[速メモ] PPP案件のインフラ投資も行う英国の建設会社
英国のPPP関連資料に目を通していると、非常に幅が広く、奥行きのある世界だということがわかってきます。英国では2000年ぐらいから、現在よく見られるスキームのPPPプロジェクト(英国では"PFI"で括るケースが多いようです)を行ってきています。
プロジェクトでは、発注側のパブリックセクターにもファイナンスや法務のアドバイザーが付き(前者は投資銀行やプロジェクトファイナンスを手がける銀行、後者は国際的な法律事務所)、受託側は運営するスキルを持った企業、建設系の企業などが合弁で特別目的会社を作って受託するのが1つのパターンとなっています。そして受託会社にもファイナンスや法務のアドバイザーが付くのが恒例となっているようです。
英国会計検査院(National Audit Office)が政府系PPPプロジェクトをまとめている資料を見ると、非常に膨大な数のプロジェクトが、プライベートセクターによるファイナンシングで運営されており、歴史も古く、実績もかなりあることがわかります。
そういうなかで、プレイヤーの層も厚くなっているということがあるようです。
今見つけて驚いたのが、グレートブリテン島の中央部に拠を構える1つの建設会社がPPPの投資事業も兼営しているということです。
この会社、直近の売上高が1,620億円。日本で言えば中堅企業です。インフラ建設案件を多数手がけてきたようで、PPPのスキームが関係する案件の実績も多かったようです。あるときからPPPの投資にも加わるようになり、現在では25のPPP案件に投資しており、投資額は13億ポンドに上っています(注:ただし13億ポンドという数字は、すべての関係投資家による総投資額という意味で、同社投資分ではない可能性もあります)。
PPPに投資をしているとは、言い換えれば、インフラ投資家であるということですね。同社はPPP投資部門だけで2009年度1,020万ポンド、2010年度240万ポンドの営業利益を上げています。中堅企業でありながら、インフラ投資で利益を得ているとは、非常に驚きです。
日本で同じことが起こるためには、国や自治体が様々な公共インフラに関して、保有権や営業権が特別目的会社に譲り渡されるようなスキームをたくさん作り、PPP案件として、私企業にファイナンスを含めた条件を競わせて、PPPそのものが活発になるようにしないといけないと思います。現在は案件が少ないので、プレイヤーも育たないということがあるのではないでしょうか。
とはいえ、歴史のある英国ですら、パブリックセクター側にもファイナンスや法務の専門企業がアドバイザーとして付くのが現状。日本においても、国や自治体において案件が多数出てくるためには、そうしたアドバイザーの層の拡充が先かも知れません。