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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

インド超臨界プラント市場を席巻する中国

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人口12億の大国であり、年々6〜9%の成長を続けているインド。高成長を続けるためには圧倒的に不足しているインフラへの投資が欠かせません。

■インドのインフラ開発計画

インド政府では計画委員会(Planning Comittee)が5カ年計画を策定し、インフラ投資などの国家プロジェクトを動かしています。インド三菱商事社長中垣啓一氏が「日本貿易会月報」2010年2月号に寄せた「躍進するインド経済と三菱商事のインドビジネス」によると、現在進行中の第11次5カ年計画(2007〜2011年度)では約40兆円のインフラ開発計画があり、その内訳は電力30%、道路15%、電気通信14%、交通部門13%などとなっています。電力分野が最重要視されていることが窺われます。

■インドに製造拠点を持つメーカーに限るという規制案

関連の動きで、最近興味深いものがありましたのでご紹介します。インドの経済ニュースサイトFinancial Chronicleの12月22日付記事"Ultra power projects face fresh curbs"によると、「インドの電力会社が発電設備を発注する際にはインドに製造拠点を持つメーカーに限る」という新たな規制が設けられそうだとのこと。猛烈なペースで受注を獲得している中国メーカーを牽制する意図があるそうです。
インドでは、第11次5カ年計画の一環で"UMPP"(Ultra Mega Power Plants)と呼ばれる電力増強計画が動いています。この計画は"Power for All"(すべての人の電力を)とも呼ばれており、現在不足している電力事情の抜本的な改善を目指すものです。合計で発電容量100GWの増強を見込み、4GW級を主力として複数の発電施設の建設が進んでいます。設備には発電効率に優れる超臨界石炭焚き火力発電が選定され、出力660MWないし800MWのユニットが標準となって、それを複数基組み合わて4GW(一部では1GW)の出力を実現します。

■インドの超臨界プラントの半分を獲得した中国

この超臨界のボイラーないしタービンの発注で精力的に営業をかけてきたのが中国です。上の記事によると判明している43ユニットのうち、中国メーカーが26ユニットを受注。続いて韓国8、インド4、ロシア3、イタリア2となっています(日本の重電メーカーも以下に見るようにインドの超臨界ユニットを受注しているとのプレスリリースが各社から出ていますが、この記事を見る限りはこうなっています。元にしているのが少し古いデータなのかも知れません。あるいはインド国内分としてカウントされているのかも知れません)。

インド政府およびインドの重電メーカーでは、これに先だって、日本や欧州の重電メーカーとの合弁による超臨界ユニット製造施設の構築を進めていました。印L&T(Larsen & Toubro)と三菱重工による合弁、印JSWと東芝による合弁、印Bharat Forgeと仏Alstomによる合弁、印BGR Energy Systemsと日立の合弁などがすでに超臨界ユニット製造のために設立されています。こうした合弁会社であれば、今回の規制から免れてインドの電力会社からの多数の発注をこなすことができます。日本の各社は安泰です。

ご参考までに、日本のメーカーによるインドの超臨界ユニット受注の関連の発表を挙げておきます。

[三菱重工]
インドから超臨界圧ボイラー・タービン各2基を受注 ジェイプラカッシュ電力会社向け L&Tと共同で(2010/1/12)
インドから超臨界圧ボイラー、タービン各3基を受注 マハラシュトラ州発電公社向け L&Tと共同で(2010/5/11)

[東芝]
ムンドラ発電所向け、超臨界圧方式5基一括(2007/8/10)
インドでの火力発電設備の製造・販売合弁会社設立について(2008/5/7)
インドでの火力発電設備の生産拠点整備について(2009/7/7)
東芝、火力発電設備工場の建設に着手(2010/2/3)
東芝JSW、来年1月より超臨界圧発電機製造(2010/2/8)

[日立]
日立、インド社と超臨界圧火力発電用蒸気タービン・発電機の製造・販売合弁会社を設立(2010/8/9)

■安い電力卸売価格

こちらの記事によると、中国製の超臨界ユニットはインド国産よりも10〜15%安いそうで、この低価格が各発電プロジェクトの電力卸売価格を低く抑えるのに役立っているとのこと。

All the UMPPs received aggressive tariff biddings, with Krishnapatnam being awarded at Rs 2.33 per kilowatt hour (kWh), Mundra at Rs 2.26/kWh, Tilaiya at Rs 1.77/kWh and Sasan at Rs 1.19/kWh.

とありますから、各プロジェクトでは、キロワット時当たりの卸売単価が2.18円〜4.29円(1ルピー=1.84円で換算)。(財)エネルギー総合工学研究所が公開している資料によれば、石炭の発電単価は5.0〜6.5円となっているので、関連経費も勘案すると、インドのUMPPではかなり安い卸売価格設定もあるということがわかります。

インドの発電会社が今後発注する超臨界ユニットがインドに製造拠点を持つメーカーに限定されるのかどうか、またそれがインドの電力価格に上昇をもたらすのかどうか、まだまだ見えないわけですが、インド政府が特定の国のオーバープレゼンスに対して警戒感を持っているということだけはわかります。

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