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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

経産省「水ビジネス国際展開研究会報告書」が提案する海外水企業との協業

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経産省が2009年8月に設置した「水ビジネス国際展開研究会」が去る4月12日に「水ビジネス国際展開研究会報告書(水ビジネスの国際展開に向けた課題と具体的方策について)」を発表していました。この内容がなかなか興味深いです。

前半では(p20まで)、国際的な水ビジネスのポテンシャルを分析しており、この関連の資料をまだ見たことがない方には必読です(一部はすでに関連資料で使われていた内容となっています)。

後半において(p21から)、日本企業がどのように海外の水ビジネスに取り組むべきかが述べられています。このうち、p23から始まる「4.我が国水関連産業の成長の道筋と行動計画 (3)行動計画」は、インフラ輸出政策関連の政策資料ではこれまでに例のないほど詳細に記述された政策パッケージとなっています(一部の政策は発表済み)。海外の水事業に取り組もうと考えている企業はしっかりと押さえておくべきでしょう。

個人的に興味深いと思ったのは「4.我が国水関連産業の成長の道筋と行動計画 (2)我が国水関連産業の成長の道筋」において、海外でのオペレーション会社の確保に関して提案しているくだりです。

水ビジネスの海外展開において懸案となっているのは、多くの日本企業が海外において上水道、下水道、海水淡水化などのオペレーションを20年程度にわたって受注するというビジネスの経験がないということです。三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅などは90年代末から着実に経験を積んできていますが、いわゆる水関連メーカーの場合はこれからというところにあります。こうした現状に関して、同報告書は次のように述べています。

 我が国企業が海外において水事業の事業権を確保できない短期的な要因は、十分な水事業の運営・管理実績を有しないため、入札事前資格審査を通過できないことにある。
 我が国企業はこれまでも、商社を中心として、単独企業で入札事前資格を有する海外企業と現地に合弁会社を設立し、海外企業が有する運営・管理実績の自社への移転を目指 してきたが、単なる出資での関与の場合、事業経営への参画には限界があり、その後の案件受注に際し、自社単独で入札事前資格審査を通過するまでには至っていない。
 また、事業運営・管理の実績が十分でなく、高コスト構造である我が国企業が、単に 企業群を形成して海外の水事業に参入しようとする取組は、場合によってはさらにプロジェクトの受注の可能性を低減させるおそれがある。したがって、まずは、入札事前資格審査を満たす海外企業又は地方公共団体等と協力する形態を基本として海外市場に参入し、我が国企業が運営・管理の実績を蓄積させる取組が有効かつ必要である。

 水インフラ関連の官民連携(PPP)プロジェクトは、常時様々な国において競争入札案件として公開されており、"Interest"を持つ企業の募集、ないしは、プロポーザルの公募(RFP)という形で、意欲があるなら日本企業も参加できるようになっています。
 個々の案件では、応募企業が絞り込まれて(=入札事前資格審査が行われて)いわゆる"short list"に残る過程や、英国で言う"preferred bidder"が決定する過程があまり公開されないので、日本企業の応募状況がわかりにくいですが、細かく調べてみると、様々な案件に応募しているようです。
 しかし、応募はしてもshort listに残らなかったり、最終的な入札で敗退するケースが多いようで、はなはだ残念なことです。

 上の報告書の記述では、そうした現状を「十分な水事業の運営・管理実績を有しないため、入札事前資格審査を通過できない」と述べています。そして、十分な水事業の運営・管理実績を積むには、「入札事前資格審査を満たす海外企業又は地方公共団体等と協力する形態を基本として海外市場に参入」することが大事だと述べています。
 これは非常に正しい指摘だと思います。自前主義でやっている限りは、入札事前資格審査の壁を越えることは難しいでしょう。
 その解決策として、同報告書では3つの協業形態を提案しています。

 1. 国内企業と入札事前資格審査を満たす海外企業が共同して、現地に事業会社を設立し、事業の運営・管理への質的な関与を深めて、その実績を蓄積した上で、現地又は第3国の市場に進出するケース。

 2. 国内企業が水事業の運営・管理を営む海外企業を買収し、事業運営・管理実績を得た上で、現地又は第3国の市場に進出するケース。

 3. 国内企業と地方公共団体等が共同事業会社(第三セクター等)を設立し、国内において包括的な民営化事業を受託し、事業運営・管理実績を蓄積した上で、海外市場に進出するケース。

 1と2では、経験を積んだ海外企業の相手探しが必要になりますね。3は、東京都、大阪市、北九州市など水ビジネスへの進出を行いつつある自治体と組んで、いったん、日本において官民連携案件を受託し、それで経験を積んだ後に海外に進出ということですから、やや時間がかかります。時間を節約するなら、1ないし2ということになるでしょう。

 海外のインフラビジネスは水に限らず、海外のプレイヤーにどういう企業があるのかすらわからない状況から始めなければならないところがあります。水については、ヴェオリア、スエズといった水メジャー以外のプレイヤーに関する情報があまり流通していません。そのへんで少し調べてみようと思います。

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