原発3基分)に増やすために、同行融資分として22億5,000万ドルを用意、官民連携による民間調達分として67億5,000ドルを予定しています。
Bangkok Post: ADB backs solar power to build low-carbon future
Thailand Business News: Here comes the sun, to fuel Asia’s (sustainable) growth
アジア開発銀行には、先日紹介した報告書で「2050年にはアジアのGDPが世界全体の半分以上になる」というシナリオがあります。各国で都市化が進み、人口も増え、経済活動も活発になります。エネルギーや水などの資源が有限である以上、持続可能な路線に持っていかなければなりません。地域の開発銀行として、融資方針によってそれをリードするということなのでしょう。
同行サイトによると、昨年5月にアジア太陽エネルギーイニシャティブ(Asia Solar Energy Initiative)が立ち上がり、アジア太平洋地域に3年で3,000MWの太陽光発電所を建設する基本方針が固まりました。
関連報道では、アジアで太陽光発電が占める割合は0.25%。アジア開発銀行は数年でこれを3〜5%に持っていく意向があり、関連プロジェクトに融資を行って2013年までに総容量を3,000MWに増やします。
これにより、欧州などと比較して遅れた状況にある太陽光発電がアジアにおいても活発化し、電気の恩恵を受けるのに困難がある900万近くの人々に安価な電力を供給できるようになります。
アジア開発銀行では昨年も17億6,000万ドルの融資を太陽光発電プロジェクトに対して行い、今年も20億ドルを予定しているとのこと。2013年以降も同程度の融資を継続するのではないでしょうか?
こうした活動を通じて、最終的には現在の一般的な電力料金と太陽光発電のコストが同水準になる「グリッドパリティ」を目指します。
なお、グリッドパリティについて補足しておくと、日本のNEDOも中長期的にグリッドパリティを実現するロードマップを持っています。
■日本企業にもチャンス?
関連のHere comes the sun, to fuel Asia’s (sustainable) growthという記事では、タイ最大の太陽光発電所に日本の京セラが100万個の太陽光発電モジュールを納入することが報じられています。
アジア開発銀行が打ち出した方針では「67億5,000万ドル分については民間の資金調達を想定」(attract a further US$6.75 billion in private funding)とあり、これは明らかに、特別目的会社を設立して行うプロジェクトファイナンスを前提としたものです。すなわち、日本企業が推進する場合には、日本政府によるパッケージ型インフラ輸出政策の支援対象になりうるもので、国際協力銀行からの融資の対象になる可能性があります。別な箇所では"bankable"という言葉も使っています(=プロジェクトファイナンスで融資に足る案件ということ)。
プロジェクトファイナンスが成立するためには、高い太陽光発電のコストを吸収する全量固定価格買取制度(フィードインタリフ制度)が当該国で動いていないといけませんが、アジア各国ではそのへんの制度整備が進んでいるのでしょうか?あるいは、別なスキームがあるのでしょうか?要確認です。