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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

[ニュースの背景] フロリダ高速鉄道にJR東海など日本企業グループが応札(上)

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今朝の日経新聞に興味深いニュースが出ていました。(お断り:ブリズベーン港の営業を受託したGlobal Infrastructure Partnersについては明日23日に上げます。)

フロリダ高速鉄道 JR東海応札へ
新幹線輸出、11社が協力

(ウェブ版は見出しがやや違います)

要旨は、米フロリダ州が計画している高速鉄道建設計画にJR東海を初めとする日立製作所、日本車輌製造、東芝、三菱電機、三菱重工業、住友金属工業、日本信号、京三製作所、三菱商事、住友商事、国際協力銀行の11社が協力してオールジャパンチームを作り、応札するというものです。

日本企業が関わるインフラ輸出の典型とも言うべきパターンですので、どのような背景があるのか調べて見ました。

■米国再生・再投資法がフロリダ高速鉄道に形を与えた

フロリダ高速鉄道は、実質的に米国初の高速鉄道になるそうです。フロリダ州は四半世紀前から高速鉄道建設計画を打ち出していました。オーランド、タンパ、マイアミの3都市を抱えるフロリダ半島地域は1,000万人以上の人口を抱え、かつ、人口増加が急ペースであるものの、都市間を結ぶのは道路交通しかなく、慢性的な渋滞に悩まされていたようです。また、オーランドにはディズニーワールドなどのテーマパークが数十もあり、内外から観光客も集まってきます。ここに高速鉄道を作れば大きな効果を発揮するということで、歴代の首長が熱心に訴えてきたようです。

2009年にオバマ政権が成立させた米国再生・再投資法の総額7,800億ドル超の対策費のうち80億ドルが旅客鉄道分野に割り当てられることになりました。3年間にわたり、州政府などから応募があったプロジェクトに対してこの80億ドルが配分されます。フロリダ州鉄道局はこれに応募し、今年1月に12億5,000万ドルを得ました
この資金によってようやくとフロリダの高速鉄道が形を見ることとなりました。また、今年10月には第二回目の分配により8億80億ドルを得ました。同鉄道局は米国再生・再投資法対策費の80/20ルールに基づいて、獲得した資金にあと2割を足して総事業費とします。

初回の12億5,000万ドルは、オーランドータンパ間の84マイルの区間の本着工と、オーランドーマイアミ間の240マイルの区間の計画のために使われています。オーランドータンパ間には時速168マイル(時速270キロ)以上の車両を走らせて1時間で結び、営業時間中に16往復を可能にします。同区間は現在車で90分かかっています。計画区間のオーランドーマイアミ間ではより速い車両を走らせる予定です。
オーランドータンパ間で予定されている時速270キロは、現在、JRの新幹線で時速300キロの営業運転が行われていますから、日本グループが受注しても十分に達成可能です。

二回目の8億80億ドルは、引き続き、オーランドータンパ間の建設に使われます。具体的には、positive train controlの導入、高速鉄道関連の設備の購入、Orlando International Airport、Walt Disney World、Downtown Tampaなど5駅の建設が主な費目。うち80億ドルはオーランドーマイアミ路線の詳細計画作成に使われます。

■全米で建設が進む高速鉄道

現在、米国では大変に数多くの高速鉄道計画が動いています。米国再生・再投資法の下で、High-Speed Intercity Passenger Rail (HSIPR) Programという施策ができ、これが各地域の高速鉄道建設熱に形を与えています。現在、始動している計画をざっとメモすれば、

    - California Corridors
    - Tampa – Orlando – Miami
    -  Omaha – Iowa City – Chicago
    - Northeast Region
    - Detroit – Chicago
    - Charlotte – Raleigh – Richmond – Washington, D.C.
    - Minneapolis/St. Paul – Madison – Milwaukee – Chicago
    - Eugene – Portland – Seattle – Vancouver
    - Kansas City – St. Louis – Chicago

となります。カリフォルニア州の計画がもっとも規模が大きく、計画路線を含めて総延長1,995マイル。フロリダ(319マイル)の6倍以上あります。

■調達は海外勢にオープン

フロリダの高速鉄道は、詳細な計画が公開されている上に、調達手続きもオープンになっています。去る11月9日には、調達に応募する企業グループが集まり、情報共有の会合がもたれました。明日掲げる本投稿の(下)では、日本企業グループを含めて、どのような海外グループが応札しようとしているのか、また、想定されている事業スキームはどのようなものであるのか(建設納入止まりなのか、営業を含むスキームなのか)について確認したいと思います。

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