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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

[ニュースの背景] 伊藤忠、スペインで太陽熱発電に参入

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日経などで今日報じられたニュースです。背景が理解しやすくなる事実などを箇条書きで記していきますね。

[今回の発表の概要]
伊藤忠のプレスリリースによると、伊藤忠はスペインの太陽熱発電事業会社アベンゴア・ソーラー(Abengoa Solar)と提携し、スペイン南部に50MW(メガワット)の太陽熱発電所2基を建設。伊藤忠が権益の30%を、アベンゴア社が70%を持つ。
・2基の総事業費は5億ユーロ(約560億円)。うち3億4,000万ユーロ(約380億円)を三井住友銀行、香港上海銀行、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行の4行によるプロジェクトファイナンスで得る。また、融資分には日本貿易保険(NEXI)による海外事業資金貸付保険が付く。
・2012年に操業開始予定。発電された電力はスペインのフィードインタリフ制度(再生可能エネルギー発電を優遇された価格で電力会社が買い取る制度)によって電力会社へ販売。一般家庭5万2,000世帯分の電力をまかなう。

[商社の海外発電ビジネス]
・発電ビジネスはIPP(Independent Power Producer)事業と呼ばれています。米国などで電力自由化が進んだ際に、従来の垂直統合型電力事業(発電から小売まで一気通貫で手がける)から発電などの領域が切り離されて(アンバンドリングと言います)、その領域だけで事業が行えるようになりました。電力業界以外の企業であっても参入が可能ということで"Independent"という形容詞が付いています。
・日本の総合商社は80年代前半にいわゆる「冬の時代」を経験し、その後、新たな収益源として資源・エネルギービジネスの上流部分に狙いを定めます。現在、大手総合商社において利益の過半を稼ぎ出しているのが、資源・エネルギービジネスであることはよく知られています。
・丸紅はエネルギービジネスのなかでもIPP事業に経営資源を多く投入し、現在では、世界に保有する発電資産の総発電容量が25.8GW(ギガワット)、権益持分を勘案した持分発電容量が7.5GWとなっています(2009年冬)。これは北陸電力を下回るものの、北海道電力、四国電力を上回る容量であり、同社1社だけで日本の電力会社ひとつ分の発電ビジネスを行っているということになります。
・手持ちの数字では、三井物産の持分発電容量が4.4GW(2010年3月末)。
・伊藤忠商事のIPP事業の持分発電容量は他社と比較すると小規模であるものの、米国市場での発電所買収に注力しており、最近では、米国の風力発電所などの再生可能エネルギー発電の権益の買収を行ったりしています。

[太陽熱発電の位置づけ]
・Booz and Companyが今年3月に発表した調査報告によると、サハラ砂漠やアラブ首長国連邦などを含む中東・北アフリカ地域の太陽光・太陽熱発電のポテンシャルがすべて発電に回されたとすると、現在の全世界の電力需要の3倍以上の電力の供給が可能になるとのことです。
・地中海を取り囲む欧州および北アフリカの国々によるEuro-­Mediterranean Countriesの会合では、太陽熱発電を大規模展開するMediterranean  Solar  Planを策定しつつあります。
・中東および地中海地区では、太陽関連の発電と言えば、普通は太陽熱発電を想定する状況があるようです。おそらくその背景には、太陽熱発電の発電単価の安さがあります。
・発電単価を比較する内外の複数の資料を読んでみると、おおむねということですが、太陽熱発電は太陽光発電の2/3の発電単価です(ちなみに風力は、地上の場合で太陽熱発電単価の5割減、洋上の場合で2割減という水準です)。
・発電ビジネスの対象ということで見ると、中東および地中海地区、さらには米国の低緯度地区では、太陽熱発電が投資効果の読みやすい、あるいは、投資回収がしやすい発電ビジネスという評価を得ているようです。インフラ投資案件としては、太陽光発電よりも太陽熱発電の案件の動きが活発です(それにも増して洋上風力発電はさらに活発です)。

[貿易保険]
・今回の伊藤忠のスペインにおける太陽熱発電参入は、伊藤忠がインフラ投資家となってインフラ事業に投資を行うスキームを持っています。このようなスキームに経産省系の独立行政法人日本貿易保険(NEXI)が保険を付けるということは、海外における日本企業のインフラビジネス促進という点で大きな意味があります。
日刊工業のこちらの記事によると保険内容は「内乱やテロなどにより代金を支払えない『非常危険』の場合には100%、プロジェクト会社が破産するなど『信用危険』の場合には、90%をNEXが補填(ほてん)する。保険責任期間は2011年1月から20年」とのこと。
・政府は先般、インフラ輸出を活性化させる目的で日本貿易保険が付保できる範囲を拡大しました。これが今回の付保にも効いているのではないかと思われます。
・プロジェクトファイナンスで融資を行う側から見れば、このような保険があることでリスクを大幅に緩和させることができます。

[補足]
・海外における洋上風力発電、太陽熱発電など、再生可能エネルギーへの日本の商社などの参画が今後はますます活発になるかも知れません。
・インフラ投資ビジネスとして見ると、風力発電や太陽熱発電は、比較的”こじんまり”とまとまった建造物であり、建設が済んでしまえば、オペレーションが比較的シンプルであるという特徴があって、手がけやすいビジネスと見られているようです。
・当該国にフィードインタリフ制度や、ある年限までの再生可能エネルギー増強目標などがある場合は、それを後押しする参入者ということで日本企業も歓迎されるでしょう。
・すなわち、発電単価が比較的安く、プラント建設もさほど複雑でない発電ビジネスは、まだまだ参入が続く可能性があります。とは言え、同じオポチュニティは海外の企業からも見えているので、参入先確保の競争は激しいと思われます。
・他国との競争に勝つためには、政府側のトップセールスによる支援のあることが望ましいでしょう。

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